第100話 そうして女達のセリが始まった
「どうだ、神前。700万。即金でほしくねえか?」
かなめはじりじりと誠に顔を近づけながら誠に向けてそう言った。
「かなめちゃんは700万。じゃあ、かなめちゃんのアカウントは知ってるから代理入札してあげるわね。でも、そんなもんじゃ安すぎる。かなめちゃんが即金700万なら私は750万出すわ。誠ちゃんを自由にできる権利、私が買うわ」
それに当然の様に乗って来たのはアメリアだった。
「アメリアさんも何言ってるんですか!それにそんな貯金有るんですか?アンタは無駄遣いの宝庫でしょ?」
誠は泣きそうな表情を浮かべてそう叫んだ。
「私は中佐。しかも、運航部部長。それなりのお給料を貰ってるのよ。普段無駄遣いしている分色々うちの女子に投資に詳しい子がいてね。色々儲けているわけ。じゃあ、カウラちゃんはいくら出すの?」
アメリアは微笑みながら黙って話を聞いていたカウラに目を向けた。
カウラはパチンコ依存症である。当然その給料もボーナスもすべてパチンコにつぎ込んでいる。貯金などまずないはず。当然この話をぶった切ってくれることを誠は期待していた。
「そうだな。神前の為なら私は車を売ってもいい。ここは一気に値段が跳ね上がるが10億出そう。あの車にはそれだけの価値があるとあの車を作った島田が言っていた。私のすべてと言ってもいいあの車も、神前を買うことが出来るということなら売るのも惜しくない」
カウラの言葉は誠の期待を完全に裏切るものだった。
「カウラさんまで……さっきは僕は商品じゃないとか『愛はお金じゃ買えない』とか言ってたじゃないですか!そんな優しいさっきまでのカウラさんはどこへ行ったんですか?」
誠はカウラの豹変に呆れ果てるしかなかった。
「おっ!ここにきて希望落札価格に近づいて来たわね!じゃあ、カウラちゃんのアカウントも知ってるから10億……私は降りるわ。こんなお金出せない……え?ここで張り合って来る人が居るんだ……11億ねえ……また、11億1000万……世の中お金持ち入る者なのね。でも私の希望落札価格にはまだ足りない。私は降りるけど……と言ったら12億で入札!凄いわねえ……ここにきて一気に入札件数も増えてきた。この先どうなる事やら楽しみ楽しみ」
アメリアは携帯端末を弄りながらぶつぶつつぶやいていた。
『12億?そんなレアグッズ僕の部屋にあったか?アメリアさんは一体僕の部屋の何を売りに出しているんだ?気になるけど……どうせはぐらかされるだけだからな』
誠は何も言えずに端末に夢中なアメリアを見つめていた。




