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【完結】名も無き民の戦国時代~現代知識を使って内政チートで数ある戦国英雄に無双する~  作者: のらしろ


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紅梅屋


 振り返ってみれば、今回のポルトガルとの取引は我々にとってかなりの利益をもたらした。


 防衛の観点から我々の唯一最大の強みである高速船を売りに出したとしても、次期主力艦の準備が出来つつあり現状では最も高く売りつけるタイミングでもある。


 また、これからは、資金がいくらでも必要になってくるタイミングで、マカオとの取引は天佑といえよう。


 俺は今回の最大の功労者である張さんを労いながら雑談を交え振り返っていった。


 張さんは、マカオを知っていたようだ。

 幼少の頃に張さんの父親と一緒に商いに行ったことがあると言っていた。


 マカオは俺でも知っているが、香港の隣の町で、天然の良港でもあり、古くから東南アジアとの中継基地として栄えていたそうだ。


 好事魔多しの喩えじゃないが、古くから栄えていたために欧米列強の餌食となり、今では世界征服を企むポルトガルの東アジア攻略の拠点となっている。


 対抗するライバル国のスペインは現在のフィリピンのマニラに拠点を築き、まさに東アジアは東南アジアに続きこの2国の草刈り場の様相を示しつつある。


 本来日本や中国は、これら欧米の侵略を全力で防がなければならないものだが、現在の明も我らの住む日本も欧米列強を追い返すまでの力がない。


 あれ、これじゃ、俺の安寧した生活を守るのに、ここ日本を一つにまとめ、彼らから守らないといけないのか。

 そんなの、あのくそ爺の言うとおり、俺が将軍にでも成らないといけないなんてことにならないか。


 イヤイヤ、それはないでしょ。

 しかし、ここはよく考えろ。

 この日本は一つに成らないといけないのは自明の理だ。

 問題は俺以外の誰が音頭をとるかだ。

 とにかく時間を稼ぐしかないか。


 あ、思いついた。


 ポルトガルだって、スペインだっていつまでも大国じゃない。

 俺の知っている歴史では少なくともあと数十年すればオランダやイギリスが台頭してきたはずだ。


 それなら、やりようが有る。

 彼らだって人が無限にいるわけじゃない。

 軍事侵攻で植民地化するにも限界がある。

 少なくとも今の日本やお隣明では港のいくつかが限界だろう。

 インドのように国全てとは、いかないはずだ。


 それら都市への侵攻を遅らせる方法を、俺は思いついた。


 俺らには張さんがいる。

 それに徐々にではあるが張さんチルドレンも育ってきている。

 少なくとも俺の見る限り葵はかなりのレベルに達している。

 幸もそうだ。

 彼女たちに足りないものがあるとすると、唯一語学力だけだ。

 これは信頼できる通訳がいれば事足りる。


 そうであれば、いくらでもやりようがある。


 俺らは商人だ。

 先程張さんが見せてくれたように、彼らから尻の毛全てをむしり取るような取引をしていけばいいだけだ。

 暗雲立ち込め始めた俺の未来に一条の光を見た感じがした。


 俺が張さんの隣でブツブツ言い始めたのを訝しみながら、張さんと半兵衛さんが俺に話しかけてきた。


 「とにかく一件落着でしたね。

 南蛮との取引があったのには驚きましたが、ここできちんと管理できれば堺のようにここも賑わいます。」

 「そうですね。

 鼻のきく商人たちはそろそろ騒ぎ始めますよ。

 ただでさえ、明との取引を感じた博多の商人が乗り込んできましたしね。」


 「そうでした。

 この件を片付けてくれる約束でしたね。」


 「いつまでたっても楽になりませんね。

 こういった政は九鬼さんの範疇じゃなかったのではないですか。

 私は商いだけをしていけば…」


 「お約束です。

 件の商人をここに呼びましたので、すぐに来るでしょう。

 当然、政の範疇ですので私たちも同席しますが、やりかけは最後まで面倒を見てもらいますよ。

 唯でさえ空さんの案件で大湊も一杯一杯なのですから。

 正直これ以上問題を起こしては欲しくはありませんね。」


 ひ、酷い。

 半兵衛のイヤミは酷い。

 藤林さんはただ笑って見ているだけで、決して俺を助けようとはしてくれない。

 俺は以前に藤林様を助けたのに。

 好き好んで問題に巻き込まれているわけじゃないのに。

 俺のやりかけというが、向こうから勝手に俺に絡んでくるだけなのに。


 半兵衛さんの毒舌は収まるところを見せない。

 最近特に半兵衛さんの俺に対する風当たりが強くなってくる。

 玄奘様もそうだ。

 最近俺の周りの大人たちの俺への風当たりが強くなってきている。

 なぜなんだ。

 いたいけな子供に対して遠慮がないのかこの時代の大人は。


 ここに先ほどまで居なかった豊田さんが、伯さんと初老の男性を連れてきた。

 先程まで使っていた椅子は片付けて、日本スタンダードな接見のスタイルで彼らと面会した。


 「ご家老、連れてまいりました。」

 と豊田さんがお二人を接見の場に連れてきて自身は部屋の片隅に座った。


 本来は半兵衛さんが座っている場所にあんたが座らないといけないんだよ。

 あんたがそんな片隅に座るから、俺がこんな中央に座らされるんだぞ。


 まだ俺は心の中で、抵抗を続けていたが、無駄なあがきで、俺を補佐するように座っている張さんが伯さんに話しかけた。


 「お久しぶりですね、伯さん。」

 「お久しぶりです、空殿、それにお嬢いや張様。

 本日はこうして正式に面会を許していただきありがたく思います。」


 初め中国語で話しかけた張さんを受けて伯さんは中国語で返したが、最後は正式な面会であることを意識したのか少したどたどしい日本語で話してきた。

 それにしてもすごいものだ。

 最初に会った時には全く話せなかった日本語をかなりマスターしているようだ。


 さすがは日本人の奥さんを貰っただけはある。

 商習慣もこの義父によってかなり鍛えられているだろうし、何よりあの張さんのお父さんに鍛えられた人だ。

 こちらから厳しい事を言うつもりはないが、この街も博多や堺のように生き馬の目を抜くような街になるのかもしれない。

 そうなると俺が、おちおち買い物もできなくなるかも。

 なんだか、少しばかり寂しい気がしてきた。


 思考が脱線ばかりするな。


 「本日お伺いしましたのは、以前にお願いをしておりました博多の商家の紹介とその出店のお許しの件です。

 まず、ここに博多より参りました私の義父を紹介させてください。」


 「娘婿の伯から紹介に預かりました紅梅屋でございます。

 博多では年行事のひとりでもあります。」


 「年行事?」


 「聞き及びませんか。

 そうですね、堺の会合衆の様な物です。

 本日は義息の人脈を頼ってお願いに上がりました。」


 「会合衆ですか。

 そのような重鎮がなんでこんな辺鄙なところまで。」


 「辺鄙ですか、確かに今はそうかもしれませんが、ここの勢いだけはどこにも引けはとりません。

 少し鼻のきく商人ならここの出店は喉から手の出るくらい実現したい案件ですよ。」


 「そんなものですかね。

 まあ、伯さんには色々お世話になっておりますし、張さんの知り合いとして遇していきたいと思います。

 まあ、条件が合えばの話ですが。」


 このあとこの紅梅屋とこの賢島への出店についての条件などを話し合った。


 「私事が最初になりましたが、博多からの公の仕事として、こことの交易路を開設したいという件、書状にあります。

 お受け取り下さい。」

 と言って紅梅屋は博多の政を仕切る年行事衆からの書状を渡してきた。


 そこには、こことの正式な交易を行いたく、両勢力から船を出し合いたいとあった。

 税等の条件は、それぞれ町の税をそのままで構わないが、できればこの交易船に限り、免税もしくは減税を希望するとある。

 現在、博多からだと堺に対して各商家が勝手に船を出しており、交易を行っている。

 定期航路などという考えはない。


 そもそもこの時代の日本においてはそんなものはない。 

 唯一あるとすれば、我々が出している熱田と堺の間にある船便くらいだ。

 この船便は運行スケジュールこそ無いが、ほぼ定期的に行き来している。


 どこでどう知ったのかは解らないが、これと同様に船便を出したいそうだ。


 その書状を俺が読んでから張さんをはじめ半兵衛さんたちに回した。


 「これってどう思う。」

 俺はすぐ横に居る張さんに聞いてみた。

 張さんは少し考えてから、紅梅屋に直接声をかけた。


 「紅梅屋さん。

 少しいいかしら。」


 「なんでしょうか。」


 「こんな辺鄙なところに定期便なんて考えを年行事衆の皆さんが賛成しておりますの。

 これって年行事衆の決定事項かしら。」


 「やはり、それをお聞きになりますよね。

 正直にお答えします。

 確かに年行事の皆はあまりここのことを知りません。

 ですので、はっきり言って年行事の集まりでも話題にすら出ませんが、この件は私から上申して話し合いました。

 こちらからの申し出は、うまくいこうが、決裂しようが、どうなっても今の博多には大した影響が出ないとの判断で、正直なところ、今回の話し合いが決裂しても構わないといった感じでした。

 しかし、話し合いの末、この件については年行事の決定として私に一任されております。

 ですので、この書状にありますように、この件は博多の年行事の決定に基づき出されております。」


 「それでは、この街との交易には紅梅屋さんだけがご興味あると。」


 「いえいえ、それではいくら博多に影響が少ないといえ、一商家の希望だけでは、年行事として書状は出せません。

 この町の存在こそ博多では知る人ぞ知るといった感じですが、堺と頻繁に取引をしている商人たちの間では、かなり興味を持たれております。

 大店さんはあまり冒険をしたがりませんが、中小の商人たちはこの交易にかける情熱は並々ならないものがあります。

 年行事は、その博多の一部商人たちの熱意に押されて私に一任されたというわけです。

 私の店の出店もそういった博多の商人たちの窓口として機能させたくお願いしております。」


 「そうですか、分かりました。

 空さん、この件は皆で話し合われた方がよろしいかと思いますよ。」


 「紅梅屋さんの出店につきましては、先ほど決めた条件さえ守っていただけたら問題ありませんので、許可しますが、この博多の年行事衆からの提案につきましては少し我々で協議の上決めていきたい。

 結果は伯さんを通してお知らせする方向でよろしいですか。」


 「ご検討いただけますか。

 ありがとうございます。

 それで構いません。

 私も一時博多に戻りますが、ここでの店の準備をするため、ここにしばらく居りますので、何かあれば直接お問い合わせください。

 呼ばれれば、何を差し置いてでも駆けつけます。」


 「して、ここには旅籠などはまだ準備しておりませんが滞在先に心当たりがおありで。」


 「娘婿である伯の店に居ります。

 私が博多の戻っていても、あの店を通せばすぐにでも連絡が付くようにしておきますのでよろしくお願いします。」


 とりあえず、今日のところは接見を終えた。


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