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第八十話   戦艦 大和

 昭和二十四(1945)年三月、ドイツが一月に宣言していたリトアニア進駐が行われている。独ソは戦争状態には入っていないが、バルト海がきな臭くなってきた。ドイツはあくまでもリトアニアがソ連に併合されないための予防展開と公式にはアナウンスしているし、併合を行っている訳でもない。そして、ラトビアへの進駐も始めている。


 日露戦争においてバルチック艦隊の出撃港となったリエパヤは早々にドイツ軍が進駐し、リガへの進駐も行われた。しかし、内陸部はソ連軍がすでに侵入しており、どうやらラトビアは独ソで分割統治となるようだ。

 ただ、英国の情報筋によると、リトアニア、ラトビアの内陸部では独ソの小競り合いが始まっているという。


 これには日本としても困ったことがある。バルト海が無制限に使えないとフィンランド支援が出来ない。

 現状、スウェーデンやノルウェーは積極的にフィンランド支援には加わっていないというのが問題だった。

 そんな中でドイツが航行制限をかけてくると、フィンランド支援が先細りにならざるを得ない。

 ただ、幸いな事に、ドイツは口では制限を掛けながら、実態は制限などなきに等しい状態だった。



「現在、ドイツはリトアニアのほぼ全域、ラトビアの西部に進駐を行っております。海軍艦艇もかなりの数がバルト海で活動しており、ソ連による再度のオーランド諸島侵攻という事態は今のところ考えられません」


 その様に報告が行われていた。どうやら前世と同等か好転しているような状況だ。やはり、ドイツのリトアニア進駐はそれなりに好影響を与えているらしい。そして、もう一つと言えば、二月以降、日本からの報道は日本海工業地帯が健在であるというニュースを海外に発信している。カレリア戦線の状況から見て、どうやらソ連は中途半端な準備で開戦したらしいことが分かった。その判断の根拠になったであろう遠州大地震が日本に与えた影響が如何に小さいか宣伝をソ連に対して行っていくこととなった。


 確かに、明治期や大正初期の工業地帯である名古屋周辺の建物の倒壊は酷く、犠牲者も少なくなかったが、地震が契機となって新たな公共事業も多く発生しており、地震からまだ四か月足らずなのに、中京地域の活気はかなり良くなっている。

 その状況も併せて発信しているから、三月に入ってのソ連軍の攻勢には迷いが見られるようだ。そして、俺が最後に提出した海南島侵攻作戦だが、現在無期限延期となっている。


 クーデター騒ぎの責任を取って総理が辞任し、解散総選挙となったのだが、鶏率いる政党の政権批判と前かがみの強硬姿勢は国民に受け入れられなかった。


 鶏は何か勘違いしていたらしいが、日本の世論は民国討伐よりも国内の景気に目が向いていた。今の日本の景気は大規模な予備役招集など掛けられた途端に打撃を受けてしまう状態だ。ただでさえ人が足りていない。好景気を維持するには戦争など無用という風潮が国民には広がっていた。特に票田である日本海沿岸でその意見が強いのだから、西日本や軍の一部に煽てられた鶏の意見が受け入れられる下地などなかったのだが、どうやら彼は冷静ではなかったらしい。



 そうこうしていると海軍から招待状が届いた。

 何事かと中を開くと


「新型戦艦の進水式?」


 そう言えば、三年で戦艦を造るとか豪語していた気がするなと思い出した。今回は進水式だから竣工には一年近くかかることになるだろうから、まあ、やはり誇大な話だったんだろう。


 当日、俺はアナスタシアと杏奈、絵理華を連れて会場へと向かった。場所は横須賀ではなく、川崎にある造船所だという。


 巨大な建物のおかげで電車からは何も見えなかったのだが、造船所について驚いた。すでに艦橋やマストはほぼ完成した状態で船台ではなく、船渠に鎮座していた。なるほど、これならあと半年そこらで完成してもおかしくはない。


「殿下、妃殿下方、ようこそお越しくださいました」


 出迎えた海軍高官が俺たちを席へと案内する。間近で見る戦艦はそれはそれはデカかった。


「これは出雲よりさらに大きいですね」


 戦艦を見上げたアナスタシアがそう言ってくる。


「そりゃあそうさ、倍以上の排水量を持つ戦艦だからな」


 おれも見上げながらそう返した。

 あれから二十三年にもなるのか、そんな感慨に浸っている間に式が始まり、あれやこれやとスピーチやら何やらが行われ、艦名が発表された。


「命名、軍艦『大和』」


 事前に決められていた艦名。説明によると、これから半年程度の艤装工事で正式に竣工らしい。

 

 主砲塔はトンブリ級で試された自動装填装置が組み込まれ、砲塔内にはわずかな操作要員しか配置されない。そして、主機関もガスタービンとなったことで、ボイラー操作要員が不要となった。そうした事から、前世の大和が約二千五百人の乗組員を必要としていたのに対し、千五百人で運行可能となっている。

 艦橋も金剛型を踏襲しており、戦艦というよりも巡洋艦に近い。ちなみに、二番艦の艦名は信濃になる。現在予算が成立しているのはこの二隻であり、多分、三番艦は建造されないと思う。たぶんね。



戦艦  大和型

排水量   70000t

全長      275m

幅      36.6m

主機  ガスタービン4軸

出力  200000馬力

速力     30ノット

武装 18吋三連装砲3基、5.5吋連装砲3基、4.5吋連装高角砲8基他





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