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第二十七話  ロシア革命

他者視点を含みます。

あんまり他者視点は今後もない予定ですが・・・

 1917年2月、ストライキの多発はとうとう革命として爆発した。


「誰か、誰か居らんか」


 現れたのは非常に都合が良い人物であった。


「ゲーに繋をつけよ。余を頃合いを見て連れ出すように言え」


 今はその時ではない。


 あれはいっだっただろうか。大津で斬りつけられた傷が痛んだ瞬間、自分の死を見た。

 最初に分かったのは、何者かに射殺される自分の死だった。それがいつのことかはわからない。

 そんな事をしているうちに、日本との戦争である。

 戦争に負けたら殺されるのではないか、そんな思いから予定よりも更に軍勢を投入した。旅順が陥落し、奉天まで押し上げられた時はどうなるかと思ったが、多数の兵と攻勢の勅命を与えたことで結果は望みに近付いた。

 海軍力を失い、サハリンを失ったが、日本を大陸から叩き出したことには満足した。


 ただ、それは不安を増大させるだけだった。


 そして、自分の死について更に周りや理由までおぼろげにわかるようになる。


 日本との戦争の際にこれ見よがしに動き回る日本人を捕まえてみたことがある。


 予想通り囮だった。しかし、それは囮でありながら、日本の対ロシア工作の責任者だった。


 隠しもしないその態度は全く信用ならなかったが、その大胆さに賭けてみる気になった。 


 皇帝が直々にたかがハエ一匹に顔を見せるのもおかしな話だが、相手は対ロシア工作の責任者と言って憚らない。中々に面白い「猿」だった。


 戦後、支配下でどうにも御しがたい地域があったが、あの猿によると、そういう地域だという。


 それからだ、猿をツテに利用し出したのは。


 時が経つ毎に自分の死は鮮明になる。時期や場所までは解らないが、理由が変わらない。またどこかと戦争になるのだろう。

 兎に角軍の即応体制を強化した。迅速に敵を叩く事が先決だからだ。


 しかし、ドイツは更に上をいった。日本との戦争の影響もあり経済も良くない。


 だが、猿と接するなかで悟った。アレと戦うべきではなかったのではないか。


 ウラジオストクだけで満足しておけば良かったのではないかと。


 1917年も8月に入るとトボリスクに流された。


 幾らか監視の目を盗んで繋をつける事は出来ている。


「ゲーに伝えよ。戦争で余が得た土地はくれてやる、いや、それで足りぬというなら天皇かその子に我が娘をやるとな」


 猿もロシアに工作機関を残した。何も動くのは対ロシアだけではない。ここに居れば色々な情報が手にはいる。

 猿は日本かロシアか、いずれに属するのだろうか?




--------


 大正六(1917)年三月に起きたロシア革命はロシアを混乱に陥れている。


 これはある種のテンプレではなかろうか。


 日本はロシア革命に関わるべきかどうか。

 失地回復、いや、拡大を望む陸軍の一部や元老の一部には盛んに介入を喚く者が出始めている。

 もちろん、俺もテンプレには興味がある。


 そうそう、俺は大学校を出てすぐに欧州へ渡ろうとしたのだが、兄に止められた。文字通りに首根っこ掴まれてな。

 そして、統合幕僚参謀部に籍を置くことになる。


 船団護衛を提案したり、海賊対処から発展した区域警備などの作戦作りをしたり。

 そんな中で起きたのがロシア革命だった。


 兄の代になっても例の集まりは続いている。

 ロシア革命が起きたことでまず、伊藤さんに話を持ちかけた。

 前世でも各国がシベリアヘ介入したが、今回、米国と組んでテンプレ国家を作れないかと思ったんだ。


 その後、伊藤さんが米国に話を持ちかけた所で正式に会議の議題とした。


「明石さんがニコライ二世と面識あったりしないのかな?」


 フィクションからの発言だったが、すぐさま当人が呼ばれることになった。なんで?


 そして、明石さんが呼ばれた日、何故かそれは軍法会議然としていた。


「殿下、明石に問うたところ、こやつ、ロシアと通じてました」


 明石さんは完全に囚人であり、勝ち誇る山縣さん。


ナニ?コレ


 まず、委細かまわず明石さんにある質問をした。


「イパチェフはわかりますか?」


 弱々しく

「は、エカテリンブルグにあります館の名前です」


 と、返ってきた。


「そこに皇帝一家が居るのでは?そう言えば、ミハイル大公もその街だったか?」


 明石さんは驚きで開いた口が塞がらないらしい。


「おい、なにか申し開きは無いのか?」


 山縣さんがまだやっているが、俺は別にそこは問題ないと思っている。


「芝居はその辺にしてはどうかな」


 伊藤さんが呆れたように山縣さんにそう言った。

 俺は伊藤さんに話を持ちかけた時点で彼から聞かされていた。曰く、山縣が何やら動いていると。


「さて、明石を不問に付すかわりに、やってもらいたいことがある」



 そうして皇帝一家と、ミハイル大公一家の救出作戦を提案した。





 大正七(1918)年六月、俺もどさくさで救出作戦に参加している。

 部隊は緑や茶をまだらに配色したいわゆる迷彩服を着ている。


 当然、俺考案。


 で、手にしているのは、短機関銃。こいつはフルオート可能なヤツ。もちろん伸縮式銃床。


「殿下は未だに結婚されていませんでしたな」


 急に明石さんがそんな事を言い出すから諸々、可能な範囲で説明した。


「もう、その様な言い訳はよろしいのでは?」


 ある種、図星である。


「異人の娘など如何ですか?」


 何、このめんどくさいオッサン・・・


「そうですね、ポイポイちゃんやデース(金髪)なら良いですが」


 明石さん、意味が解っていない。いや、わかるわけない。


「ポイポイ、デース?ですか?」


 わかりませんと顔に書いてるよ。


「そうです、天然というか、天の邪鬼というか、それでいて気の回る、そんな感じですね」


 そう、ポイポイちゃんやデースみたいな。


 明石さんは其れで何故か喜んでいる。


「なるほど、そうですか」

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