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第二十五話  通商破壊

 この世界の第一次世界大戦における通商破壊戦は内燃機関の未発達で潜水艦は沿岸で活動する電池航行しか出来ないため、伝統的な仮装巡洋艦や正規の水上艦によって行われていた。


 太平洋にも青島から脱出した仮装巡洋艦が出没し、インド洋ではかの有名なエムデンがあばれている。


 それらに対処するため、日本は沿岸警備隊の増強を行うことを決定した。

 新たな警備艦は大型で仮装巡洋艦や防護巡洋艦に対抗できることとされ、艦砲も大型化されることになった。


波照間型警備艦

排水量  3千トン

全長   105メートル

幅    14メートル

主教   レシプロ二軸

出力   2万馬力

速力   26ノット

武装   5吋単装砲4基

      6斤砲4基、機銃多少


 こうして設計が進められたが、実際の竣工は大正四(1915)年半ばの話であり、その頃には海軍も欧州派遣艦隊に量産型駆逐艦を配備するようになっていた。


 日本は大正三(1914)年中に周辺での戦争が終結したことで、主戦場である地中海や大西洋へと海軍を派遣していく。

 陸軍は大陸権益の喪失で大幅な縮小が行われているため、ガリポリの戦いに地中海派遣艦隊と共に一個旅団を派遣する事しか出来なかったが、この戦い自体は連合軍側の敗北に終わる。


 そんな中で、日露戦争の教訓から最大限の弾薬の準備、最大限の火力投射を作戦の基本とした日本旅団は善戦し、各国からその戦いぶりと装備に注目が集まる。

 とは言え、二千人を超える犠牲を出した負け戦のため、その後の英国による欧州戦線への陸軍派遣は全て拒否されることになる。


 海軍は四隻を人質に取られている関係で積極的に活動し、地中海や大西洋における護衛作戦を行っていた。

 そして、大正四(1915)年冬には英国本土に纏まった艦隊を集結させることが出来るまでにいたる。


 英国への航路は連合軍による監視や護衛が各所で行われてはいたが、それでも単独で活動する通商破壊艦艇を駆逐するには至らず、被害は頻発していく事になる。


 そして、少し内容は異なるが、ルシタニア号事件が起きてしまう。


 ルシタニア号は高速客船であるため、大抵の仮装巡洋艦を振りきることが可能であるとされていた。


 実際、五月七日の襲撃を振りきることで英雄へと祭り上げる声も上がったほどだった。


 しかし、これが間違いの元であった。当初は船長をはじめ、経験豊富な船員からはその様な風潮に警鐘を鳴らす声も聞こえたが、多くの人々はそうした慎重論を退け、勇ましい発言が称賛された。

 そうして、ドイツ軍が追い付けない韋駄天としてその後も航海を続けたルシタニア号だが、それはドイツ軍にとって好ましい事ではなかった。

 ドイツ軍内部では名指しで拿捕や撃沈を唱える者が出てくる始末で、夏頃にはルシタニア号拿捕や撃沈は名誉とまで言われるようになる。


 その様な情勢でも幾多の航海を襲撃なく過ごしたルシタニア号だったが、十二月八日にアイルランド沖に達した時に事件は起こった。

 船員や船長にも、この頃になると自分達は狙われない。狙われても振りきることが出来るとの思いが芽生えていた。

 その為、ドイツ軍の艦艇が近付き、警告を発しても意に介さずその高速で振りきることにしたのだった。


 しかし、この時不幸にもドイツ軍と交差する進路にあったのだが、相手を自分より低速と判断を侮り、そのまま航行を続けてしまう。

 巡洋艦側は停船に応じないルシタニア号に対し威嚇射撃を行う。


 だが、それで停まるほどルシタニア号内は冷静ではなかった。逃げ切れて当然。どうせすぐに救援が来るはずだ。そんな楽観論が支配していた。


 威嚇射撃で停まらないルシタニア号に対し、巡洋艦は船体を射撃。停まる気配がない為続けざまに放った一発が船の後方、スクリュー軸を損傷させてしまう。

 こうして減速したルシタニア号に近付いた巡洋艦は拿捕を宣言するが、乗客の一部が武器を持って抵抗したため戦闘となり、三百人ちかい死傷者を出すことになってしまった。


 結局、駆け付けた英艦隊により救助されるが、英艦隊を見た巡洋艦はルシタニア号に魚雷を撃ち込み逃走、魚雷による浸水で更なる犠牲を出してしまうことになった。


 この事件で米国はドイツ批判を展開するが、ルシタニア号の行動には内外から疑問が投げ掛けられる事となる。


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