12
ローズマリーは最後まで自分の過ちを認めなかった。
だから私は執事に命じて鞭打ちの刑を下した。もちろん、手を抜くことは許さないと脅したのできっちりと罰を下させた。
ただ追い出すことはしなかった。
だって、彼女はローズマリーに売られた人間だから。これでもうローズマリーに従わないでしょう。
「背中が傷だらけね。もし残ったらお嫁にいけないんじゃない」
私の言葉に侍女は青ざめる。
この程度なら多少残っても目立たないだろうし、お嫁に行けなくなるとは限らないけど。
痛めつけられたことのない彼女には分からないだろう。
「可哀そうに。ローズマリーを信じて従っただけなのに」
「っ」
私は悪魔のように彼女の耳元で囁く。
「ローズマリーが本当のことを言ってくれたらあなたはこんなにひどい目に遭うことはなかった」
「えっ?」
驚いた顔で侍女が私を見る。
「だってあなたは侍女だもの。主人の娘に逆らえるわけがない。あなたは仕方がなく利用されただけ。数か月の減給はあるかもしれないけど、その程度ですんだのよ。でもローズマリーはあなたが全て自分で勝手にしたことだと言った。全ての罪をあなた一人に押し付けた」
侍女の顔に怒りが浮かぶ。
人間というのは単純なものだ。
そして愚かなローズマリー。
他人を使う時は気をつけなければ、自分の敵を増やすだけなのに。
侍女の名前はマリン。私は彼女を専属侍女として使い続けることを決めた。
私が部屋を出ると使用人たちから厳しい目を向けられる。ひそひそと話す者もいた。
暗殺者だった頃、貴族の邸に忍び込み、使用人の真似事をしたことが何度もあった。その経験上から思うにここの使用人は躾がなっていない。まぁ、あのあまあまなアマリリスが取り仕切っているのなら仕方がないわね。
この件を皮切りに私の悪名は社交界に広まっていった。
曰く、立場を利用して弱いものを甚振る悪女。
傲慢で我儘な令嬢だとか。
全く気にしないけど。





