夜の告白
パキパキと小さな音を立て、焚き火はほんのりと周囲を照す。
俺は、交代の時間になるまで、周辺に『索敵』を使用して警戒を行う事にした。
暇な時間であるため、少しだけ作業に入る。
魔導人形の作成だ。
ミスリルと魔石を錬金術で結合しながら、1つの球体を造り出す。
これは、ゴーレムコアの基になる物で、この珠に持ち主の情報になる髪の毛や、血などの触媒と魔力を流し込み、魔石部分に印を刻む事で初めてゴーレムコアとして使用できる様になる。
ダンジョン等で出現したゴーレム等は基本的に魔物と同じ存在で、倒す事により無印の珠をドロップする事があるが、身体は自分で用意する必要があるのは変わらない。
俺は護衛用の守護魔導人形を造る事にした。
速度に関しては、素材の軽さを選ぶか、魔石のランクで出力を上げるのかは、好みにもよる所だろう。
今回は、素材の軽さで選ぶ事にした。
ワイバーンの鞣し革と竜蟲の外殻。
魔力糸には、ミスリルワームの糸を使い、フレームは、蒼月魔鉱石を加工して造り出した、球体間接付きの骨格を使用する。
フレームの稼働箇所に、魔力糸を一本一本通していき、その都度、指の握りや、関節動作を確認して作業をしていく。
両足をコアに繋いだ段階で、交代の時間まで残り1時間くらいになっていた。
「やっぱり専門書を買ったのが良かったな」
今回のゴーレムは、王都の魔導具店に置いてあった書物から、調べた中で比較的、作成が初心者向けの操り型魔導人形という、ゴーレム単体での活動以外に、人が魔力糸を使い、直接操る事も可能なゴーレムを造っていたのだが、中々難しい行程を幾つか挟む為、探りながらの工程になっていた。
因みに人の姿以外には、動物や虫を模した物もあったが、今回はオーソドックスかつ、扱いやすい人の姿を模した物を作成中だ。
既にパーツは作成済みなので、魔力糸をフレームに取り付ける作業が終われば、残りの鎧部分を取り付けて完成になる。
魔力糸を使用する際には、背部にある指輪が鍵になっているので、操る時はその指輪を装着して引っ張れば、セルフモードに変更する事が出来るようにした。
残りの時間で組み立て終えるのは、難しいので異空間収納に片付け、焚き火に木の枝を入れる。
テントの方から、誰かが起きて来たようだ。
ゆっくりとした足どりで、側に来たのはカミナだった。
「ルーク、少し早いが交代するぞ」
「カミナ、どうかしたのか?」
「あの娘、一緒に寝たのは良いが、抱きつき癖でもあるのか? 暑くてたまらんから出てきた」
月明かりに照らされた肌には、冬場だというのに、うっすらと汗が流れていた。
カミナにタオルを渡すと、汗を拭きながら
「……やはり、この身体になってから、湯浴みが出来んのはストレスが溜まるな」
「なら湯浴みするか?」
俺は、カミナが切り分けた倒木の片割れに親指を差して尋ねた。
「いや、それでは野営の醍醐味が無いだろう? 最低限の装備で良いのに、あのテントも本来なら禁止したいところだがな」
「快適なテントの方が、風邪も引かないで良いでしょ?」
「あんなテントが、何処に売ってあるのか、聞いてみたいがな!!」
珍しく、微笑みながらのお怒りだ。
「全く、……普通のテントかと思えば、見た目より広いわ、暖かいわ……もう一個作れたら作ってくれ、流石に普通のテントには戻れんぞ」
「あれ、試作品だから、よかったらあげるよ」
今回のテントは、試作品で作った一品物で、実は改良品の作成図も描いてある。
最終形態としては、風呂にベッド、トイレが備え付けてある物を、作る予定だ。
結局話をしていると、交代する時間になったので、そのままテントに入ると、最初に使っていた左端に向かい、横になった。
何故か、俺の布団から甘い香りがしているが、気にしないことにして寝ていると、足音が衝立の方から聞こえてきた。
「ルーク君、起きてますか?」
「…メアさん? どうしたの?」
足音の正体はメアさんだった。
「私ね、…血が欲しくて仕方がないの、お願い……お願い、ルーク君の血を少しだけ、飲ませて?」
メアさんの顔を良く見ると、何か思い詰めた顔をしていた。
辛そうな顔を見て、どうにかしてあげたいと思い、俺は首筋を軽く拭き首を反らした。
「……ルーク君? 何をしてるの?」
「メアさん血を飲むんでしょ?だから飲みやすい様に首を出したんだけど?」
その言葉を聞いたメアさんは、顔を真っ赤にしていた。
「そこは、バディーになった後で吸うところだから……大事な人同士じゃなきゃ駄目な所だよ…ううっ…」
「そうなの?」
「うん、パパとママが、抱き合ってしていたから…その……ママ、凄く目がとろんってしてビクビクしてたの。……ワタシが見てたのに気が付いたらそう言ってた」
「……そうか、分かったよ。じゃあどこを吸うんだ?」
「その前に、私のお話しを聞いてくれますか?」
再び、赤らめた顔から思い詰めた顔に変わる。
ただし、覚悟を決めた様な雰囲気もあった。
「お話しを聞かせて貰うよ、メアさん」
「ありがとう、ルーク君。先ずは呼び方を変えて欲しい。名前で呼び捨てて」
名前の呼び捨てを求められる展開に、少しだけ既視感があるが、そのまま頷く。
「ありがとう、私も呼び方を変えるから……ルーク」
ハニカミながら、名前を呼ぶメアさん……メアは顔を真っ赤にした後、布団に顔を埋めていた。
『何だこの可愛い生き物は!?』
思わずそう叫びそうになるが、我慢した。
そのまま待つと、落ち着いたのか再び言葉が紡がれる。
「私ね、人見知り……と言うか同い年のお友だちが居なくてね、そんな私が、スキルの『予知夢』で見たのは、ソフィアさん達とカミナさんの側で、笑っていたの」
「うん」
「それでね、皆と同じ形の指輪をしていたの。その時は、お洒落用のアクセサリーだと思ってた」
「うん」
「でも、ソフィアさん達から聞いたのは、婚約指輪だって言ってた事に驚いた。しかもルークの手作りだと言われたの」
「うん」
「その日に見た予知夢は、別の物に変わったわ。私達がルークと一緒にいたの、みんな笑っていたわ。その時にこの人が私のバディー何だって確信したわ」
「そうか」
「だからね、ルーク。私のバディーに、私をお嫁さんに、してくれませんか?」




