ポボスの墓標
【ウンディーネの月 1月2日 】
俺はカミナと三騎士を連れ、朝からデービルさんとアナハイムさん。
そして、ソル殿下とギルバート他、6名の騎士達と共に王都の外に居た。
「もう直ぐ到着します。本日の訓練は、少しだけ特殊な魔物と戦いますよ。皆さん、油断大敵です」
馬車は荒地を進み、王都から3時間程過ぎた。
目の前に、聳え立つ山の麓にその入り口が口を開けていた。
「見習い近衛騎士には伝達していましたが、こちらが、今回の訓練場所、『ポボスの墓標』と呼ばれるアンデッド系の魔物がメインになっている珍しい複合型の遺跡ダンジョンです。迷路型よりも深いので、皆さん危なくなったら、直ぐに戻りましょう。見習い近衛騎士の組は5人一組で行動して下さい。余った1人は、我々と行動してもらいますよ」
「「「「「「ハッ!!」」」」」」
アナハイムさんの言葉に、見習い近衛騎士の人達は返事をし、直ぐ近くに居た男女5人が集まり1人の女性騎士が残されていた。
「おや?、皆さん話し合う必要もないのですね?まぁ良いでしょう。貴女は、こちらの組に入ってもらいます。さて、ルーク様は既にBランクパーティーの冒険者として活動しますので、そちらのパーティーでお入り下さい。入ったらそのまま私が行くので少しだけお待ち下さい」
「わかりました。それでは先に行きます」
「(ルーク、このダンジョン、少しだけ嫌な感じがする。……気を付けろ)」
デービルさんに言われた後、珍しく、カミナが念話で注意してきたので、俺は気を引き締めて、ダンジョンに入った。
中は、遺跡としてはかなり綺麗な状態だった。
敵の位置と種類を確認するため、『索敵』を発動した。
1階の主な魔物は、ゾンビ、マミー、スケルトンなどの不死者系と、模倣霊、悪意の魂のゴースト・スピリット系の魔物だった。
「お待たせしました。それでは今回の訓練は、模倣霊を相手に行いますよ」
「模倣霊は、その名の通り、相手の姿を模倣する魔物です。動きやスキルは、今の貴方達をそのまま模倣します。とはいえ、弱い魔物ですので、魔力までは模倣出来ません、時間が来たら元の姿に戻るので、倒して下さい」
デービルさんは、そう言って俺達を案内する様に、歩いていった。
移動中、魔物に遭遇しても、デービルさんが直ぐに倒していく。
これだけ強いのなら、どうして盗賊に遅れをとったのか気になり、あの時の事を尋ねると、苦笑しながら
「実は……前日に覚醒を使いましてね、反動で戦え無い程、身体が動かなかったのです。いやはや、歳は取りたくないものですなぁ」
「覚醒を使いましてねって、何かあったんですか?」
「いえ、ちょっと楽をしようと思いましてな、幻覚の応用で、使い魔に私の幻影を重ねていたのですが、覚醒をしないと使えないので、カンテボまで着けば回復できる程度の魔力を使っていたのですが、幻影では戦えませんので、強制解除しましてな、魔力も少ない状態で、護衛しながらの集団戦闘は骨でした。魔力枯渇しかけて腕をやられた時に、ルーク様が来られたのですよ」
アハハと笑うデービルさんを見て、この人中身がダリウスと同じタイプの人だと認識した。
暫くして、大きな扉の前に到着し、アナハイムさん達と合流。
「この扉の中に対象が居ます。見習い近衛騎士の組は中に入りなさい。中には5体居ますので、考えながら戦いなさい」
その言葉を受けた、見習い近衛騎士達は入っていくと、直ぐに武器や魔術攻撃の音が聞こえてきた。
「はてさて、何人生き残ることやら? デービルはどう思う?」
「そうですな、まずスキル構成が駄目ですな、何故彼女を外したのかが分かりませんな」
「やはりそう思うか? 貴女は、どうして外されたのか分かりますか?ルフィエル」
アナハイムさんは、俺達と残っていた女騎士、ルフィエルさんに話し掛ける。
「あのグループには、人数合わせで頼まれたので、ワタシは何を考えているのか知りません。大方男女の仲なのでしょう?見習い近衛騎士に成ってから、あのグループは出来ましたからね。この訓練自体、受けると王宮の仕事に就職しやすくなるかも、とか軽く考えて居た近接一辺倒の男共と見習いとはいえ、近衛騎士に成った段階で訓練の手を抜いてる様な人達には……興味無いですよ」
ルフィエルさんは、冷めた、軽蔑した目で扉を見ていた。
「貴女はどうして受けたのですか?」
「あぁ、人数合わせで来たのもありますが、実戦訓練自体は弱点分析が出来ますので、自分の戦闘を自分の模倣とはいえ見ることが出来るのは貴重な経験になりますからね」
「それでは、訓練の一環として参加されたのですね?」
「そうですね、騎士として主や民衆を護る為にも、力や技は必要ですから」
冷たく見えた目は、その言葉を話している時には優しい眼差しに変わっていた。
「成る程、ありがとうございます。さてそろそろ時間ですな、扉を開けますか」
そう言ってアナハイムさんは、扉を開く。
中には、襤褸に成った鎧や兜、折れた武器が落ち、死にかけた見習い騎士達が倒れていた。
「あが……た…たふけ…」
「ううっ……動けねぇ…」
「嫌…死に…た…くな……い…」
「おや、まだ息がある方が居ましたか。『ヒール』」
デービルさんが回復魔術を使用し、襤褸の女騎士2名と男の騎士の傷を治療していた。
アナハイムさんは、落ちている装備品を収納袋に入れて名前を書いている……助からなかった人の物だろう。
さて、ではルフィエルさんも始めますか?という顔をアナハイムさんとデービルさんはしている。
ルフィエルさんも、武器の確認をしながら頷いて居た。
扉が勝手に閉まると、薄紫色の靄が5つ現れた。
それぞれソル、ギルバート、ルフィエル、俺、カミナの姿を型どり構えた。
「ほう、中々面白い、私が居るぞルーク」
「そうだね、俺も模倣されてるなぁ」
人型の姿の模倣霊に対して、本物は獣人形態をしていた。
ソルとギルバートは二人一組で対応しており、ルフィエルさんは、自分の動きを熟知している相手に、打ち合い稽古の様に戦っていた。
俺の模倣霊は、双剣を構えていた。双振りの黒い魔剣。
対するように、俺は鏡花水月に手を掛けた。
「来いよ、偽物。直ぐに終わらせてやる」
模倣霊は、その言葉に反応するかの様に、俺に迫ったのだった。




