エルザの呼び出しと指輪の強化
【フューネラルデ・サンバリュー商会・応接間】
朝から、婚約者達の呼び出しがあり、15時頃にエルザの部屋に来て欲しいと手紙に書いてあった。
なので、その前に商会で、お土産に何か食べ物を買っていく事にしたのだが、何故か応接間に案内された。
「「いらっしゃい~ルーク君」」
この商会のトップである二人がそこに入ってきた。
カリカリと引っ掻く音のする、布で回りを隠したゲージを持って……
「ルーク君、貴方、猫は好きかしラ?」
「基本、生き物全般好きですけど?」
「今回ネ、違法商人を捕縛したでショ、その関係で、衰弱した妖精猫を保護したのヨ」
「かなり良くなってはいるんだけどネ、大人の猫だし、人を見ると魔術で攻撃してくるから、厄介な状態なのヨ」
「はぁ……」
「そこでネ、今回のお土産を私達が用意する代わりに、テイマーのスキルでこの子を少し見て欲しいのヨ」
どうやら、テイムのスキルを使い、妖精猫と話をして欲しいという。
先ずはゲージの外から、念話で話してみる事にした。
「(大丈夫だよ、落ち着いて)」
「(貴様は誰だにゃ!?)」
「(俺はルークだ、君は?)」
「(自分に名は無い、妖精猫族の雌猫だにゃ)」
念話を始めると、引っ掻く音は止み、返事もして来た。
「(ルークと言ったな、貴様は何族にゃ?)」
「(俺か?俺は人族だよ)」
「(貴様、あの人族の様に自分に何かするつもりだな? 切り裂いてやるにゃ)」
再び引っ掻く音のする状態になり、遂にゲージの外側に掛けられた布が破ける。
そこからは見えたのは、小さな妖精の羽を持つ真っ黒な猫だった。
姿が見えたと同時に、俺は顔を背けた。
「(貴様、卑怯だぞ、早くこの檻から出すにゃ!!)」
「(俺達は、君を保護したんだから、敵じゃ無いよ)」
「(なら、証拠を見せるにゃ!!)」
「(証拠? 何を見せれば良いの?)」
「(………その前に、何で目線を合わせないにゃ?)」
「(いや、猫って敵意無い相手の時って目線を外すでしょ?)」
確か、野良猫が良くする動作だった筈だ。
「(確かにそうだけど……なんか狂う人間だにゃ)」
「(まぁ、良いよ、証拠ね…ちょっと聞いて見るから待ってて)」
黒猫から離れて、二人に敵じゃない証拠を聞いて見るが、首を傾げて。
「「ゴメンナサイ、分からないワ」」
と長考の後、そう言われた。
そこで、二人にマタタビについて尋ねると、徐にフューネラルデさんが、立ち上がり。
「もしかしたら、アレかも知れないワ、待ってて」
と言うと、凄まじい速さで駆けて行くと、数分も経たないうちに、手に小瓶を持って戻って来た。
「これは『夏梅の粉』だったかしラ?何年か前にアマツクニの商人が、妖精猫が好む物とか言ってたワ…今の今まで忘れてたけど、……使用期限とか大丈夫カシラ?」
「取り敢えず試してみましょう」
夏梅と呼ばれていたが、夏梅はマタタビの別名だ。
試しに、爪研ぎ用の板に粉を少し振りかけて、様子を見る。
「(ルークとか言ったな、この豊潤な香りと心地好さ、大変満足にゃ!!)」
「(そうかい?なら少なくとも、俺達に危害は加えないね?)」
「(わかったにゃ!!その代わり、もう少しゴロゴロさせて欲しいにゃ?)」
そう言って、妖精猫はゴロゴロと粉を体に擦り着けていた。
「本当に助かったワ、これを持って行って。老舗菓子店グラスタの個数限定的の『フルーツタルト』ヨ」
持ち手の所から覗くと、様々なフルーツが色鮮やかに飾られており、絵画のように大輪の花が咲いている。
「こんな高そうな物、本当に良いのですか?」
「この子が、ここまで落ち着いているのは、貴方のおかげなのヨ、普通なら専門のテイマーを呼ぶんだけどネ、割りと高いのヨ。だからこれは代金の代わりヨ」
そう言って、持たせてくれた。
「ありがとうございました。皆で食べさせてもらいます」
「良いのヨ~、フフフッ」
「また何かあったラ、頼むワネ」
フルーツタルトを異空間収納に入れると、王城に向かった。
正門の方から入り、中庭を抜けてエルザの部屋を目指す。
途中で見覚えのある顔を見つけたので、声をかける事にした。
「こんにちは、アナハイムさん」
「おや、ルーク様、ようこそいらっしゃいました。本日は、どの様な御用件で?」
「エルザに呼ばれたんですけど、何か聞いてませんか?」
「申し訳御座いません、残念ながら、本日は御嬢様方が集まられている事くらいしか聞いておりません」
何か知っているかと思い聞いてみたが、知らないらしい。
「アナハイムさん、これお土産です」
「おやおや、グラスタのフルーツタルトですか、中々買えない物ですね、後程、切り分けてお持ちします」
「お願いします」
アナハイムさんにタルトを預け、エルザの部屋に到着した。
ノックをすると、中から声は聞こえるが反応はない。
仕方ないので、もう一度ノックを行い声をかける。
「エルザ、来たよ」
「あっ!! ごめんなさい、ルーク様、ちょっと待ってて、もう少しで済むから」
と返事があった後、何人かの声とバタバタとした音が微かに聞こえた。
「いらっしゃい、ルーク様」
笑顔で出迎えてくれたエルザの顔は、何時もより明るかった。
部屋の中には、リーフィアとソフィアも居たが、二人は何時もと少し違い少しだけ疲れている様だった。
「こんにちは、二人とも来てたんだね? 二人もエルザに呼ばれたの?」
「えぇ、エルザから、どうしてもと呼ばれたのですわ」
「私はちょっと違うけど、概ね同じですよぉ」
右側のソファーに座っている二人の対面に座り、俺は異空間収納から、アクセサリーを取り出した。
紅・蒼・碧・黒それぞれの宝石を創造のスキルで造りだし加工された、前回渡した婚約指輪と同じデザインだが、遥かに物が違う代物だった。
「ルーク君、これは? 前に貰ったこの指輪と同じデザインみたいだけどぉ?」
「この指輪にをその指輪を外してから触れてみて」
婚約指輪を見ながらソフィアが聞いてきたので、新たな指輪に触れさせる。
新しい指輪は、婚約指輪に触れると、そのまま一つに融合していった。
宝石の色が更に深い色に変化し、反応が終わると結果を見た。
【永遠の結婚指輪】
装着者に対し、本人が拒絶した物を全て浄化し、身体を元に戻す自浄作用を付与する。『復元』『状態異常無効化』
と表示されており、思い通りの強化に成功した。




