隷属の首輪
「なぁルーク、俺、一応ここの皇帝やってるだけどさ、‥‥どうしてこうなった?」
「俺が一番聞きたいです」
「聞いてますか? ルーク君は子供なので未だしも、陛下は駄目でしょう?大体何で部屋に直接転移したんですか?」
ゼノさんと俺は、サンドラさんからの説教を正座で受けていた。
「いやな、ルークも式の後だし疲れてるだろうと思ってな、転移したんだがそしたらこのザマなんでな、……っていうか、使用してるなんて聞いてねぇぞ」
「まさか、書類に書いていましたよね。本日ヒューネラルデ・サンバリュー商会が来る事」
「ん?書類ってのは机の上にあったやつか?だとしたら読んだが、部屋が違うぞ」
「えっ?そんな筈は無いです」
「サンドラ、周りを見てみろ」
二人の会話を聞いていたが、俺も今日、俺達の滞在する部屋を使うとは聞いていない。
そして使用する客間は、俺達の部屋の隣だった。
「確かに、ここはルーク君達の部屋ですね…」
「やっぱりこの部屋に居たのネ」
「貴方様、ゴメンナサイ!!」
扉が勢いよく開き、サンバリューさんとアイレス様が来た。
アイレス様とは何度か話をしたが、何かとドジをする方で、そこがまた良いとゼノさんに惚気られた。
「貴方様、ごめんなさい、お部屋の案内を間違えたみたいです」
「そうか、なら仕方ないなぁ。俺が下に降りてたから案内してくれたんだろう? アイレス、ありがとう」
「そんな、私が間違えなければ、貴方様が……その…本当にゴメンナサイ」
頬を染めて恥ずかしがりながら、アイレス様はゼノさんに言葉を返していたのだが、周りからすれば、既に惚気にしか見えないので、放って置く事に。
「私達は、アイレス様この部屋にって案内されたノ、でも荷物があるし、何かの間違いだと思って確認に出たら、こうなってたワケ」
「私はアイレス様に案内されて、旅で汗が酷いし、薄着になる予定だったから、まぁ、良いやって着替えてたら、いきなり二人が現れて、手身近な物を投げたの」
サンバリューさんとエリトリアさんがすり合わせを行い、俺達も転移の経緯を話す。
案内をしたのはアイレス様で、サンバリューさん達は間違えた部屋だと気が付いて、案内の部屋を確認に行った。
エリトリアさんは、着替えをしたかったからサンバリューさん達の帰ってくる前に着替えていたら、俺達が帰って来た所だったといった流れだった。
「ルークちゃん、首輪の件なんだけど、合鍵が無いと無理みたいネ、で、この首輪を調べて分かったのだけド、無理に外せないのと一度嵌めたら、開くと同時に針が出るタイプみたいで、針をどうにかしないと、どのみち外すことも出来ないのよ」
「嵌めたら最後、解毒薬も無いからお手上げらしいな、つくづく南の人間はおぞましい物を造る」
サンバリューさんの後ろにもう一人ハーピー族の女性がいた。
「この方は、ハーピー族の族長、エアラさんヨ。エリトリアちゃんのお母様ね」
「ワタシがエアラだ! お前がルークか? …フム、悪くない、一つ手合わせを…」
「ちょっと、母様手合わせより私の首輪が先です。」
「しかしだな、ソドム様が言われたのでな、体が疼くのだ、我々の長として君臨する方から見ても、面白い逸材だと」
エアラさんは、ハーピー族と言うには聞いていたイメージとかけ離れていた。
筋肉質な腿と割れた腹筋、褐色の肌と所々見える白い肌が特徴的なヤンママ系の方でした。
「取り敢えず、首輪の件は試したい事があるので、一つ良いですか?」
「何をするのかしラ?」
「サンバリューさん達のお店に来た貴族に、渚の件を合わせて仕返しをしようかなと思いまして」
「どうするつもりナノ?」
「まぁ、見ててください」
俺は、『原初の魔導書』に書いてあった魔術、『アポート』と『アスポート』を見せる事にした。
アポートは、手元に物体を取り寄せたり、引き寄せる魔術。
アスポートは、任意の場所に送る、又は跡形もなく消し去る魔術である。
手始めに、固定されている絵画に『アポート』を行うと、壁にあった絵画は一瞬消え、手元に現れた。
続けて『アスポート』を元の位置に合わせて発動する。
少しズレはしたが大方、元の位置に移動していた。
「ルークちゃん、これどうしたノ?」
「ゼルガノン様からの報奨で、古代魔術の魔導書を読んだんです。で、覚えました」
今度は首輪に向かって、『アポート』を発動する。
首輪はその形を保ったまま、手元に現れた。
周囲の皆は、眼を疑うかの様な表示をしていたが、エリトリアの首元を見て外れた事に気が付いたエアラさんがエリトリアさんを抱き締める。
「お母様……私、…首輪が無い」
「エリトリア、良かった……良かった。外れたよ」
その間に、首輪を異空間収納に入れ、サンバリューさんに確認を取る。
「これで、一件片付いたね、さて馬鹿貴族に会いに行こうか?」
「ソウネ、あれから店に結構な事してくれたから、ソロソロ、ワタシモ、キレソウナノヨ」
「なんだか忙しそうだな、ルーク?」
怒りに体を奮わせるサンバリューさんの後ろからゼノさんが顔を出す。
「はい、ゼルガノン龍帝陛下、お世話になりました。魔石に関しては、後で手紙を出しますので」
「おぅ、頼んだ。なら転移陣を出してやろう、いつ帰るんだ?」
「皆が揃い次第戻ろうかと思います」
「なら、こいつを渡しておく。冒険者ギルドのドレアムに渡してくれ、今回の依頼成功の書類だ」
「わかりました、渡しておきます」
ゼノさんから書類を預り、普通の鞄に入れた所で、外に出ていた皆が帰って来た。




