誘導装置作成
【シルフの3月12日目】
この日ついに、誘導装置の作成が終わり、龍脈の安定化の実験を迎えた。
龍脈の源流へと赴き、高濃度の魔力が流動性であることは既に証明されており、起点となる魔剣ポルクッスを地面に刺し地面に融合させる。
馬車で片道5日程度、距離にして約250km、その中間には30km間隔で合計で8個の楔を打った。
楔の間には、龍脈の魔力を流す為のパイプラインを取り付けており、周囲に漏れない様に回りに、牢屋等に使われている反魔力の高い【封魔石】で作ったパイプで囲っている。
そして、龍脈の間にある台座には、魔剣カストルを融合させた。
「魔力を流すぞ? ルーク、後は頼んだぞ」
ゼルガノンは、ポルックスを握り、魔力を操り出した。
龍脈の間にあるカストルにまだ反応は見られない。
「(ルーク聞いているか?私だ)」
「(カミナどうした?)」
「(今、火山から120kmの位置に居る。鈍行だが、徐々に近付いて来ている。今のところは問題ない)」
「(ん、了解)」
「ゼノさんは、そのままで御願いしますね、今のところは問題ないみたいです」
「わかった!! もう少し強めて魔力を流すか?」
「(カミナ、魔力強めても良さそう?)」
「(あぁ。構わないぞ全く余裕がある。やはり破壊不可の効果は凄いものがある)」
「余裕有るみたいなので、強めて流しても良いそうです」
「なら、半分まで上げるぞ?」
カミナとの念話を通した確認を行いながら、通信鏡でゼノさんに合図を送る。
【通信鏡】
利人さんが創った連絡用の鏡で、今はこの一対しか残っていない。
相手の顔と声を対の鏡に送る魔導具で、前世のテレビ電話みたいなものだった。
「(ルーク様、渚です。210km地点に居ます。魔力の流れが速くなりました。おそらく1時間位でそちらに反応があると思われます)」
「(わかった!)」
「ゼノさん、そろそろこっちに反応があるみたいです」
「ならもう一息だな、材料的にも最後の一回だ、止まるんじゃねぇぞ」
ゼノさんは、また龍脈の魔力を込め送る。
すると、カストルに変化が現れる。
「ゼノさん、反応があります!! 魔力を緩めてください」
カストルに龍脈の魔力エネルギーが届いた。
カストルが取り付けてある台座に魔力が流れ、そこを中心にして、巨大な魔術陣が光を放ち始めた。
複雑な紋章、幾何学模様が部屋に展開される中、城の外にも変化が起き始めた。
城下町から、歓声が聞こえ始めるとアーサー達が、走ってやって来た。
「おい!ルークやった、成功だ。町の中に龍脈の魔力が溢れ出したぜ」
「これでウチらは避難せんでも、良さそうやなぁ」
「ホッホ…まさかここまで上手く行くとは思わなんだ…良かったのぅ、ほんに良かった」
どうやら、レスティオに龍脈の力が戻ったようだ。
「ゼノさん、成功したみたいです」
「…そうか……なら、…アーサーを、呼んで…くれないか?……後、水をくれ、死ぬ程キツイ…」
「わかりました。水の用意をしておきますね」
俺はアーサーを呼び、水を貰いに厨房まで向かった。
「親父、城下町も国の結界も、龍脈の力で強化され始めたぜ、やっぱりルークはスゲェやつだった」
「そうか…なら…良かったゼ……アーサー……」
「親父もお疲れ様、魔力空だろ? 久々に全力で龍脈に魔力流したら、いくら親父でもバテるんだな」
「……………」
水を瓶に持ってきたら、二人で話をしているようで、少しだけ離れようとしたその時
「親父?……どうした?」
「……………」
「おい、親父? なぁ、どうしたんだよ? ルーク、大変だ親父から、返事がねぇ」
「………………」
通信鏡の向こうには、大の字になったゼノさんが見えるが、反応が確かに無かった。
「ゼノさん、聞こえますか?」
再度尋ねると、何か物音がする。
「………………………Zzz」
「寝てるね…」
「人騒がせな親父だな、全く」
ゼノさんは魔力を空にした為、どうやら休眠状態に入ったらしい。
火山内部の龍穴の様に、突発的な物ではなく、本来のレスティオに伸びる龍脈を扱えるのは、当代の龍帝のみとされており、その負担はかなりのものであった。
疲れ果てたゼノさんを、カミナに回収して貰い、俺達は城下町の様子を見に行く事にした。
町の変化としては、レスティオ城を中心として、張られている結界がより強固な物に変わっていた。
そして、一番の効力と言えば、治療院に居た、回復魔術が効かない怪我や病気だった者が、徐々に治り始めている事だろう。
『完全回復』等は、部位欠損をしても直後で、欠損した部位があれば、元に戻せる。
しかし、時間が経ち過ぎの場合や、部位がなければ元に戻すことは出来ない。
しかし、魔術陣が発動した今、目の前には奇跡とも呼べる現象が起きていた。
レヴィアシェルがボロボロになり、この龍脈の力が再びレスティオにもたらされたのは、歴史上250年ぶりだとアーサーから聞かされ、龍人族の寿命の長さを実感した。
「おや、これは面白い、龍脈が元に戻ったのですねぇ」
そこには、デービルさんとドーハさん、もう一人の男性が居た。
「あれ? お二人とも、どうしてここに?」
「はい、ルーク様の御様子を確認する事と、紹介したい人物がおりまして、今回連れて来ました。レシアス王家の執事長、私の兄です」
「初めまして、デービルの兄で、レシアス王家執事長のアナハイムです。どうぞ宜しくお願い致します。ルーク様」
「アナハイムさん、ルーク・フォン・ラーゼリアです。こちらこそ宜しく」
アナハイムさんは、デービルさんと瓜二つな顔で、髪の色と魔力が違う以外は変わりがなかった。
「今回、四ヵ国会議がありまして、その為の準備に来たのですが、ルーク様がこちらに滞在をされて居るとの事でしたので、ご挨拶に伺いました……恐らく、四ヵ国会議の内容はルーク様の事なのですがね」
何とも言えない発言を、アナハイムさんは最後に耳打ちしてきた。




