龍脈の正体と深層部
闇精霊と蜘蛛の女王である桂花を仲間にして、俺達は下層に向かう。
その間で、この火山に出現した魔蟲の対策を進める。
「基本的に竜蟲は内部が弱いが、その外殻は竜鱗に近い。まともに斬りに行っても弾かれるぞ」
「弾かれるならどうやって倒すかが問題だな?」
「戦った感想だが狙い目は、脚の節、腹部関節部分の一点にある気門を潰せ。基が炎熱の悪魔蟲だから火炎系統の魔術は効果が無いが、炎熱器官が気門の近くにある。かなりの熱量を持っているから、一気に冷却する事で、内部から破壊する事もできそうだ」
「気門ってのはなんだ?ルーク知ってるか?」
「まぁ一応、簡単に言えば、人間の肺に当たる部分だったかな?」
「確かに、そんな所を潰されたら一溜まりもねぇや」
「そんな事をせんでも妾の毒を当てれば良いのじゃ、中から溶かすも、動きを止めるも容易じゃぞ?」
「そうですね、毒なら私も麻痺毒を使えますからお役に立てそうですね」
「毒は二人に任せるとして、一気に冷却するなら、丁度良い魔術があるから試してみるか。威力が強すぎる代物が何個かあるし。所で、ゼノさんに聞いておきたい事が在るんだけど?」
「なんだ? 力になれる事なら答えるぞ」
「もしかしなくても、龍脈って地形や環境が変わると消えるよね?」
「あぁ。本来、龍脈ってのは一種の力流れだ、河みてえな物だから、地形やら環境やらで流れが変わる他の龍脈なら消えるだろうな」
この世界での龍脈の知識が、俺の知っている物と同じなのか、すり合わせを行うと、どうも違う様だ?
「ここの龍脈は、他とは違うんだよ、確かに普通なら地理的な要因で流れが変わるか消える。だが、ここは常に流れが固定されているんだよ。だから、山が無くなろうが、凍り付こうが関係ねぇ。次の龍脈を担う俺が生きているからな。」
「えっ?」
「この国の龍脈、その源流は、先代達の亡骸だ、皇帝になった者は、寿命が近づくと、城の龍脈の間からこの火山の地下にある王座に座り、死の間際に放つ、その魔力の塊なんだよ。だから、今から向かうのは力の中心部と同時に、先代皇帝の墓の上でもあるんだよ」
火山の地下に王座があることに驚いたが、龍脈の源流が、先代皇帝の亡骸が眠る墓でもあった。
「ほぅ。つまりあの蟲共は、龍穴に巣食って居るのだな?」
「龍穴?…あぁ力場の事か、そうだ。奴等はそこに巣食って居る。そしてこの下がその力場だ」
俺は話を聞きながら、ベリトの魔力を探る。
「ベリトは…反対側に居るみたいだな、向こうで合流出来れば良いかな?」
「よし、お前達!!このまま下層の奴等を殲滅させるぞ!!」
「「「オォ━━!!」」」
ゼノさんの号令に、兵士達は気合いを入れる。
その声を聞いて、俺もスイッチを切り替えながら先頭に立つ。
『探索』を行い、敵の位置を確認する。
大きな反応は5、その内強大な反応『竜蟲』は一つ。
炎熱の女王蟲と呼ばれる大きな個体が4体と竜蟲の女王女王竜蟲1体、
カミナが女王竜蟲を、俺達は炎熱の女王蟲とその幼体を始末する。
桂花には触媒に戻ってもらい、一気に敵陣に駆ける。
「『氷結の雨』『招来、蜘蛛の女王』」
敵陣の中央に到着し、一つ目の氷魔術を使う。
無数の氷柱が天空に現れ、複数の炎熱の悪魔蟲を貫く。
桂花は討ち漏らした幼体に毒を刺して廻る。
渚は、兵士達やゼノさん、サンドラさんのフォローに当たりながら、敵の攻撃を氷魔術と雷魔術の障壁で防いでいた。
その時上から声が聞こえた。
「ルーク様、お待たせ致しました」
「ベリト!!よく戻った、さぁ殲滅戦だ!!」
ベリトの後ろには、二人分の影が立っており、かなりの強者である事がわかった。
「ベリトは渚を手伝って、俺はこのまま周りを始末するから」
そのままベリトの返事を待たず、2体の炎熱の女王蟲と周りに蠢く無数の幼体に向かうと、次の氷魔術を放つ。
「『氷霧の棺』」
放たれた魔術は、白い霧を造り出し、対象の蟲共を残さず包み込むと、足元から凍結させ始めた。
必死に逃れようと動く蟲程、気門から取り込む空気が多くなり、凍結が進む。
ほんの数秒間の内に、無数の氷像が造られるのだった。
ただし、女王蟲は抵抗が強く、動きが鈍くなる程度でしかなかった。
「取って置きだ!!『吹雪の大地』」
氷結の棺で生き延びた魔蟲を、更なる極寒の吹雪が襲い掛かる。
氷像は砕け散り、女王蟲も外側から凍結していく。
発動時に込めた魔力が続く限り吹雪が止む事は無く、魔術の発動した一帯は火山地帯の熱気に魔術の薄氷が溶け、一部氷柱が天上に出来ていた。
女王蟲は、『氷霧の棺』では屠る事が出来なかったが、『吹雪の大地』の威力は、比べるまでも無かった。
魔術の中心部から周囲の敵を巻き込み、猛吹雪の大地に閉じ込める分、消費魔力量は多く、普通ならば数人で一回が良いところだ。
15万の魔力を持つルークだからこそ、一人で放つ事が出来る、広範囲の殲滅魔術であった。
「あはは、うん。後5回は撃てるかな?」
そんな一方的な魔術に、ゼルガノン達はただ唖然としているばかりだった。
中には、こんな力があるのなら、何故使わなかったのかと内心憤る者も居たかも知れないが、
ルークの顔をみて、その一言をいえる者は居なかった。
何故ならば、ルークは泣きながら笑っていたからだ。
目尻の泣き跡が凍り、猛り狂う魔力を放つ姿を誰が責めることが出来るのか? 5歳の少年を罵る事が、出来るのか?
こうして、女王竜蟲を除く全ての魔蟲は、半ば八つ当たりなルークの魔術により、壊滅する事になった。
生き残った蟲共に、兵士達は武器を突き刺す。
恨みを晴らすかの様に、失った友に手向けを渡すかの様に。
『Gyusaaa━━━!!』
不意に大きな叫び声のような物が聞こえ、確認すると、カミナが女王竜蟲に止めを放つ姿が、そこにはあった。




