学院入学試験終了
カミナとの模擬戦後、俺達は周囲の動きを見ながら、この状況をどうしようか考えていた。
すると眼鏡を掛けた優男と筋肉質な男に、ドレアムさんとグリムさんの四人の男性が此方にやって来た。
「カミナとルーク、お前ら派手にやりすぎだ」
「あっ、ドレアムさん」
「なんだ? 主人と遊ぶのに何か問題でも?」
「カミナ…お前さんは、何をしに此処に来たんだ?」
「うむ、模擬戦闘の試験官であろう、そこならば問題無く終わっているぞ?」
「なら何でガチの試合しているんだよ?」
「あくまでも、子供に合わせた試験をしろと言ったのはそちらの教師と学院長だろう? 贔屓目無しで、ルークには合った条件の試験をしていると思うが?」
カミナは、ドレアムさんとグリムさん、後ろに居た二人に向けて言った。
「確かに、その様にしてもらいたいのでお願いしますとは言いましたが、ここまでの物をしてくださいとは言いましたか?」
眼鏡を掛けた優男が、カミナに言い返す。
俺からしても、やりすぎだと思うので、何も言わない。
「確かに言われては居ないが、やりすぎだと思うか? 何も出来ぬ赤子に対して行うのであればそうであろうが、お前達の中でルークの相手に成るものが居るのか?」
「━━………居ませんね、確かにそう言うのも分からなくは無いです」
「それに結界を張っていた様だが、あんな紙切れの様なもの、幾重に重ねても破れて居ただろう」
カミナの一言を聞いた他の教師達は、苛立ちを隠せていない者も居たが、事実でもあるのか顔を背ける者が多く居た。
「では、ルーク君に関しては、既に複合魔術や魔力制御が出来ているので、そもそも学院の入学自体必要が無いのでは?」
「確かに、ルークは既に学院の学生レベルでは無いな、……よしルーク帰るぞ。別のダンジョンにアタックするぞ」
カミナが俺の手を握り、反対の腕を渚が掴んで居た。
その姿は、さながら捕獲された宇宙人の様であった。
しかし、意外な所から声が掛かる。
「そう言う訳にはいかんのじゃ、オーレルカよ」
「今、私の名を呼びましたか? 貴方は見たことがない方ですが、どちら様ですか?」
オーレルカと呼ばれた優男は、待ったを掛けた、グリムさんに対してその様に言った。
「ふむ、久方ぶりの魔術じゃったが、存外分からぬものよな?」
「前に合った時とは顔も魔力の流れも違うが、何故そんな姿をしている? 学院長」
「「「はぁ!?」」」
俺とオーレルカ、筋肉質の男は一斉にグリムさんを見て、それぞれ違うが驚いて居た。
俺は純粋に驚き、二人は知っている姿と魔力ではなかったから。
「ほぅ、この姿を見破るか、流石は理の外に連なる者なだけはあるのぅ」
「理の外に連なる者?」
「元は高位の神獸であろう? バカ息子どもは気付かんかったがのぅ。理の外とは、神の域を越えたもの、若しくは神性が反転したものを意味する言葉じゃ」
聞き慣れない単語に、疑問を浮かべると、グリムさんは説明をしてくれた。
「『魔法霧散』『偽造変化』」
グリムさんは無詠唱で魔術を解除すると、曲がった腰は真っ直ぐに伸び、細い身体は引き締まった筋肉質の身体に変化をしていく。
顔立ちはレシアス陛下に似ているが、陛下よりも洗練された魔力と鋭い眼差しは、歴戦の猛者としての風格を纏わせて居た。
「オーレルカとガルダイアよ、学院の中でも実力のある教師であるお主らに問う!!この学院の信念、思想とは何か?」
「「はっ!! 『才無き者には救いの術を、持つ者には更なる向上を学ぶ場を、全ての者に慈しみを持って接しよ』と『力有る者には暴走しない心を持たせよ』です。グリムガルト様」」
「では、ルーク君が学院に入学するのはどうだ、問題があるか?」
「「ありません」」
「それに、バカ息子とその友人達からは、既に卒業までの資金を受け取ってあるからの、きちんと孫達と卒業するんじゃよルーク君?」
「はい、前王陛下グリムガルト・ウルムンド・レシアス様」
『グリムガルト』の名前で正体に気が付いた為、最敬礼で俺は応えた。
グリムさんの正体は、前レシアス国王にして、『魔導王』と称された、グリムガルト様だった。
今は、何処かの学院長として余生を過ごされているとは聞いていたが、まさか『ドラムシアス』の学院長とは思わなかった。
「さて、では三班共に入学試験が終わったみたいじゃから皆、入り口に戻るぞ『学院内転移陣』起動」
グリムガルト様の魔力に応じ、俺達の周囲を取り囲む様に、魔法陣が現れたと同時に光に包まれる。
気が付いた時には、俺達は正門前に転移していた。
「「「「スッゲー!!」」」」
周りの受験生達は、転移した事に驚きザワツキだす。
「全員静まれ、学院長先生のお話があります。 ……どうぞ」
「皆の者、ドラムシアス学院の学院長グリムガルトじゃ」
今回、この様な挨拶は、プログラムに入っていない為、周辺の貴族達は、最敬礼を行う。
「此度の受験生は質の高い入学希望者が多く、私としても、嬉しく思う。中には基準値に満たない者も居るとは思うが、結果に悲観せずに再度努力を重ねよ、皆も知っている、落ちこぼれ魔術師から魔導王と称された私からの言葉じゃ」
グリムガルト様はそう言って、転移陣を使い再び消えた。
「これで、入学試験を全て終了とする。後日合否と合格者には同時にクラスの番号を同封する」
その後、ガルダイアと呼ばれていた筋肉質の教師が出て試験の終了を告げた。
俺達は、アーサー達と共に移動することにした。
「ルーク、済まねぇな、早速本題なんだが…」
「アーサー、実はね…」
俺はアーサーに、魔剣が既に力を取り戻し、本来の姿に変化した事を伝えた。
アーサーは驚くも、ニカッと笑い何かを取り出すと
「なら親父に連絡するわ、待ってろ」
と言い、取り出した物に魔力を込めると鏡の様に何かの姿を映し出した。
「なんだアーサー、オリビア? 何時もの連絡時間より、随分早いな?」
そこに映されていたのは、俺に魔剣とアズライトクリスタルを渡したゼノさんではなく、龍神皇国レスティオの龍帝ゼルガノンの姿であった。




