変装者の大群
そんな状況でも臆する事なく前に出ると鏡花水月を振るうと一人の変装者の打撃が別個体に直撃すると、変装者が粉々に粉砕されたのだ。
「やはりな」
そんな予想通りの展開に舌打ちを溢しながら振り返ると、既にヴェニスも戦闘を開始していた。
すると彼の実力は相当なもので次々と敵を屠っていくのだが、一向に数を減らす気配は無かった。
(こりゃ長期戦は辛い……)
そんな事を考えながら鏡花水月を振るっているのだが、接近戦を続けるには敵の数は余りにも多く思えた。
そんな時である……激しい地鳴りと共に地面が大きく揺れ出したのだ。
其れはヴェニスの斬撃だった。
一度の抜刀で周囲の変装者が斃れる。
その光景はまさに圧巻であり、息付く暇もない斬撃の嵐が変装者の軍勢を薙ぎ倒していく。
だがそれと同時に地面から無数の触手のような物が姿を見せたかと思うとヴェニスに襲いかかると、彼は咄嗟に躱したのだが、触手の先端には鋭い爪が生えており彼の体を引き裂くように伸びるのだが……俺はその隙を狙って斬り込むと他の敵を引き受ける事にしたのだ。
「こいつは任せたぞ小僧!」
そんな叫びと共に目の前の敵に集中すると次々に斬り伏せて行く。
その動きは素早く、そして無駄が無い動きだ。一撃一撃に殺意が込められており的確に急所を狙っている事からも彼の技量の高さを垣間見る事が出来たのだが……。
だが変装者達もまた一枚上手だったようで、今までの行動とは打って変わり連携を取るようになったのだ。
(なるほどな……)
そんな彼らに対して俺は冷静に対処する事で敵を捌いていく。
敵の総数は既に八割にまで減らされており残り時間はそう長くないだろうが油断はできない状況であった。
その証拠に敵の攻撃も物量から質の方へ変更されていき、武器を扱う個体が出て来た位だ。
そんな時、俺の足元にいた変装者が勢い良く飛び上がると奇声を上げながら空中で体を回転させると、その勢いのまま蹴りを繰り出してくるのだが、俺はその攻撃を受け止めると驚愕の表情を浮かべる相手の足を払い転倒させる事に成功する。
そして其れを踏み台にし跳躍すると上から襲い掛かろうとしている敵を斬り伏せ着地と同時に地を蹴り走り出す。
そして同時に周囲の敵を斬り伏せて行くと全ての敵を始末する為一気に駆け抜ける事にしたのだ。
「ほう……やるじゃねえか!」
そんな声が聞こえたかと思うとヴェニスも隣で打ち漏らした敵を斬り伏せたいた。
だがそれでも敵の数は多く、俺達は囲まれてしまうと一斉に襲いかかって来たのだが……次の瞬間である。
「姿勢を低く保て、取って置きだ」
ヴェニスがそう呟くと同時に俺を守るように彼の背が目の前へとやってきた。
そして同時に抜刀し……襲いかかる刃を全て弾くと返す刀で次々と敵を斬り伏せたのだ。
「腕を上げたな小僧」
そんな言葉に俺は素直に答える事にした。
「貴方程ではないですけどね……」
すると彼はククッと笑うと次の斬撃を繰り出すべく構えを取る。そして俺達は背中合わせの状態のままお互いを守るように戦い続けたのだが、ある一瞬を境に事態は急変した。
突然中心部の男が爆破を起こしたのだ。その衝撃で変装者の軍勢は姿を消してしまい、爆破の中心部に二人の影を残すのみだった。
「イグラダジデモ……キリガナイ」
「ジガダガナイ、マダイケ……」
二人の声が同時に聞こえた瞬間、彼等は跡形もなく消え去ってしまった。俺はその光景に一瞬唖然となるのだが、次の瞬間背後から物凄い殺気を感じ取ると直ぐ様振り返り剣を構える。
(何時の間に背後に回り込んだ?)
そんな事を考える暇も無く敵の拳が俺に迫ると咄嗟に鏡花水月で受け流すのだがその威力はすざましく大きく後ろに吹き飛ばされると激しく地面へと打ち付けられていた。
「小僧!」
そんな声が響く中で必死に地面を転がる事で何とか態勢を整えて立ち上がると、目の前には異形の化け物が姿を見せていた。
その姿は人間と似ているのだが身体中から触手を生やしており、その先端には鋭い刃が生えていたのである。
(あれが正体なのか?)
俺がそんな事を考えていると奴の目が怪しく光ると俺に向かって飛びかかってきたのだ。咄嵯に反応した俺は横に転がって回避すると立ち上がって距離を取る事にしたのだ。
「おい大丈夫か?」
そんなヴェニスの声に反応する事もなく構えると思考を巡らせる……正直勝てるビジョンが浮かばない。
(今の状態じゃ太刀打ち出来ない)
俺はそう判断すると素早く懐から煙玉を取り出すと地面に叩きつけると同時に再び地を蹴り走り出したのだ。
そしてヴェニスに告げる。
「こいつの相手は俺がする!」
「なら、此方のは俺が貰うぜ!序だ賭けようぜ、どっちが早く倒せるか」
そんな軽口を叩く彼に対して俺は笑みを浮かべてしまった。
「それじゃあ、俺は負けれませんね」
その言葉に彼もまた笑みを浮かべるとその場を後にするのだった。
(さて……)
ヴェニスが離れてくれた事で今度は一対一の勝負となる。奴の姿こそ人間に近いのだがその実力は下手をするとあの騎士よりも上かもしれないと考えたのだ。
何故なら奴は触手に生やした刃で攻撃してくるだけなのだが、其れを避けるだけでもかなりの集中力が必要であり避ける事だけに集中すれば先程のような結果にはならないが攻撃の手が回らない。
刃に毒でも仕込まれていたら終わりだが、そんな事は無くただ純粋に攻撃してくるだけなのでその点は有り難い。
(とは言え油断すれば一瞬で斬り伏せられる)
そんな事を考えつつひたすら防御に専念すると次第に反撃の糸口が掴めそうな気がしてきたのだ。
そしてその瞬間が訪れる……相手が触手を振るった瞬間を狙って俺は一気に踏み込むと同時に懐に入ると奴の胸に刃先を突き刺す。
すると激しい悲鳴を上げると血を吐き出すように口から液体を吐き出して見せたのだ。
だがそこで攻撃の手を緩めるような事はしない。そのまま何度も刀を振り抜き肉を削ぎ核や魔石を引き抜いていった。
打ち合う刃と刃、その衝撃で火花が散り鍔迫り合いになると、俺はヴェニスに向かって話し掛ける。
「おうヴェニス!へばってねぇか?」
「ぬかせ!てめぇこそ息が上がってんじねぇか?」
俺とヴェニスは今、戦いの最中だったのだ。お互いに肩で息をしており、体力的にも限界が近づいていた頃……決着の時は訪れる。
互いに相対していた相手を切り裂き一息つく。
「はぁ……はぁ……俺の勝ちだ」
「ぬかせ、今のは引き分けだろうが……」
そう言って座り込むヴェニスに俺は手を差し伸べた。そんな俺の手を掴んで立ち上がると彼はこう口にして見せたのだ。
「まぁ今回は負けてやる、だが次は俺が勝つからな?」
そんなヴェニスの言葉に笑みを浮かべるとお互いに拳を合わせるのであった。




