サーコートの男”教授”
(明らかにヴェニスのおっさんと互角かそれ以上だけどカミナよりはましだな)
そう考えている間に俺は目の前の敵に集中することにした。先程までの比ではない実力に苦戦を強いられるが何とか持ち堪えていると、突如閃光のような一撃によりヴェニスが吹き飛ばされたのだ。
「加勢に来たぞ、教授早く退避を!!」
そんな声と共に姿を現したのは白を基調とした鎧に身を包んだ剣士だった。そして彼の背後から更に7人程の人影が見えると、サーコートの男の退路を断つように陣形を組み始める。
(部下か?)
そう考えている間にも戦闘は再開され、先程の閃光の正体である純白の全身鎧を着た人物がヴェニスの隣に並んだのだ。
「お主が教授や贋作者が言っていた小僧だな?」
俺は静かに頷くと彼らは名乗りを上げたのだ。
「私は……騎士だ」
「同じく、魔道士さね!」
そんな言葉を口にしたのだった……。
騎士と名乗った男は腰に下げた剣を抜くと高らかにこう宣言したのだ。
「さあ、行くぞ━━殲滅を開始する!!」
その言葉と共に俺の物語は転機を迎えるのだった……。
(面白い奴が居たもんだぜ)
そんな事を考えなから戦いに参加するのであった。
だが二対七では勝てないと思ったのかヴェニスは珍しく警戒をしていた。
(さてと……)
これからの事を考えると少しばかりの不安が過るが、何とかなるだろうと考えを改めると彼らと共闘する事に決めたのだ。
「小僧は私が受け持とう、お主達は教授を頼むぞ?」
魔法を行使しながら騎士風の男はそう告げてきた。それに答える様に俺とヴェニスも頷くと近接戦に持ち込む事にしたのだ。
騎士の男━━その速度は速く此方の動きに合わせて様々な角度、距離から斬撃を放つ技量には舌を巻くが、俺はそれを最小限の動きで全て受け流していた。
「流石は本物というところか?」
そんな事を呟いていると槍による反撃をして来たので、それを避けながら後退するのだが、間合いを詰めて来ようとはしなかったのだ。
(この男……もしかして俺を警戒しているのか?)
そんな疑問を抱きながら距離を詰めようとすると先に攻撃を仕掛けられる始末であった。しかし、そんな時後方から光の矢が放たれると敵の注意は其方に向き始める。
(これはチャンスだな……)
そう思った俺は即座に騎士風の男に間合いを詰めると、それに反応した相手が防御の構えを取ろうとするが……。
(遅い!!)
俺はすかさず喉元に剣先を突きつけると動きを止めることが出来たのだ。そんな俺の姿を見たヴェニスが不敵な笑みを浮かべているのが視界に入る。
「チッ!」
そんな声と共に土壁の魔術で其々の白服共を分断し、魔道士が頭巾を剥ぎ取ると、中から現れたのはマッドサイエンティストという言葉が似合う老人だった。
その手には黒い鉱石の様なものが握られており、その禍々しい雰囲気からあれも魔石なのだろうと察する事が出来た。
「やってくれたな……小僧!」
そう叫びを上げた魔道士は魔石を握りしめると、次の瞬間には老人の体を別の何かが覆っていたのだ。それはまるで蛇のような姿をしており、鎧の様に纏わり付いているのだ。
「こいつは対異端殲滅騎士用に造られた魔導兵器だ!いくら贋作とは言えこの速度と一撃を耐え凌ぐ事は出来んわ!!」
そんな声と共に魔道士が襲い掛かってくるのだが━━その攻撃が俺に当たることは無かった。
「ハアァァッ!!」
力強い掛け声と共にヴェニスが仕込み杖で魔道士を殴り飛ばしたのだ。そのまま壁に激突した老人は意識を失っているようであった。
「らしくねぇじゃねぇか?」
静かにそう告げるとヴェニスは剣を構えたままジッと視線を向けてくるのだが、俺が無言で首を横に振るとため息を漏らしていた。
「まあ良いさ、あの魔導兵器の相手は譲ってやるからさっさと済ませて来い。騎士は俺様がやっておく」
俺は静かに頷くと魔石を握りしめる老人に向き直り動き出すのだった━━!
「まさか魔導兵器がやられたと言うのか?貴様、何をした!?」
苛立ちを隠そうともせずに怒鳴る魔道士に対して俺は静かに答えた。
「魔導兵器なんてのは、デカけりゃ良いって訳でもねぇ!!」
手にした魔導銃で魔道士の両腕を吹き飛ばし、俺は即座に距離を詰めると魔導兵器の腹部に蹴りを放つと上空へ打ち上げる。
「こ……小僧が!」
そんな言葉を漏らす魔道士に対して頭部に鏡花水月の刃を滑らせると、悲鳴を上げる隙を与えずに首を切断したのだ。
頭部を失った魔道士が装着していた魔導兵器はその場に倒れ込むと動きを止めていた。それを確認すると俺は魔道士に視線を向けた。
「アンタ……味方ごと何て何を考えてんだ?」
そんな問い掛けに対して彼は不敵な笑みを浮かべていたのだ。そしてヴェニスの方へと視線を向けるが、そちらも決着はついたようだ。
片腕を無くした騎士風の男は膝をつくと剣を手放した。
「我々の負けだ……好きにするが良い」
そう答える姿には何の感情も見られず、ただただ此方の動向を探っているように思えた。
(尋問するべきか?)
そんな風に考えていると魔道士が口を開く。
「既に知っての通り……我らは魔石を使いすぎているからな」
そんな意味深な言葉を口にするのだが良く見てみれば、前回襲ってきた蛇眼の男と同じく、皮膚に罅が走っていた。いや、良く見れば頭部にもあった。
「なんだ?つまりは魔石を埋め込まれてるってことか?」
俺がそう呟くと隻腕となった男は静かに頷く。
「如何にも……我らの研究の成果よ」
(この男が使っているのは上位種ってことか……?)
そんな疑問を抱くと彼は再び話し始める。
「元々魔石や核は魔力の増幅器官でしか無い。であれば人が取り込んでも問題は無いとされていたが、我等のように魔物の核を取り込んだ結果はこの見た目と能力だけだ。更に魔物の核には魔石を生成する力があるのだ」
つまりは人も魔石を使えば、どんな生物にも変化するという事だろう。その結果が今の姿なのだと理解する事が出来た。そしてそれを理解した上で気になる事を問いただす事にしたのだ。
「誰がこんな研究をしてたんだ?」
そう聞くと彼はクツクツと笑い出したのだが、次に口にしたのは信じられない言葉だった。
「この研究を始めさせたのは【剣聖】そして【教授】だ……なぁ【剣聖ヴェニス】」
そんな衝撃的な言葉に思わず固まってしまったのだが……静かに思い返す。
(あの剣技に剣術、そして驚異的な身体能力……やはりそうだったのか)
それと同時に疑問が浮かぶ。それを確かめる為に再び質問をしたのだ。
「そんなアンタがなぜこんな研究をしていたんだ?」
その問いにヴェニスは淡々と答え始めたのだ。
「我らの研究はウィケッド帝国の為でも教団の為でもない……」
そう言葉を区切ると静かに口を開いたのだ。




