亀龍ユグドラシル
森を駆け抜け、ひたすら光の柱に向かい進み続けようやく開けた場所へ辿り着くと、そこに居たのは1頭の巨大な竜だった。
『……』
その姿は以前見た事がある岩石竜に似ているが、その大きさは桁違いであった。
(これがガイアなのか?)
巨大な姿をした彼女を前にそう考えずにはいられなかったのだが……そんな俺に向けて彼女は頭を下げたのだ。その様子に驚きの表情を浮かべた時、レヴィアスの声が頭の中に聞こえてきたのである。
『あの者は神殿を守護する者です』
そんな声と同時に彼女は自らの翼を広げて宙へと飛び立ったのである。そのまま上空でホバリングを行うと俺達を見下ろしてきたのである。その姿を眺めていた俺達は思わず唖然としていた。
そしてガイアと呼ばれる彼女は姿を変え人の形へ変貌しゆっくりと地上へ降りたってきたのだ。
『レヴィアスと契約者ルークよ、我が主の試練を見事乗り越えた事を祝福する』
そう言って微笑む彼女の美しさに見惚れている間にガイアが口を開いたのだ。
「それでは契約者を我の下へ連れてまいれ……その者の覚悟を以て契約の成立とせよ」
そんな一言を残して消えてしまった彼女を見送ると俺は神殿の中へ足を踏み入れた。
巨大な樹木を背に生やした龍の像に触れると確かに力を感じられ、だが次の瞬間には別の場所へと転移していたのである。
「ここは……」
(まさか地下か?)
周囲を見渡すと先程の空間とは打って変わって青々とした草原が広がる空間であった。そこには小さな小屋があり、その扉から中を覗くと美しい少女が立っていて目が合ったのだ。
そんな彼女はにっこりと微笑みながら話し掛けてきたのである。
『やぁ、ボクの世界にようやく来たね? 初めまして、ユグドラシルだよ』
そう言って笑う彼女の顔を見つめながら俺は「ああ、綺麗な人だな」と呑気な事を考
えていたのである。
(さぁ~て、どうするべきかな)
そんなことを考えている間にユグドラシルと名乗った彼女はさらに話し掛けてきたのである。
『君と話をする前に君の力を見せて欲しいんだ』
その言葉に俺は迷わず頷くと刀を抜いたのだ。すると俺の姿を見た彼女が目を細めて微笑むと優しく語り掛けてきた。
『土木を司る龍、再生と終焉を齎し、永久を揺蕩う導也。汝、其の力を何とするや?』
その言葉が響き渡ると同時に俺の周囲で不思議な現象が起き始めたのだ。それはまるでこの世界を侵食するように広がり続けると、やがて眩い光が辺りを覆い尽くしたのである。その眩しさに思わず目を瞑ったのだが次の瞬間には再び開けた場所へと移動していた。
(今のは一体……)
そんな疑問を抱いている俺にユグドラシルが話し掛けてきた。
『ちょっと気になってね……』
そう口にした彼女はジッと俺の事を見つめていたのだ。俺は訳も分からず首を傾げていたが、次の一言を聞いて固まってしまったのである
『うん、合格かな。ボクの力は流れに乗る事、キミの言葉で言うならば輪廻転生ってことなんだよね』
無邪気に笑う彼女はそう言うと俺の心臓に指差す。
『我が名はユグドラシル、汝を我の契約者とし破壊神の使徒として認めよう』
突然告げられた言葉に驚きの表情を浮かべる中、ユグドラシルは俺の頭に手を伸ばしてそっと触れた。その瞬間、身体に異変を感じると自分の中に新しい力が流れ込んでくる感覚を覚えたのだ。そして理解したのである……俺は正式に契約を交わしたのだと……そんな俺を見つめながらユグドラシルは口を開いた。
『これでキミはボクが創った世界を自由に行き来出来るよ』
その言葉に首を傾げてしまった時、彼女は微笑みながら説明してくれたのである。
「ボクと契約した事でルークの存在はこの世界の住人と同じになったんだよ。まぁ一回だけ死んでも生き返れるって思えば良いよ」
そんな説明を受けて納得は出来たが、いまいち理解に苦しむ話だった。
転生者として一度生き返った様なものなのだから、もう一度転生し直すという事だろうか?それともその場で蘇生出来るという物なのか解釈が分かれる力だった。
そんな事を考えてしまった俺の背中をユグドラシルが叩いてきたのだ。
「悩んでも仕方ないよ、とりあえず……お風呂へ入っておいで?」
ニッコリと微笑みを向けてくる彼女に思わず見惚れてしまったのだが……まさか……俺の心を読んだのか? そんな事を考えていた俺に彼女は小首を傾げた後、満面の笑みを浮かべたのだ。
(ま、まぁいいか……)
そう言って風呂に入ると湯舟に浸かり旅の疲れを取る事にしたのだが……やはり気になる事もある訳でついつい考え込んでしまう。
翌朝、ユグドラシルの姿を探したが、見当たらずそのまま神殿の外に出ると、光の柱が微かに目視出来た。
「あと残りはシャガールとハイペリオンだけだろう? アグニシュカとオルクスの加護はあるみたいだし、一番遠いシャガールの位置を標しておくよ」
そう言うと彼女は指を指した。
其れは微かに目視出来た柱の位置を指し示すように。
「さ、行こうか?」と歩き出すカミナに頷いて答えた俺は後を追いかける事にしたのだが……その先に居たのは予想だにしない光景だったのである。
目の前に広がるのは大きな湖だったのだが、シャガールの姿は何処にもなかった。周囲を見渡せば下流には巨大な滝があり、上空から見るまで気付かなかったようだ……しかも、かなり高い場所にあるので飛び降りるにしても危険な高さであった為、その場に留まり周辺を見回すことにしたのである。
それから30分程掛けて捜索を続けた結果、瀑布の麓に僅かばかりの陸地を見つけ出した俺は、改めて気を入れ直した。そして陸地へ上がると周囲を警戒しながらシャガールの気配を探し始めたのだ。




