変わった事とお家騒動
6年経てばいろいろなことが変わった。
先ずは兄達だろう。
カイン兄様は16歳を迎えアメリア義姉様と結婚式を執り行い次期ラーゼリア領主としての第一歩を歩んでいた。
次にルシアン兄さんだが、無事エルミアと婚約をすることが出来た。
エルミアからすれば玉の輿だろうが、ルシアン兄さんも、カイン兄様の補佐として勉強漬けの日々を過ごしている。
そして、俺はというと……領地のインフラ整備や防衛設備の作成、領主邸の作成と忙しく駆け回っていた。
流石に全てを一人でこなすというのは無理があったが、インフラ整備は他の国でもあった上下水道の概念が役に立った。
利人さん達……最初の転生者が行っていた浄化の使い方をそのまま利用させてもらう事にしたのだ。
それに一役買ったのはスライムだった。
浄化した下水にスライムを浸し、流れた汚物をスライムがエサとする為、定期的に汚物がスライムによって分解される仕組みだ。
この方法はスライムの増殖も有効活用出来る為、煉瓦の材料確保としても良しの一石二鳥なのだ。
そんな訳で俺はインフラ整備と防衛設備の作成に勤しんでいたのである。
学院での変化といえば、婚約者達から呼び名がルークかルーク卿と呼ばれる様になった。前者は主に公の場以外での呼び方であり、後者は公の場での呼び名になるのだが、エルザだけは時々素でルークくんと呼びかけることがあったりする。
そんな婚約者達だが……最近ある問題を抱えていたのだった。それは……俺との婚約問題である。
未だに異を唱える貴族が少数ながらいるのだ。
(まぁ……貴族社会は政略結婚が当たり前だからな)
そんな事を考えつつ俺は領地の経営と学生生活を楽しんでいた。……つい先程までは。
今、俺は学院の一室にティルマン君とベロニカ嬢、アル爺様と見知らぬ男女二組の計7名で向かい合っていた。
「ルーク卿、この度はこのような場を設けて頂きありがとうございます。ベロニカの父です」
そう口を開いたのはベロニカ嬢の父であるラミアール子爵だった。俺はそんな公爵の言葉に苦笑いを浮かべて答えたのである。
「いえ……お気になさらずラミアール卿」
そんな俺の問いにラミアール子爵の隣に座っていた女性が笑みを浮かべて口を開いたのだ。
「まずは自己紹介をしましょう?私はレティシア・フォン・リーティンと申します。ほら貴方も!」
「うむ……ラミアール・フォン・リーティン、子爵の位を陛下より賜った」
「私は、アルフレド・フォン・リーティンだ。子爵の位を陛下より賜った」
「そして私が、ベロニカ・フォン・リーティンです」
そんな三人の言葉に理解したのはティルマン君の事だろうと容易に想像出来た。
「は……初めまして、ティルマンの父モリクと申します。コチラは妻のメリナと申しますハイ」
「メリナです。よろしくお願いします」
そんな二人の挨拶に俺は笑みを浮かべて答えたのである。
「初めまして、ルーク・フォン・アマルガムと申します。位は子爵を陛下より賜っています。それで……本日はどういったご用件でしょうか?」
俺の問いに対してラミアール子爵が答えてくれたのだ。
「はい、我々の娘が婚約者候補としてティルマン君を紹介してきたのですが、婚約者としてどうなのかルーク卿の意見を聞きたいとアルツナイ……父にお願いした次第です」
「なるほど……そういう事ですか。まぁ、先ずはベロニカ嬢とティルマン君の相性は良いですよ。3人班でも二人だけの時でも属性相性が互いに対となってますからね」
俺がそう言うとベロニカ嬢は嬉しそうな笑みを浮かべ、ティルマン君は恥ずかしそうに頬を赤らめていた。そんな二人を見てラミアール子爵が口を開いたのである。
「そうですか……それは良かった」
そんな安堵の表情を浮かべるラミアール子爵に俺は笑みを浮かべて答えたのだ。
「えぇ、相性が良いのは良い事です。ただ……婚約者としてとなると少し弱い……そうですね?」
「はい、私もそう思います」
俺の問いに対してラミアール子爵が答えると俺は頷いて口を開いた。
「では……婚約者として相応しくない理由は庶民だからですか?」
「はい、その通りです」
ラミアール子爵の答えに俺は苦笑いを浮かべて口を開いた。
「ならば、二人が婚約するには貴族か準じる地位になるしかありませんね?」
俺の問いにラミアール子爵は頷いて答えたのだ。
「はい……ですがルーク卿が仰る通り庶民と貴族の婚姻は難しいかと……」
そんなラミアール子爵の言葉に俺は笑みを浮かべて答えたのである。
「いえ?簡単な事ですよ?彼を俺の配下にするだけですから」
「それは……どういう事でしょうか?」
そんなラミアール子爵の言葉に俺は笑みを浮かべたまま答えた。
「簡単ですよ?彼は俺の部下になる訳ですから、俺が貴族に近い地位に取り立てれば良いんですよ」
俺がそう言うとラミアール子爵は目を見開いて固まってしまったのだ。そんなラミアール子爵の代わりにモリクさんが口を開いたのである。
「ルーク卿の配下になるのは構いませんが、私達はどうなるのでしょう?」
そんなモリクさんの問いに俺は笑みを浮かべて答えたのだ。
「彼は私の友人であり、腕の良い職人です。当然ながら貴方方も庇護下に含みますよ。私の領地では人は宝ですからね、同じ職であれば優遇しますよ」
「そうですか……ありがとうございます」
俺の言葉にモリクさんは笑みを浮かべて頭を下げていたのである。そんな俺達のやり取りを聞いていたティルマン君が口を開いたのだ。
「あ、あの!僕は本当に貴族になるんですか?」
その問いに対して俺は笑みを浮かべて答えたのである。
「もちろんなれるさ、俺の配下になればね?ただ……その為には君の努力が必要だよ?」
そんな俺の問いにティルマン君は真剣な表情で頷いたのだった。そして、ラミアール子爵が俺に頭を下げて言ったのである。
「ルーク卿……どうか我が子達をよろしくお願い致します」
そんなラミアール子爵の言葉に俺は笑みを浮かべて答えたのだ。
「えぇ、任せて下さい」
俺の言葉にラミアール子爵は安堵した表情を浮かべるとベロニカ嬢に視線を向けたのだった。その視線にベロニカ嬢は頷いて口を開いたのである。
「お父様!私、ティルマン様と一緒に頑張っていきます!」
その言葉にラミアール子爵も笑顔で頷き返していたのだった。
(やれやれ……これで一件落着かな)
そんな事を考えつつ俺はティルマン君に視線を向けたのである。
「良かったね、これで婚約者になれるよ?」
俺がそう言うとティルマン君は笑みを浮かべて言ったのだ。
「はい!ありがとうございます!」
そんな嬉しそうなティルマン君を見て、ベロニカ嬢は笑みを浮かべていたのだった。
(まぁ……二人なら上手くやっていけるだろう)
そんな事を考えつつ俺はラミアール子爵に視線を移した。そんな俺の視線に気づいたラミアール子爵が口を開いたのである。
「ルーク卿……この度は我々の為にお時間を頂きありがとうございました」
「いえ、ラミアール卿。俺は友人であるティルマン君の為に行っただけですよ?」
俺がそう答えるとラミアール子爵は笑みを浮かべて口を開いた。
「それでも、ありがとうございます」
そんなラミアール子爵に俺は笑みを浮かべて答えたのである。
「いえ……お気になさらず」
(まぁ……これで二人の婚約も正式に決まった訳だし一安心かな?)
そんな事を考えつつ俺は学院を後にしたのだった。
それから数日後の事である。ベロニカ嬢から手紙が届いたのだ。その手紙にはこう書かれていたのである。
『ルーク様へ お元気ですか?私は今、お父様に付いて領地経営の勉強をしています。ティルマンさんも頑張っていらっしゃいますよ? それと……先日はお時間を作って頂きありがとうございました。お陰で彼と正式に婚約する事が出来ました。これも全てルーク様のお陰です。本当に感謝致します ベロニカより』
(そうか……良かったな)
俺はそう思いつつ手紙を読み終えると笑みを浮かべたのだった。




