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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-19 精霊契約と他の集落へ
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霊薬学のパートナーは問題児?

「それでじゃが、ルーク君の素質を考えれば、他の生徒と組んでも然程問題じゃ無いが、ティルマン君と組むのは少しばかり問題があると思うてな」

「成程、そういうことですか」

「……言わなくとも伝わる様で助かるが、あえて言うならば、出来過ぎるというのは悪い噂になるのぉ」


 アル爺様の言いたい事は分かる。

 余りにもレベルの高い者同士がペアになると、それだけ周囲と実力差が出来てしまうと言うことだ。


「そこでじゃが、ルーク君のパートナーとして相性が良さそうな者が居ての。適正的には何と言うべきかの……ルーク君が上を行き過ぎていて、彼は下を行くような子じゃが……根性だけならかなりの物だろう」

「……それは、つまり?」

「ルーク君が指導役となって、彼……ヴリトラール君を鍛えて欲しいのじゃよ。あの子は良い子に育ってくれると信じておるが、如何せん過度に自信が過ぎる。調子に乗りやすい。だからこそ、本物の実力者と対面せてやりたいと思っての。勿論、他にも色々と理由はあるがの……」

「……1つお尋ねしますが、ヴリトラール君の家名って、バーゼルシュタインではありませんか?」

「ほぅ、知っておったか。あの子が息子なんじゃよ」

「あぁ、成程……ありがとうございました」


 どうやら俺の予想通りだったようだ。


「それでは、宜しく頼むぞ」

「はい、こちらこそ」


 こうして、俺のパートナーが決まったのだった。

 それから数日が経ち、ティルマン君とベロニカ嬢の二人は無事に課題をクリアした。

 ベロニカ嬢は精霊の祝福を得て、ティルマン君に関しては、霊薬以外の生産系技能の習得に成功していた。


 そして、この日がヴリトラール君との初顔合わせの日でもあった。

 理由は単に彼の時間が合わなかったり、此方の都合が悪かったりという物で、今日に至るまで顔を会わせる機会が無かったのである。

 まぁ、学園内を歩けばすれ違う事もあるが、顔が分からない相手に話しかけられるのも、恐怖というのもある。


 ただ、アル爺様から「ヴリトラール君からルーク君に対して、とても大事な話しがある」とだけ言われていた。


 そして、俺は通常授業の終わった放課後、霊薬学の前に初めてヴリトラール君と会った訳なのだが、彼は一言で言うなら"貴族らしくない貴族の子息"であった。

 まず、容姿からして美少年と言って差し支えは無いのだが、その瞳には強い意思を感じる。

 しかし、その服装はかなり奇抜な物で、錬金術の素材を入れるカプセルを手首に巻き、汚れても目立たない服装をする生徒が多い中、堂々と白衣を着ている点でかなりの変わり者だろう。

 だが、その胸元にはしっかりと生徒の紋章が付けられている為、ここの学生であるのは間違い無い。


「やぁ、初めまして。私がヴリトラールだ」

「どうも、ルークだ。それで、俺に用があるみたいだけど、何なのかな?」

「うむ、そうだな……単刀直入に言おう。僕と勝負しろ!」

「は?」


 いきなりの宣戦布告に思わず間の抜けた声が出てしまった。

 それにしても、まさか初対面の人物に決闘を申し込まれるとは思っていなかった。


「えっと……何故、俺に?」

「決まっている! 僕はお前が気に入らないからだ!! 錬金術師として優秀だとか、英雄だとか言われてるけど、チョット人よりも優れただけの 男だろ? そんな奴に負けるとは微塵も思ってないが、まぐれで勝ったなんて思われるのは心外だからな!!」


 成程、成程。

 要するに、自分の力を証明したいと。

 確かに、アル爺様の見立て通りに限りなく才能には恵まれてはいる。

 けれど、それを磨く努力をしていない。

 自身の不得手を磨くばかりで、ただの宝の持ち腐れ。

 さぞかしバーゼルシュタイン卿は、優秀な死霊術師としての教育をしたがった事だろう。


「ふむ、話は分かったが、勝負の内容は何だい? まさか剣やら魔術ってワケにも行かないだろう?」

「ふん、簡単だよ。僕は霊薬学の授業が終わったら、錬金術に必要な素材を集めるつもりだ。お前には、その品で作れるこの薬を作って貰う。数と質で勝負だ!!因みに、もし僕の勝利ならば、一つ願いを聞いて欲しい」

「ほう、内容にもよるね」

「勿論だ。君が勝てば、僕のできる範囲で君の要望に応えよう。だが、君が負けた場合は、僕の配下になって貰う!!」

「へぇ、随分と自信満々だねぇ。それは俺が勝つと確信できる根拠でもあるのかい?」

「当然だ。君がどれだけの事をしてきたのかは知らないが、所詮は田舎貴族の英雄だ。対して、僕はバーゼルシュタイン家の子息であり、死霊術師としても名高い家系だ。その僕が緻密な魔力操作で調合した薬が劣るハズが無い!! 期限は一週間後だ」

「成程、成程。それじゃあ、君の言う君の実力とやらを確かめさせて貰おうかな。俺が勝てたら、君には俺の言うことに従って貰うよ?」

「あぁ、良いだろう。ただし、こちらが勝った暁には、絶対に約束を守ってもらうからな!! ……まぁ、どうしてもと言うなら、霊薬学のパートナーはしてやるけど」


 何故か勝負する事に成ったが、まぁ、良いだろう。

 どの道、俺の薬の方が品質が良いのは分かりきっている。

 それでは、早速、勝負と行こうじゃないか。

 何故か、彼に対しての被虐心が沸々と湧いてくるが、恐らくこれは物珍しいからだろう。

 それと父様に対しての侮辱発言も到底許せる物ではない。


 それから、霊薬学の授業が終わりヴリトラール君は宣言通りに、素材集めに出掛けて行った。

 その手際はどんな物か知らないが、俺は彼から受け取った薬品名を見て、思わず笑みを浮かべた。


「……面白い」


 彼が俺に与えた用紙に記された薬品名は『解毒薬』。

 しかも、俺が知る物の中でも上位に位置する珍しい品だ。

 ……問題は、彼が素材をどう用意するのかという所だが、本当に自身で採取出来るのだろうか?

 用紙の最後に記された素材を見ながら、手持ちの素材を確認していくが、十二分に量はある。

 素材を確認し終え教室に戻ると、教室が少し騒がしかった。

 そこには、何故かヴリトラール君の姿があり、俺が教室に入ると彼が口を開いた。


「それでは、一週間後にバーゼルシュタイン家にて、薬の出来を比較するからな!!精々、無駄な足掻きをすると良い。この天才の僕が君より劣っているはずがないんだからな!! ふははっはは!!!!」


 そう言い残し、彼は笑いながら去って行く。

 彼の後ろ姿を見送った俺は、ゆっくりと自身の席の背もたれに体重を掛けた。

 何故なら、彼は気付いていないのだ。

 自分が用意するべき素材が何処で採れる物なのかを……。

 その事に思い至り、彼の無知さを嘲るように鼻で笑うのだった。



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