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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-9 家族
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シャガールからの宿題

 シャガール様の空間を破り、空間の外に漸く出れた。

 正直、かなりしんどかったけど、何とかなったと喜ぶ事は……出来そうに無い。


「これはヤバイよな? ティアさんに何て言おうかねぇ」


 俺の手には、粉々に砕けた指輪の残骸があった。メギウス鉱石と呼ばれる物でティアさんが作った指輪だ。

 元は『神力を抑える為に』と渡されたのだが、今回の一件で引き出してしまった神力の負荷に耐えれなかった様で、ほぼ原型が無かった。


「ルーク……汝の力、しかと視させてもらった。自力で神力を扱う事が出来ねば、出られぬ様に創ったのだが、思ったよりは扱えるようだな」

「死ぬかと思いましたけどね?」

「まぁ、もう少し遅ければ、解除していた所だったが及第点は与えてやろう」


 しかし、あの空間の中で聞こえた声は何だったのだろうか?

『ヴェインの血を引くもの』と言っていたが、俺が知るヴェインは、聖女の日記に書いてあった名しか知らない。……確か父様の出身は神龍皇国だった筈だ何か関係があるのだろうか?


「あの空間の中で、声を聞いたのだろう? 汝が考える事はよく分かる。その辺の話もするが、あくまで神力が使える事が前提だったのでな赦せ」


 そう言うと、シャガール様は空間に亀裂を入れながら腕を亀裂の中に入れていた。

 俺の異空間収納と同じものらしいが、魔力量の差なのか、とても同じ物には見えなかった。


「さて、ルークよ魔力と神力がどの様なモノか理解はしているか?」

「魔力は、魔素を含めた自然界に存在する自然エネルギー(エーテル)の事。神力は、文字通り神の力であり、想いの力でもある……ですか」

「魔力は概ねその通りだが、詳しく言えば、使い終わった神力でもある。神力とは、この世界の構成要素の1つだ。信仰の想いを受けた神が、存在する為に必要なエネルギーでもあり、力を行使する為のモノでもある……例外として、時折だが神力を宿した者も産まれるがな」

「つまり、それが聖女リデル様?」

「そうだ。とは言え過去にも持ち得る量に差はあれど居た。彼女と汝の持つ神力には程遠いが」


 どうやら、神力を持って産まれるのは珍しいが無いわけではないらしい。


「話が少し逸れたが、汝にはこの魔素を正常化する為の魔剣製造と安定化を頼みに来たのだ……恐らくチャンスはこれが最後となる。聖女の魂と汝の神力がある今だけのな」

「……」


 俺はこの世界で、穏やかにスローライフを送りたいだけだったのに、トラブル体質はやはりここでも付いてくる様だ。


「アーカムさん、この集落の試練がシャガール様の問題解決で良いのですか?」

「それは問題ない。 本来ならば、決闘をして貰う予定だったが、シャガール様の方を解決さえしてしまえば、この集落の魔力疾患も増えること無く、霊域の集落の魔力量も安定するのだ。ならば、それに従うのは当然の判断であろう?」


 確かに、魔素が多いのはよく分かる。

 この地は魔力の回復速度が、明らかに速すぎる。既に空だった魔力が、出て来て間もないのに既に3割程回復していた。


「話は良いか? ならば、説明をするぞ」

「御願いします」

「汝には【魔導核】を使用した【魔剣】の作成を行って貰う。素材は既に汝の手にある故、問題は作成時に神力を使う事だが、汝の場合、言葉に乗せねば発動出来ぬのであろう?」


 確かにその通りで、言霊を使う感覚で偶然脱出出来ただけだ。


「神力は本来ならば、魔術の無詠唱と同じ様に扱うのだが、汝の場合は基礎がおかしい故、正しい神力の扱い方を覚える事が必要だろう。汝にはコレを与える」


 シャガール様が取り出したのは、底が紫色である以外は無色透明な握り拳程度の玉だった。


「これは?」

「神力を纏い触れると、この様に我の神力と反応して光を放つ。汝にはコレを使い、最低半日は維持して貰う」


 渡された玉は魔力には反応しない様で、僅かに呟くと弱々しい薄紫の光が、ほんのりだが浮かび上がる。

 中々に難しい宿題を貰った様だ。


「汝が思うたヴェインだが、神龍皇国に存在する汝の祖母に当たる者の家系にヴェインの血族が居る。彼女の魂と汝の神力量、彼女の愛した者の末裔、これ以上の好条件は、恐らく今回しか巡り合わせる事は無いだろう」

「そちらの都合に好条件とは言え、ルークが負担を強いられるならば、私が赦さんぞ?」

「渚も……ワタシも、いくら神の使いと云われる六龍だとしても、ご主人様が傷つけられるのでしたら、貴方達から護ります……例えドンナコトニナルトシテモ」


 カミナと渚の魔力が膨れ上がるのを感じているが、それ以外の力を感じる。


「異世界の龍とマーナガルムが相手なれば、我も無傷とはいくまいな……魔剣は汝の双剣を素材とし、一振りの魔剣とするが故、形に関しては汝の扱いやすい物にするが良い。我もこれ以上は顕現が難しい故、一度戻らせてもらおう。次に会うときは魔剣が出来た時だ!」


 シャガール様はそう言い残し、光の粒子に包まれる様に消えていく。


「喰えぬ輩は好かんな、渚、塩を撒いておけ!!」

「ルーク様、本気で嫌でしたら、渚は本気で護りますからね!!」


 二人とも、本気でシャガール様を威嚇してるみたいだが、それだけ今回の件にかなり腹を立てている様だ。


「二人とも大丈夫だから、落ち着いて、ね?」

「お兄ちゃんは甘過ぎる!! 私とメアちゃんだって心配したのに!!」


 沙耶も不満が有るようで、かなりご立腹の様だが、次の言葉に俺は凍りついた。


「ルーク、メッ。 皆に、今日の無茶したこと伝えたから……多分皆も怒るよ」

「そうだな、それに学校が始まる時期だ。余り無茶も出来無いだろう。学業を疎かにするのはいけないからな?」


 そういえば、すっかり抜けていたが、学院生活が始まることを、忘れていた。


「メアは此方に戻るのだろう? 彼が暫く学業に専念するのであれば、そうなるよな?」

「私は……ルークと居たい。でも、パパとママとも居たいから、日中は闇護りの仕事をして、夜は向こうに戻ります」

「メア、ルーク君に余り頼りすぎちゃ駄目よ? 」

「ママ、私、がんばる」


 メアの為にも、未来の領民の為にも、フラクタルの魔素を安定させる魔剣を造る。

 俺は、そう覚悟を決めるのだった。

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