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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-8 無名の地
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太刀の銘

「お疲れ様でしたルーク様」

「ただいま、渚」


 ティアさんの試練を終えて、ティアさん邸宅に戻ると、渚が料理をしている最中だった。


「ただいま戻りました。 ルーク君お帰りなさい」

「ティアさん、ただいま戻りました。試練の事なんですけど」

「あぁ、それなら大丈夫ですよ。ファナンの報告で確認をしましたので、此方も武器のみが魔物を斬っていたと言う情報のみで、監視を怠った結果、ルーク君に余計な怪我を負わせてしまいましたね」

「まぁ、怪我なら回復魔術を使えば跡形も無くなりますから。寧ろ、本気で自分の死を覚悟したのはこれが最初だと思いますけどね」


 結果として、カミナとも違った型の刀術を覚える事が出来るので、ややプラスかなとは思うけど。


「それについては、ファナンにお仕置きしてますから。他に何かあれば、監視を怠ったあの子にさせますよ? 若しくは私が出来る範囲なら何でもしますね」

「あぁ、でしたらこの太刀貰っても良いですよね?」


 悪魔の武器(イーヴィルウェポン)と呼ばれていた品をティアさんに見せると、目を丸くして鞘から抜き全体を見ていた。


「やはり変質してますね。ここは、朧を呼ぶとしよう」

「朧さんですか?」

「この型の武器は、アマツクニ周辺か、朧の管理する集落『鬼神の(さと)』で良く見ますから少し行ってきます」


 ティアさんは腕輪に魔力を通わせると、姿を消し、再び目の前に現れた時にはその隣に朧さんがいるではないか。


「おう! ルークじゃねぇか、久方ぶりだな!!」

「お久しぶりです。朧さん」


 相変わらずの声量だが、鍛えられた筋肉は以前見た時よりも、大きくなっている様に見えた。

 その太腕が、太刀と手に取り、


「こいつがティアの言ってた太刀だな? 鞘を含め、すべて蝋色塗りの品か……銘も違いねぇ。こいつ、どこで見つけた?」


 朧さんにティアさんの試練内容を伝え、入手経緯とその時の太刀筋や奥義の事を伝える。その間、朧さんは難し顔で聞いていた。


「端的に言うと、こいつは俺の集落の作品だ。それも唯一外に出た一品、銘を『黒獅子』と言う。遠い昔の品だ」

「黒獅子……ですか?」

「元々は鬼神様、御先祖様を奉る太刀で造られた物なんだが、厄年には必ず2振りの太刀を造るんだよ。白鞘の小太刀と黒漆塗りの直刀か大太刀の2振りをな、そいつは本来なら打たれる事の無かった三本目の大太刀だ。ちょっと長いが、昔話をしよう」


 出自が分かればと思っていたが、存外近くにこの太刀の造られた場所があった。とは言え訳有りのようだが……。


「俺の産まれるより昔の集落の山には、獅子鬼と呼ばれる魔物が居た。その特質は鬼族や鬼神族の特質と近いもので、奴等の角が黒ければ黒い程力の強い証とされていたそうだ」


 朧さんは目を閉ざし、語り始める。


「山の中で襲われるだけならば、まだ、仕方無いと諦めもつく、しかし奴等は次第に郷に降りて悪さを始めたらしく、子供や女の被害が絶えなかったそうだ。だが、獅子鬼の身体に刀や太刀が通らず、獅子鬼に対しての術が当時はなかった。そんな時だ、一人の刀術の達人でもあり刀匠でもあった男が一振りの太刀を打った。「こいつで獅子鬼を退治してくる」と男は太刀を持ち退治に行く。男は二週間後に、瀕死の姿で郷に戻って来たが、その手には折れた太刀と、角が漆黒の様に黒色の獅子鬼を持って帰ったそうだ」


「ふぅ」と息を吐き、朧さんは話を続けた。


「獅子鬼を持って帰った男は、治療も満足にせず、刀を打ち続けた。どうやったのかは分からないが、獅子鬼の血と骨、角を砕きながら折れた太刀に馴染ませていく様に。男が出てきたのは、奉納の祭りの日、夕方だった。「こいつを鬼神様に奉納してくる」そう語った男には以前の姿は無く、骨と皮のみの姿で郷を出た男は、祠の前で亡くなっていたそうだ。祠には鬼神様に奉納された太刀2振りと、男の打ったこの太刀が供えてあったそうだ」

「おかしくないですか? それだと、この太刀がここにある理由が分かりませんよ朧さん」


 納められた太刀がそのままなら、この場にあるはずが無い。


「まだ話は終わってねぇ、その後が問題なんだよ。その祠が先々代の月護りの奉納の日に荒らされたんだ。奉納の日は昼間に式を行い太刀を祠に納め、夕方に奉納の舞いを巫女が舞うんだが、納める際に劣化した太刀を全て取り出す時に無かったんだよ……その一振りだけな。誰が持って行ったかは知らないが、奉納書に書いてあった特徴から黒獅子が行方知れずの太刀となり、その探索に今も鬼神族(俺達)は力を入れて居たんだ」


 朧さんは、目を再び閉ざして沈黙した。

 まさか太刀が魔物化しているとは思っても居ない結末なのだから、当然だろう。


「思念を持った太刀が、魔物狩りをして身体まで持つに至るとは誰も考えて無かったがな……これでハッキリしたからもう良いさ。ルーク、お前さんのお陰で太刀も見つかったが、そいつはお前さんの元に置いてやってくれ」


 全ての話を終えた朧さんは、黒獅子を俺の前に置く。


「あら、良いのですか? 朧の事だから掟云々言うかと思いましたが?」

「門外不出の太刀とは言え、妖刀になっちまった物を奉納しちまったら、俺が御先祖様に怒られらぁ」


 朧さんは帰るのか、ティアさんと同じ様な腕輪に魔力を込めていた。帰る前に聴いておかねばならない事があったのでそのまま尋ねる事にした。


「所で朧さん、その刀匠の名前は何て言うんですか?」

「刀匠の名前か? 確か富嶽(ふがく)だった筈だ」

「だってさ、良かったな()()


 魔力が尽きた為、返答は無かったが本来の名を知ることが出来たのは運が良かった。


「さぁ、少し遅くなりましたけど、昼食を用意致しましたので、お召し上がりくださいね! それとルーク様は傷口をもう一度手当て致しますから、必ずお部屋にいてください」

「了解、取り敢えず先ずは食事だな」


 俺は、渚が作った昼食を食べて、部屋に戻り富嶽の身体を造る為の素材を確認しながら、渚が部屋に来るのを待つのだった。

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