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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-8 無名の地
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魔霊の森 悪魔の武器

 魔霊の森に入り、周辺を『索敵』を使いながら歩いて行く。


「そろそろポイントだ、黒曜」

「今の所、敵性反応は無いようですが、明らかに何かありましたね」


 道なき道の窪みには、無数の血溜まりと斬られた魔物の死骸が乱雑に落ちていた。

 本来なら放置しても良いのだろうが、明らかに異常な魔素が溜まり始めていたので、黒曜に片っ端から吸収させて魔素溜まりを消滅しながら歩を進めて行く。


「しかしマスター、傷口の具合からしてまだ近くに居るとは思えませんね」

「魔物の傷口が新しく無かったからな。それと血溜まりも殆ど乾いていたしな」

「えぇ、吸収した際に記憶を見ましたが、どれも一瞬で首が落ちた瞬間ばかりでした。その代わりですが、どうにもただのイーヴィルウェポンでは無さそうです」

「どういう事だ?」

「体を持っています。思念体なのか、そこら辺の不死者を乗っ取り動いたのか迄は分かりませんが」


 前者であれば、既に上位化か進化している可能性が高く、後者でも放置すれば不死者ごと進化する可能性があるので、厄介極まり無い。

 ポイントの範囲外に出る前に、討伐か捕獲しなければならない状況に急いで移動しようとしたその時、


「━━貴様は俺を満足させる事が出来るか?」


 不意に聞こえた声に対して、咄嗟に振り向くがその場所には何もなく、黒曜も何事かと驚いた表情で俺の方を向いていた。

 何もなく、警戒し過ぎたのかと思ったその矢先、目の前の黒曜が倒れ頭が転がる。


「黒曜!!」

「(マスター、こやつ警戒を抜けて来ました。恐らく『隠行』系統のスキルを持っています)」

「(大丈夫なのか?)」

「(はい、マスター。単に頭部パーツが取れただけですので安心して下さい)」


 念話をしながら警戒を続けるが、相手の姿は見えない。しかし、寒気が止まらない所を見るとまだ近くに居る。


「………」


 鏡花水月を居合いの型で構え、出方を待つ。

 すると、少し離れた場所に歪みが発生する。

 そこから現れたのは、一振りの太刀だった。


「貴様の型は居合いか? フハハッ!! 容赦なく行かせて貰おう!!」

「イーヴィルウェポンなのに知性もあるし会話が出来るとか、おかしくないか?」

「知らん、貴様は俺を満足させれば良いのだ。もし満足出来たなら、この太刀は貴様が手にすれば良い……久方ぶりの斬り結べる相手に感謝名乗りをしたい所だが自分の名を忘れた故、いざ参る」


 太刀は次第に人の影を纏い、鋭い眼光が俺を捉えていたのだが、良く見るとベリトが呼び出した霊騎士の人と同じ顔をしていた。


「━━フッ、ハアッ!!」


 斬り結ぶと良く分かる。これは殺しに特化した実戦の太刀筋だ。居合いの型では迎撃出来ても、反撃まで行きにくい。

 咄嗟にバッティングフォームの様に構える木の構えに移した所で、相手の動きが変わる。


「今度は八相の構えか? ならばこれでどうだ?」


 向こうの太刀も中段の構え(水の構え)となり、打ち方がより激しくなる。

 こちらも袈裟懸けや逆胴等の切り方に加えて、巻き上げも狙うが、剣技では互角か向こう側の方が少し上の様だ。


「あぁ、楽しい、楽しいぞ! そろそろ本気で行かせて貰うとしようか!!」

「まだ本気じゃないのかよ!?」


 何とか捌いていたが、まだ本気では無かったようだ。カミナでさえ、訓練時には寸止めする攻撃が平然と放たれる。


「逃げてばかりでは勝てぬぞ? それとも俺の糧になるか?」

「忠告どうも、こっちも死ぬ気は更々無いんでねっ!!」


 躱すが髪や頬が少し切れたようで、うっすらと血が流れる。

 後ろに下がれば残った箇所を斬られるが、横に抜けてもそれは同じだった。そんな中で打ち合いながら、前世で剣術の師に教え込まれた言葉を思い出す。


『切り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ 踏み込みゆけば あとは極楽』


 真剣同士の打ち合いなれば、1つの隙が命取り、されど、あえて踏み込めば、相手の太刀筋を殺せる間合いに身を置く事が出来れば、後は相手の命を絶つのみ、足りなければ此方が斬られるのみ。

 そんな風に俺は解釈していたが、前世で刀を使った戦いなんてしたこともないし、格上の相手とこんな風に戦うことも無かった。


「ほう、小僧。目付きが変わったな?」

「少しだけ目が醒めたよ。何時までも護られてばかりじゃ無いからな」

「なんの事かは分からんが、次の一撃は防げると思うなよ」


 イーヴィルウェポンは影の体ごと、仕切り直す様に後ろに下がった。俺は刀の構えを解き、腕を下に下げる。


「死ぬ気か? まぁ良い俺の糧になれ!!」

「死ぬ気は無いので、勘弁!!」


 袈裟斬りをギリギリで躱し、追撃の切り返しの刃を刀で受け流す。


「やっぱりね」


 太刀(イーヴィルウェポン)が本体であると勝手に思い込んでいたが、全体を『鑑定』『解析』を行う事で、漸く本体の位置がわかった。

 太刀と影に繋がれた魔力回路を見つけると、回路は太刀の出てきた歪みに通じていたのだ。


「俺の弱点に気付いたか? オメデトウ」

「でも弱点じゃ無いんでしょ?」

「まぁな、わざと外から補給する様な形でしているだけだからな。何で気付いた、魔眼か?」

「鑑定と解析!」

「成る程ならば、回路を見つけた所で回収させて貰おう!! その代わり、これが最後の打ち合いになるだろう」


 魔力回路が、話している内に、影の中に取り込まれて行く。

 その間に斬りつけようかと思っていたが、刀を握る腕が動かせない程の、殺気が辺りを包み込んだ。


「さて、俺の本気の姿を見たのはお前で二人目だ」

「そいつは光栄だね、因みに一人目は?」

「黒騎士だ。恐らくこの身体の止めを刺したヤツだがな」

「名前の記憶は無いのに、止めを刺した人は覚えてるんだ?」

「随分と昔の話だからな、恐らく黒騎士も生きてはいないだろうがな」

「それで強い者を戦いで屠る事が生き甲斐になったのか?」


 殺気が消え、太刀を構えていた影の身体が、肉体を得ていた。

 その風貌は、騎士というよりは、武士に近い物がある。


「話は終いだ。最後の一太刀、俺の残り魔力からしてもそうまで動けねぇから、お前の魔力……首を跳ねて奪わせて貰おう」

「最後の一太刀ね、俺がアンタを討たせてもらうよ」

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