ルーク・フォン・アマルガム
「アリア・フォン・クラークベル女男爵」
「ハッ!!」
高らかに響くアナハイムさんの声が、陞爵される貴族の名を読み上げていく。
「続いてルーク・フォン・ラーゼリア男爵」
「ハッ!!」
荘厳な空間となった王城の広場で合同の陞爵式が執り行われていた。
「その胸に輝く4つの国宝勲章を見れば、他の者も分かると思うが改めて宣言する」
レシアス陛下の声が響く中、更に発せられた声で、一瞬にして空気が凍りついた。
「白龍勲章は皆も知っての通り、この私、現ウルムンド国王であるジークリッド・ウルムンド・レシアスの名で与えた。この事は記憶に新しい者も多いだろう!!」
「黒龍勲章はドーラン帝国現皇帝である、レイ・ロードス・ドーランが与えた!!」
「ホッホッ、碧龍勲章は獣公国ダムシアン大公ソドム・ヴァン・ダムシアンの名で与えたのぅ」
「余が龍神皇国レスティオの危機を救い、龍脈の流れを整えてた功績の証、紅龍勲章はこの余。龍帝ゼルガノン・セム・レスティオよ!!」
跪きながら、言葉が終わるのを待つ。
「我が友好国の危機を救い、更なる国宝勲章を手にした者をそのまま爵位を上げるのみで善いのだろうか? 誰かこの問いに善き答えを持つ者は居らぬか?」
静まり返る広場から返る声は無く、そのまま次の言葉が紡がれるかと思ったその時、その静寂を破る声が挙がった。
「陛下宜しいでしょうか!!」
その声は、最近聞き覚えのある声であった。
丁度、父様の座る席の隣にその声の主は居た。
「よかろう、申してみよ。商都の姫セレーナ・フォン・グラファス伯爵……そして、不満そうに見ておるベリアル・グラーフ・バルバドスよ、お主も何かあるのか?」
「ではこのバルバドスより、陛下に1つご報告を致します。私が陛下より預からせて頂きます領地が都市の1つノヴォルスクの報告書に記載しました内容に【影狼】という冒険者チームがあります。そのリーダーがルーク男爵であり、Cランクの冒険者それも年齢の条件さえ無ければ、Bランクの試験を受けれるそうで御座います」
「なるほどのぅ、まぁ儂と手合わせをしても、儂の方が手を抜く事が出来んからのぅ」
「そこで、特例として冒険者ギルドの昇級試験を受けさせるのはどうかと」
バルバドス伯爵とソドム大公の言葉に、ざわめきが起こり始めた。
「鎮まれ! 次いでグラファス伯爵は何を申す?」
「はい、私の領地でも彼のパーティーメンバーに助けられております。また、お恥ずかしい話ではありますが、1つ領内でトラブルがありまして、その解決に影狼のメンバー。その後のラーゼリア伯爵のご助力を得られたのも、ルーク男爵のお陰でした」
「その話は聞いている。どうやら麻薬の密売人を含むそこそこの大きい組織を吊し上げたらしいな、元はメリーズ領に精巧な偽装身分証を使って潜んでいたらしいな」
「はい、今回の組織は下部組織ですが、既に偽装身分証の組織には到達し捕縛までは終えています。問題はそこから先の組織が何処まで追えるかですが……」
「引き続き捜索せよ。してルーク男爵の爵位以外の褒美をなんとする?」
「冒険者ギルドの昇級試験も良いとは思いますが、彼の功績はこの年齢にもかかわらず、ここまでの物を出していますので、いっそのこと四国の『無名の地』合同開拓者としては如何な物かと。勿論、私セレーナ・フォン・グラファス伯爵の支援が必要な際は、惜しみ無く協力致しますわ」
その言葉を聞いた周囲の貴族達と、壇上に座る陛下達の表情は、正に驚愕の一言に尽きる。
「四国の無名の地合同開拓とは、どうしてそうなるのか聞いても良いか?」
「既に四国の国宝勲章を胸に輝かせている時点で、彼が成人していれば大公爵を貰っていても、おかしくは無いですわ。それが男爵からの始めと異例の三国の姫を婚約者としています。つまり陞爵はある程度決まっていると考えました。そして、彼の知識と魔術の能力は既に規格外な物ですから、恐らくそう言った話になる可能性もあると踏んだだけで御座います」
堂々とセレーナ伯爵は言い放つと、陛下達の表情は笑いを堪えきれなくなっている様だった。
「これは何とも言えないのぅ。レイ、ジークリッド、ゼルガノン殿?」
「まったくだ」
「はぁ~」
「だな」
セレーナ伯爵の発言は、夢物語のように貴族達には聞こえたのだろう。
そして、陛下達の言葉と表情を見てそう判断しているようにも見えた。
「まさか同じ考えを持つ者が他にも居るとは思わなんだわ」
「されど、バルバドス伯の発言も中々良いものだ」
「では合わせるか?」
「「「うむ」」」
「と云う訳だ。皆の者も善いか?ルーク男爵を四国の無名の地開拓者として任命すると同時に爵位は子爵を与える。その後、開拓の成果で四国会議を行い、良しとすれば辺境伯とする。冒険者ギルドの昇級試験を受ける事を褒美とし、16歳の学院卒業までを開拓期間。そして、グラファス家とバルバドス家を後見人として、一定の成果無い場合は、娘達との婚約の破棄と辺境伯の爵位を領地無しの名誉男爵とする。これでどうだろうか?」
陛下の言葉を聞いた周囲の貴族達は、最初言葉を失っていたが、恐らく最後の成果云々の所で、無理だと思ったのだろう。
明らかに此方に対して嫌な笑みを浮かべている貴族が、率先して拍手をしていた。
「其では、新たに領地を持った子爵家や男爵家となった者も、領民の為にその命をもって執務に当れ!! そして、ルークは、事前に聞いた新たな名『ルーク・フォン・アマルガム』を名乗るが良い」
こうして、合同の陞爵式は終わりを迎えた。
この後ライガス王太子殿下の公表式が開かれたのだが、俺は急ぎ屋敷に戻り無名の地探索の準備と入学式の準備を行うのだった。
そして、この日。ルーク・フォン・ラーゼリア男爵改めてルーク・フォン・アマルガム子爵の名となった。




