王太子殿下誕生と陞爵の手紙
「この度、王太子誕生の報告を公表する事になった。それに合わせて、ルーク・フォン・ラーゼリアの陞爵、同時に『無名の地』の四国合同開拓者の肩書きを与える事になる。詳しい話を行うので、明後日の昼頃に登城せよ」
短い文ではあるが、間違いなく国王からの招集だ。
読み終えた手紙を異空間に入れた所で、父様から話しかけてきた。
「ルーク、王太子殿下のご誕生だからな、何か贈り物をせねばならんのだが、何かあるか?」
「そうですね、錬成で見守り兼防犯用のゴーレムでも造りましょうか? 若しくはフォロンさんの仕事にしてもらうかですね」
「それではラーゼリア領での初仕事を彼に任せるとしよう」
「では俺はゴーレムを造りますかね」
俺は父様にそう告げると再度転移を行い、必要な素材をかき集めながら、贈り物のゴーレムを考えていたのだが、最終的にたどり着いた思案は『創造神の加護』を使用するアーティファクトになっていた。
子供に対しての見守りとして、〝血圧〟〝体温〟〝空腹〟〝排泄〟〝状態〟この5つを常に見守る事と、毒物や危害からの防衛をメインとして持ち運べる物を考えた結果、最初に考え出された物は、魔法生物かゴーレムの2つだったが問題があった。
「本当なら魔法生物の方が、ゴーレムより融通効くんだよなぁ……まぁ試してみるか」
しかし魔法生物は、培養液や環境を整えなければならず、それだけでも1~2週間必要になるので今からでは無理がある。
ゴーレムも、簡単な命令であれば行動原理に従って動くが、応用力が無いため咄嗟の判断が出来る物はアーティファクト位しか無いとされている。
そこで考えたのは、ゴーレムに2つの特性を持たせた作成法だった。
魔力認証とゴーレムの演算等を行う基盤回路コアを2つに分けて繋いだ物をそれぞれ用意して実験を開始する。
生体部品は魔物の皮や骨を使用した物で行い、筋繊維はミスリルの魔力糸と補強材にアダマンタイトの粉を錬成したものを使った。
魔力認証は一人のみの記載を魔力回路へ複雑化して仕込み防犯対策を施す。
造り上げるのは、狼の型をした機械人形。
ただし、『創造神の加護』を意図的に使った物である為、制御コアを2つ用意して認証や駆動の回路を分けている普通のゴーレムより少しだけ複雑な命令も出来る型に見せかけてある物だ。
翌日の夜、同じ物をもう1つ造り上げて、俺達は王都の館に戻ってきた。
そして、ジークリッド陛下に呼ばれた時間の少し前に門の前にアナハイムさんが立っていた。
「御待ちしておりました。ルーク様、こちらにどうぞ」
そう言ってアナハイムさんの後ろに着いて行くと、案内されたのは会議室の様な場所で、黒髪の男性が既に座っていた。
「よく来たね、まぁ座りなさい。ここに居るのは、王ではなくただのおじさんだと思って良い」
「分かりました。所でジークリッド様、その髪の毛の色ですが」
「そういえば初めてか、私の元の色は黒髪なんだよ。普段は目立つから魔法薬で染めているんだけどね、まぁ良い」
振り向いた顔はニコニコとしながら、ジークリッド様は話し始めた。
「先ずは陞爵についての話だ。開拓が成功した際には、公爵としての陞爵を発表するが、当然これはフェイクである。ここまでは良いい?」
「はい、でも管理者は国に属さないのでは?合同開拓者になったとしても貴族号はウルムンド王国にありますよ」
「そうだ、良く憶えている。前に説明した通り、最終的には国として発展させてルーク君の国となる物だ。この国での合同開拓者選出は制度上、子爵家か最低2名以上の子爵家が任命した者でないと任命出来ない為、早い内に陞爵する予定であったが、今回王太子誕生の祝い事を重ねる方が縁起も都合も良いのでな、すまんがルーク以外にも爵位が上がる者も居るので陞爵がオマケの様な扱いになる」
王太子殿下のご誕生は国を挙げての祝祭になる。その為、功績の著しい貴族の陞爵を纏めて簡素に行う事になるそうだが、大半が低い貴族号の者だけらしい。
「話はわかりました。それでは……この度は王太子殿下のご誕生おめでとうございます。こちらは祝いの品物で御座います」
佇まいを直し、昨夜完成した方を取り出した。
「おおっ!! これは……狼の剥製か?」
思ったより、ジークリッド様の反応は薄いが、問題ない。
「いえ、王太子殿下の警護も出来る狼型の機械人形です。魔力認証で殿下専用の物となり、常時殿下のバイタルを測定し、毒物等の害が在るものを見つけては排除するものです」
「……そうか、アーティファクトの類いか。魔剣の修復をした程だから今更驚きはせんが、ありがたく使わせて貰おう」
説明をした後のジークリッド様の顔が、若干引き気味であったが何か不味い事をしたかな?
「息子の公表と陞爵は今月末に行う、陞爵の儀は午前中となっているからね、その前に息子に会ってみるかい? エルザも最近入り浸りしてるから」
「王族でもないのに良いのですか?」
「本来なら駄目だろうけど、君はエルザの婚約者だからね構わないよ」
そう言って、ジークリッド様は会議室から出て行く。
俺もそれに伴い、歩くと中庭を抜けて王城から
離れた場所にたどり着いた。
そこには、落ち着いた雰囲気の屋敷と二人の女性がお茶会をしている姿があった。
一人はプレア様、もう一人は初めて見る女性だ。
「あら、ルーク君いらっしゃい」
「お久しぶりです。プレア様」
「もう、お義母さんと呼んでも良いのに」
微笑みながらも、その腕の中には白い肌にジークリッド様と同じ黒髪とプレア様と同じ金の瞳をした赤ちゃんが、抱かれていた。
その隣の女性の腕の中にも、彼女と同じ褐色の肌に薄紫の髪とジークリッド様と同じ薄い蒼の瞳を持つ赤ちゃんが居た。
「彼女は側室の一人で、ファーラだ。ルーク君は初めて見るかな?」
「初めまして、ファーラです。プレア様とは冒険者時代に助けて戴いて、その縁でジーク様の側室となりました」
ファーラ様は物腰の柔らかい女性の様だった。




