フォロンの覚悟とアルマの決意
「やっぱりアンタは馬鹿ね、フォロン?」
フォロンさんに向けた言葉は、セレーナ様から放たれた一言で、周りに居た人達の代弁でもあったのだろう。
フォロンさんの今後についての話し合いが始まったと同時に、彼は見渡して告げた一言が
「僕は、ラヴィニアとアルマの三人で、この商都から去ります」
その言葉は、ラファールに乗って助けに行くと言っていた時と同じ顔をしており、誰の目を見ても硬い意思であることは、一目瞭然だった。
「アンタ、その意味分かって言ってんの?」
「はい、セレーナ伯爵様。でも、このまま商都に居てもラヴィニアに自由は無いですから。今回の事は、ラヴィニアを仮とは言え店員にして匿っていた僕にも責任がありますから」
「……アルマはそこの馬鹿が言ってる事に、納得してるの?」
「……余り納得は出来ていませんわ。本当なら私一人で行きたいところですけど、でもラヴィニアと話し合って、決めましたの二人で彼を支える事を、だから彼が商都から出るのであれば、それに寄り添い共に行くだけです」
「ラヴィニアも同じような顔をしちゃってるし、それよりもアンタ達何処に行くのか決まっているの?」
「……それは……その…」
セレーナ様は呆れたように、三人に向かって言葉をかけるが三人とも具体的な所までは、考えていないのか言葉が詰まる。
そこで俺は打ち合わせた通り声をかけた。
「ではラーゼリア領に来てはいかがですか?」
「「「えっ?」」」
「今のラーゼリア領には、細工師が少ない上に高齢の方しかいないので、仕事があっても人がいない状態でして、父様も腕の良い若い職人がいないか捜している所なんですよ」
実際ラーゼリアの細工師は高齢化しており、若いと言っても50歳代の職人が数名いる程度だった。
「いや、しかし!!」
「因みにですが、来てくださるのでしたら工房兼住居になっている建物を何軒か選んでもらう事になりますが、どれも三人位だと広い物ばかりですよ……子供部屋が付いた物件もありますよ?」
「「乗った!!」」
「……えっ!?」
フォロンさんを勧誘するにあたり、先ずは周りを落とすことは重要だよね?
そんな考えから、空き家の工房と住居を兼ねた物を探してそこから子供部屋がある物を数件見つけ出しておいた。
結果として二人が釣れたのを見て、セレーナ様とベルヴェーラ様は密かに拳を握っている。
着せ替え人形になる前、セレーナ様とベルヴェーラ様が迎えに来た際に、『フォロンとアルマは商都から離れる可能性があるかも知れない』『ラヴィも恐らく一緒だろう』と、セレーナ様とベルヴェーラ様から言われなければ、急ぎで父様に確認をしていなかっただろう。
協力してほしいと言われていたことではあるが、ここまで上手く行くとは思わなかった。
それと同時に、セレーナ様の先読みは予知的な物でも有るのではないか?
そんなことを考える程に、話が纏まって行く。
「なら、これがグラファスからの移民許可証よ。ラーゼリア伯爵のサインはルーク君から既に預かってあるから、向こうの役所に届ければ貴方達はラーゼリア領の領民というわけね」
「セレーナ様、有り難う御座いました」
「あ~もうっ!! 今は先輩で良いわよ。後輩と同期の妹の面倒をこれ以上見なくて済むんだから、気楽になるってもんよ……まぁたまには庭の手入れに来なさいよ、これでもアンタの作品は気に入ってるんだからさ」
何処か寂しそうな、でも嬉しそうな声でセレーナ様は許可証を取り出しサインを記していた。
「其ではこのままラーゼリアに向かいますか? それとも他に買うものがあれば、買い出しに向かいますか?」
「いや、買うものは特に無いよ、有り難うルーク君……いや、ルーク様」
「アルマさん、ルーク君で良いですよ。男爵の爵位でも、今は特に管理している訳では無いですから」
そう返したところで、セレーナ様はいきなり爆弾発言をかました。
「そうそう、フォロン。確かラーゼリア領は貴族じゃなくても重婚二人目までは出来るから、ちゃんと式くらいは挙げなよ。挙げるなら参加するからさ」
「えっ、でもラーゼリア伯爵様って本妻だけ……」
「はい、ラヴィもそう聞いてます」
「父様が母様だけなのは、確かに特殊に見えますが、元々開拓領でしたので制度はそのまま残しているだけですよ。近所の鍛治屋なんて幼なじみの姉妹二人と結婚してますし他にもいますから。後、詳しく語りませんが父様はその辺で、昔かなり苦労されたらしいので」
グランツ父様が俺の事を心配するのに、一番してくるのはやはり女性関係の話が多い。
まだ6歳とはいえ、既に確定している婚約者が、5人、しかも彼女達曰く人数は12人位は欲しいとか言ってるし、俺の式神契約をしている者も婚約者候補になっているらしいけど、その辺は良くわからん。
「次に会うときは、結婚式か子供が出来たかのどちらかね」
そんな言葉で、最後は閉められた。
そして転移を行い、フォロンさん達はラーゼリア領の土地に足を着けたのだった。
俺はといえば、自分の家に帰るだけなので、緊張も無い。強いて言えば、学園に通っている兄様達に会えないのが残念な位だ。
そんな事を考えながら門を抜けると、屋敷の入り口にたどり着いた。
「ダリウス、ライザ、近くに居るか?」
「ルーク様、お帰りなさいませ。そちらが細工師様ですかな?」
「あぁ、そうだよ。後で作品を見せるから、父様と母様を呼んできて」
「畏まりました。其ではお客様、こちらにどうぞ。ルーク様はライザが……何時もより早いですな」
「ルーク様お久しぶりでございます。さぁ、こちらにどうぞ」
部屋に案内をされ、寛いでいると相変わらず、ライザもダリウスも行動が早い。
「ルーク様、グランツ様とトリアナ様が広間に来なさいとの事です」
ライザに呼ばれて広間に行くと、父様と母様が既にソファーに座っており、そこでフォロンさんの細工を施した小テーブルを見せたのだが
「細工師の件は問題無さそうだ。良くやった。所でお前の陞爵の件だが、予定より早くなりそうだ」
「どうしたのですか?」
「王太子殿下がお産まれになったのだ。先程知らせが届いた。ほら、お前当ての手紙も有る」
父様から渡された手紙片方は開封されておりもう片方は、王印で封をされていた為、まだ父様も見てはいないらしい。
その手紙には、確かに俺宛の名前が書いてあった。




