追い付いた結末
グレゴリーは、ノルドに魔術で攻撃を仕掛けているようだが、悉くノルドは剣で弾き飛ばしていた。
「何なんだよ、この騎士は!!」
「私はノルドと申します。貴方の様な者を処刑する事を目的とした。暗殺特化の騎士ですが?」
「……ありゃあ、かなりキレてるぜ」
「彼、子供好きでしたからね…許せないんでしょう。将来の夢が先生でしたし」
ノルドの魔力が、やたらと濃く成っていたのだが、どうやらグレゴリーに対する怒りが原因らしい。
普段のノルドは、近隣の見廻りや、その他の仕事が無い時は、近くの広場で子供達の先生をしていた。
鎧姿なのは仕方が無いとして、教え方が上手いため、近所の人達からは、かなり評判が良い。
そんな彼が、子供を実験台にしたり、反道徳的な行動を取るグレゴリーに対して、憤慨するのは当然だろう。
ノルドの振るう双剣から、衝撃波が放たれてグレゴリーに迫る。
グレゴリーは、避けようと身体を動かすが、外側からはゼファーが、その足元を狙い魔術を放っていた。
「ノルド、ゼファーは、もう良いよ。次の仕事よろしく、沙耶?」
「は~い、お兄ちゃん『魅了』!!」
俺は、顔を見たく無かったので、後ろから迫り、状態を確認した。
「グレゴリー・フォルティス」
「………ハイ」
どうやら成功したようだ。グレゴリーは沙耶の『魅了』にしっかり掛かっている様だ。
必要な情報をさっさと聞き出す事にしよう。
「捕らえた違法奴隷はどこにいる?」
「……」
「もう一度聞くぞ? 違法奴隷はどこに居る?」
「………屋敷の地下室……隠し部屋」
「そこには、他の貴族に繋がる物はあるのか?」
「……貴族名簿…売り上げ…リスト…」
グレゴリーの様子を見ているベリトが、顔を横に振る。どうやら、時間切れのようだ。
ジンとベクターは、各々長剣を持って構えると、そのままグレゴリーの首と心臓を貫いた。
しかし、様子がおかしい。
剣を引き抜くと、違和感に気付いた二人が飛び退いた。
グレゴリーの身体が、どんどんと膨らみメキメキと音を立てながら、変形していく。
暫くすると、心臓部の傷口から剛毛の腕が伸びてグレゴリーの身体を引き裂いた。
恐らくこれは、グレゴリーの最後の抵抗なのだろう。現れたのは、牛の頭を持つ巨人。
それも、全身が赤茶けた通常個体ではなく、漆黒の毛と鎧を着た個体。それは、上位種の証だった。
「マジかよ、糞愚兄め、余計な事をしやがって」
「いやはや、まさか自分を生け贄に、ブラッドタウルスを呼ぶとは思いませんでした」
ベクターとジンは、ブラッドタウルスと呼ばれる上位個体から急いで離れた。
「ヴォオォォォォォ━━━」
ブラッドタウルスは吼えると、腰に備えていた斧を取り、こちらを睨み付けて構える。
どうやら、完全に敵視しているようだ。
このまま放置することも出来ない。
「お二人は、戦えますか?」
「無理だな、俺とベクターの装備でどうこうする相手じゃない」
「逃げは出来そうですが、放置するとダンジョンが危険になりますね」
二人が敵わない事は分かった。
俺は、魔力を転移石に込めてベクター達の足下に叩きつけ起動させた。
「どうするつもりですか…まさか戦うのですか?」
「お前の護衛が強くても、あれは無理だ。逃げろ!!」
「大丈夫ですよ。お二人は早く転移してください、奴が来ますから」
俺は鏡花水月を構えて、ブラッドタウルスの動きを見る。
動きは巨体の割にかなり素早い。
既に斧を構えたまま、こちらに走り向かってきていたが、躱すのがギリギリなスピードだった。
カミナも人の姿になっていたが、どうやら相手はコイツだけではないようだ。
グレゴリーの死体から、続々と魔物や魔獣が沸き出してくる。
「ルーク、そのデカブツはお前に任せた。回りの奴らは私達で刈り取る」
カミナはそう言って、群れの中に飛び込んだ。
ベリト達も既に対応をしているようで、ゼファーも範囲魔術で動きを撹乱している。
俺はブラッドタウルスの攻撃に備えて、火の構えから居合いの構えに変える。
動きは速いが、足場に慣れていないため、斧を地面に刺して勢いを殺しているようだ。
ブラッドタウルスが、再びこちらに走り出す。
走ったスピードを威力に変換して、斧を俺に叩き潰すかのように、振り下ろしてくる。
先ずは脛に一撃当てる為、刃先に魔力刃を纏わす。
振り抜き様に一撃を浴びせたのだが、その一撃は二つ目の斧によって防がれた。
どうやら、戦闘に対して頭の働く魔獣の様だ。
「こいつは、ちょっと骨が折れそうだな」
不謹慎ではあるのだが、少しだけ楽しくなってきた。
久々の上物だが、この後の事もあるので、余り時間をかけてはいけない。
急いで距離を開け、構え直した。
恐らく、次の一撃で決めてしまわないと、このダンジョンで、この化物がボスや雑魚として出現することになりかねない。
という訳で、早いところ仕留めることにした。




