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19・現実がファンタジーに追い付いた感じだな

 ミノタウロスの解体を終え、栗原が魔法で作り出した穴へと不要な部位を放り込んでいく。


「地属性魔法の使い手が居ると簡単に終わるな」


 という千葉。体長3mを超える巨体を埋めるとなると大変なのだが、こうやってポンと穴があるなら簡単だ。

 

「それに、水属性を利用した氷結も便利だな」


 と、大池も言う。


「分かったらその分持ってね」


 と、切り返す栗原を見ると、ホントちゃんとしてるな。僕は何も言わずに渡されたままに担ごうとしていたというのに。


 そして、ミノタウロスという獲物を持ってその日の夕方には集落へと帰還した。


「心配したぞ。野営するならそう言ってくれ」


 と、オッサンに言われたが、ミノタウロスを見たら納得だったらしい。


「氷結で内臓も持って帰ってるから腸詰にしたいんだけど」


 というバルナの提案に、オッサンは少し考えている。


「もちろん、手伝うから」


 というスーケの言葉で同意するらしい。


「じゃあ、頼んだ」


 そう言って、楠や栗原も加わって腸詰用に腸の下準備をするらしい。


「男どもはひき肉作って!」


 ボケっと眺めていた僕らにも栗原から指示が飛んでくる。やり方を分かっていそうな千葉を見ると、仕方なくといった感じで用意を始めるらしい。


 それからしばらくして、腸の準備と僕らのひき肉も完成した。千葉が居なかったら無理だった。


「専用のソーセージフィラーはないみたいだから手作業だな」


 と、加工場の器具を漁って準備を始める千葉。それを感心したように見つめるバルナ。


 そんな、ちょっとした騒ぎを起こしながら腸詰め作業を行い、何とか完成させることが出来た。


「これ、どうするの?」


 適当な長さで切られた腸詰めが並ぶ光景を疑問に思ってそう問いかけてみた。


 すると、どうするかで意見が割れてしまう。


「茹でる」


「そのまま燻製」


 の二つであるらしい。


 どちらが良いのか僕には分からないので、とにかく推移を見守ることにした。激論が戦わされている間に片付けでもしようかと動き出すと、すでに大池が片づけを始めていた。


「おお、高鉢も片付けするか?俺にはどっちが良いか分からん」


 と言って来たので、2人で片づけを進めている間に、どうやらまずは茹でてから燻製する事になったらしい。


「おばちゃんが言うならそうする!」


 という栗原の声からすると、こちらの作業を手伝いに来た集落の人の案を採用したらしい。


 そんな騒がしい作業も夕暮れを少し過ぎた頃には何とかひと段落つき、あとは燻製室へと持ち込んで燻製にするだけとなった。


「あとはやっておく」


 というオッサンの言葉を受けて僕たちはそれぞれの家へと向かった。


 ほんの2日だったけど、中身は濃かったな。


「5日でシルッカへ帰るって言ってたのに無理だったね」


 という栗原。そう言えば、5日で弓が完成するんだっけ?


 それからまだ1日は燻製に掛かるという事で、休養日という事でもう1日集落で過ごしてからシルッカへと戻ることになった。


 シルッカへ帰還してまず行ったのは、例のドワーフのところへ顔を出す事だった。


 場所はシルッカ村の一角にあるドワーフ工房の一つだ。


「おう、遅かったな。おかげで納得が行くまで作り込むことが出来たぞ」


 と言って工房の奥から弓を持って来た。それはまさに、僕の弓とデザインが同じコンパウンドボウだったが、デザインこそ同じだが材質の違いもあって細部は異なっている。


「あとは、お前らが使ってそれぞれに合わせた変更をやれば良い」


 嬉しそうに受け取る4人を見て、僕もどこか嬉しくなった。


「その風竜の弓は鍛冶王が考え出した物じゃなく、お前が持ち込んだ異世界の弓を参考に作ったそうだな?」


 と、ドワーフが僕に聞いて来たので頷いておく。どうやら柏木など一部のヒーラーや生産系が村に残っていたらしい。

 そんな彼ら、彼女らから仕入れた情報で、僕が持ち込んだコンパウンドボウが、この弓の基であると知ったらしく、さらに奥からひと張りの弓を持って来た。


「これはソイツの原理を普通の弓に落とし込んでみたモンだが、お前から見てどうだ?」


 と、僕に突き出してくる。それを受け取り、眺めてみれば、それはまさしくリカーブボウである。


 弓というのは木や竹を芯として加工を加え、さらに張り合わせなどで性質を調整して作り上げられている。

 ただ、どうしても一本モノとして作られた弓はエネルギー効率が悪い。全体がしなり、復元するので、どうしてもエネルギーロスが大きくなるんだ。

 コンパウンドボウはそのしなる部分を極限まで減らし、さらに滑車を用いて引いた時の力まで調整してくれる。さらに、滑車がエネルギー伝達を受け持つため、ただ弓のしなりを利用するよりエネルギーを矢の射出力として伝達しやすくなる。

 もちろん、その分複雑で部品点数も多くなってしまうが。


 そこまで徹底せずとも、現代アーチェリーで用いられるリカーブボウでも、一本モノよりはエネルギー効率が向上している。


 弓のエネルギー効率とは、いかに矢の射出にしなりの力を変換できるか。なので、弓全体がしなるよりも、局所的なしなりを効率よく伝達する方が良い。その為、しなりを生むリム部と手で支持するハンドル部分を分割して、無駄な復元力消費を抑えることで、旧来の複合弓に比べてエネルギー効率を向上させている。


 このドワーフは風竜の弓からその原理を読み取り、リカーブボウも考案したらしい。


「威力は落ちるが、コイツでも通常の弓より威力が上がるぞ」


 確かにその通りだ。構造を度外視したファンタジー弓とは根本から異なり、デザインと性能を両立した弓が普及しそうだ。


「なんだか現実がファンタジーに追い付いた感じだな」


 リカーブボウを見てそう感想を漏らす千葉の意見もあながち間違いではないかもしれない。

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