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猫耳忍者は、童顔の鬼神の気配に怯える。


「こんな道がある、ってのは、猟師どもにも聞いたことがねぇな」


 ラセツが告げると、ヴィランは首を傾げた。


「リョウシというのは?」

「山で獣を狩る連中のことだ」


 連中は獣を狩るのが生業(なりわい)なので、収穫を得るまで大半の時間を山で過ごすのである。

 ゆえに山道に精通している。


「貴様は狩人(ハンター)にも知り合いがいるのか」

「山暮らしもそれなりに長ぇからな。先にいる奴らには敬意を払うもんだろ」


 でないと不要な争い事をする羽目になる。

 ラセツはケンカは好きだが、命を狙われるのが好きなわけではない。


 それに仲良くなっておく方が、色々と荷物や獲物を分け合えたりと得がある。


「行くか?」

「ああ」


 見つけた道を親指で示すと、ヴィランがうなずいたのでラセツは足を踏み入れた。

 

※※※


 その頃。

 獣道の奥で、先に向かわせた仲間たちに追いつこうと山道を駆けていたネネコは、ピタリと足を止めて頭を抱えた。


「にゃ、にゃにゃー!? なんで見つかったのにゃ!?」


 入り口はきちんと隠しておいたはずである。

 普通に歩いていたら、気づくはずのない道なのだ。


 それでも念のために、と獣道の入り口に仕掛けていた忍術の『知らせ』……虫の音のような音が耳に響いた。


 『知らせ』の内容は、人間のような大きさのモノが二つ……多分、ラセツとヴィラン(・・・・)だろう。


「〜〜っ! それにこの時間……あいつら、グッスリ寝てから来たにゃ……?」


 元々夜行性のネネコは、そろそろ眠気が襲ってきている。

 うらやましいにゃ〜、と恨めしく考えてから、ハッと我に返った。


「そそ、そんなこと考えてる場合じゃないにゃ!」


 ブンブン、と首を横に振り、人差し指のツメでカリカリと木の幹を引っ掻く。

 ちょっと気持ち良くて、気分が落ち着いてくる。


「にゃ〜……にゃ〜……」


 先にいった仲間たちは、順調に進んでいれば、すでに山を降りるあたりに差し掛かっているはずだ。


 ネネコはもうすぐ山頂に着くくらいの位置にいる。

 だから、ラセツたちが追いついてくるにはまだ時間があるはずだ。


 ……ある、はずだ。


「落ち着くのにゃ……落ち着くのにゃ……特にラセツはマズイのにゃ……」


 見つかった結果起こることを想像して、ネネコはブルリと震えつつ、尻尾をピンと立てた。


 まして、彼はヴィランと一緒にいる。


 それがマズさに拍車をかけていた。

 なぜ一緒にいるのかは分からないが、どちらも会いたくない相手であるのは間違いないのだ。


 やり過ごすにはどうすればいいのか……と考えて。


「そうにゃ! もっともっと時間を稼げばいいのにゃ!」


 ぽん、と手を打ってふたたび駆け出したネネコは、道の先にある、とあるモノを見つけてビシィ! と指差した。


「これにゃ!」


 そのまま、見つけたものの前に立って、両手で印を組む。


臨兵闘者皆陣列在前りんびょうとうじゃかいじんれつざいぜん!」


 シュババババ! と素早く印を組み替えたネネコは、パン! と手を合わせた。


「〝土克水どこくすいがま〟!」


 最後に、右手の人差し指と中指を左の手のひらで包み、同じ二本指を立てる。


「ーーー《口寄せ・大喰オオグライ》!」


 呪言とともに、ボン! と煙が起こり……現れたのは、巨大なガマガエルだった。


 ネネコの十倍くらいの体躯があり、茶色の体色にまだらな青い模様を浮かばせた妖怪である。


「よく来てくれたのにゃ!」

『ゲコォ』


 オオグライは、ネネコが使役する『しき』……契約を交わして従えている妖怪……の中でも、水と火に強い唯一の仲間だった。


 一匹だけで残していくのはちょっと嫌だったが、そんなことを言っている場合ではない。

 ネネコには、守らなければならない主人がいるのだ。


「オオグライ! む、無理はしちゃダメだけど、ここで、今から来る奴らを足止めして欲しいにゃ!」

『ゲコォ……?』

「いつもみたいに、頑張って食べなくてもいいにゃ! み、見たら分かるにゃ! 負けそうになったら、ボン! ってして戻ってくるのにゃ!」


 ネネコは、いつもと違う命令に戸惑って首をかしげるオオグライに言い聞かせた。


「下手したら死んでしまうのにゃ! それは拙者せっしゃが悲しいからやめるのにゃ! 分かったにゃ!?」

『ゲゴォ♪』


 意味が分かっていなさそうな様子ながらも、オオグライは了承の返事をして喉袋を膨らませた。

 ネネコはそのお腹に短い手を伸ばしてぽんぽん、と叩いた。


「いい子なのにゃ! じゃ、任せたのにゃ!」

『ゲゴォ!』


 ブンブン、と手を振りながら先に向かうネネコに、大蝦蟇おおがまは大きく前足を振り返す。

 その姿が見えなくなり、山を降り始めたあたりで、ネネコはハッと気づいた。


「……もしあの子がオオグライだと気づかれたら、ラセツの足が逆に早くなっちゃう可能性があるんじゃないのかにゃ……?」


 ネネコはふとそんな可能性に気づいたが、すでに後の祭りだった。

 今更、オオグライを呼び戻したら逆に頼りにされていない、と拗ねてしまうかもしれない。


「にゃ〜……そうにゃ!」


 またしてもピコーン! と思いついたことを実行するために、ネネコは少しだけその場で細工を始めた。

 

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3巻発売されました!ヾ(๑╹◡╹)ノ"こちらもよろしくお願いいたします!!
N8910EM『最強パーティーの雑用係〜おっさんは、無理やり休暇を取らされたようです〜』
― 新着の感想 ―
[良い点] 大きく前足を振り返す大蝦蟇がなんか可愛いw [気になる点] ネネコはラセツとかかわりがあったような・・・ 猫だからw [一言] 爪とぎの痕で気付かれそうw
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