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17ワン目 月の下が似合う女

「なるほど。うん? ということは、オレは友情を示せたということだろうか?」


「……ははっ、もうオレにはさばきれないわ。ジュライ、後は任せた」


「そこは納得するところじゃねぇんだよ、このおとぼけ兄弟がぁ!!」


 ボケっぱなしの兄弟にジュライが吠える。まぁ、そんな形の友情もあるだろ、一つくらいは、たぶん。そんなオレ達の馬鹿丸出しのやり取りが聞こえていたのか、フレイヤがクスクスと笑いながら大きな板を抱えて戻ってくると、それをカウンターの上に置く。


「仲がいいのね。それじゃあ、さっそくソージの属性を調べてみましょうか。これが魔法属性をみるための魔道具よ。心の準備はいいかしら? 両手をここに置いて」


「これで、いいのか?」


 その板には複雑な魔法陣が描かれており、まん中には丸く曇った鏡のようなものが取りつけられていた。オレはフレイヤが指差した魔法陣の両端に手を置く。正直に言うと、なにかが起こる気はまったくしない。魔法のない世界で生まれて生きて来たのだ。現実的に考えて、そんな自分に魔法属性があるとは思えなかったのだ。


「ええ。意識をこの鏡に集中させるのよ」


 フレイヤに導かれるように、オレは鏡を一心に見つめた。すると、鉛色の表面がわずかに波立っていき、それはやがて緩やかに白い光を放つ。


「うわっ」


「慌てなくても大丈夫よ。心を落ち着かせて」


思わず片目を閉じたオレに、フレイヤが声をかけてくる。寄せては返す波のような光の波紋が、何度もオレを中心に広がり、やがて、ふっとろうそくの灯が吹き消されるように消えた。後には、鏡の中に灰色のキラキラした光を纏いながら不思議な模様が浮かぶ上がる。


「あなたの基本属性は鉄みたいね」


「……鉄か」


「よりによって、お前がそれかよ」


「うーん、意外だよね」


「その反応をみると、オレはそうとうなハズレを引いたようだな?」


 三人が揃いも揃って困り顔を披露するので、オレはすぐにどういう状況なのか感づいた。ないはずのものがあったんだ。それ以上の不満を抱くのは欲張りだろうな。こちとら勇者様じゃないんだから、大外れでも属性があっただけ儲けものだろ。


「ああ、そうだっけ。ソージは魔法に疎かったね。ごめん、変な反応をして。あのね、鉄属性っていうのは十二属性の中で一番攻撃防御共に使いにくい属性なんだ」


「だが、物作りとしては優れている。そのため職種に鍛冶を選ぶ人が多い」


「あら、それは本人の使い方次第よ? 魔法属性の可能性は無限大だもの。それに成長過程で属性変異が起こることがあるわ」


「属性が変わるのか?」


「ごく稀に、だけどね。ただ、なにが原因で変化するのかはまだわかっていないの。だからあくまでも可能性があるって話よ」


「へぇ、面白いな。変わる理由が解明されれば、いつか人が自由に自分の属性を選べる時代がくるかもしれないってことか。それまでは、リュベルクで戦う鍛冶師でも目指すかな」


「ぶはっ、なにそれ!」


「金棒をぶん回しながら自分で資源を取りにいく鍛冶師がいてもいいだろ」


「ひゃははははっ、じゃあオレも一緒に行ってやるぜ」


「僕も行く。たくさん手伝うから期待しててね」


 オレがそれほど気にしていないのが態度でわかったのか、ライジュンとカナンが表情を緩ませる。心配しなくてもこんなことで落ち込むほど柔じゃない。むしろ新しい力ってのにわくわくしてるくらいだ。


「前向きでいいわね。それに、あなたは鉄属性だけど魔法を使えるほどの魔力がある。あの光の波紋がそれをあらわしているの。だからね、自分の可能性を常に探りなさい。それがあなたの選択肢を広げてくれるはずよ」


「わかったよ、あんたの助言を覚えておく。それで、魔法を使うには具体的にどうすればいいんだ? なんかこう呪文とか唱える感じか?」


「焦らないの。それはリュベルクでいずれ仲間が教えてくれるわよ。それか、お頭さんを頼ってもいいんじゃないかしら」



「ガオスに?」


「ええ。ガオスはとても強い人よ。あの人はまるで自分の手足のように雷魔法を自在に操るけれど、普通はそんな風には出来ないの。魔法は体力面だけでなく精神面も物をいうから。あの人の側にいれば学ぶことも多いはずよ」


「わかった。師匠とガオスに相談してみる。いろいろとありがとう、助かった」


「どういたしまして。いつでもいらっしゃいな。リュベルクの子達なら歓迎してあげるわ。特にあなたは、いい男に育ってるかチェックしないとね」


「それ以上はお触り禁止だ。うちのソージを誑かさないでくれ。だからといって、他の子もダメだからな」


「もうっ、つれないんだから~。そうそう、忘れるところだったわ。オーディス、ガオスにお礼を伝えておいてちょうだいね」


「ああ、了解した。必ず伝えよう。では、今日はこれで失礼する」


「またのお越しをお待ちしているわ」


 カウンターに頬杖をついたフレイヤにひらひらと手を振られて、オレ達はその店を後にした。ほんの3三十分くらいしか経ってないはずなのに、すごい濃い時間だったな。

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