14ワン目 リュヴァルクの子
オレは尖った空気を感じながら、口を開く。
「寄せ集めだからじゃないのか? 傭兵部隊はオレ達三人を抜かして総勢三十七人。その内、男が二十五人、女が十二人。それだけの人間が共存するんだから、訳ありの奴も多いだろ。そういう奴らは痛みを知ってる。だから、他人の痛みにも理解が及ぶし、想像するのさ。傷ついた相手を自分に置き換えてな」
──もし、苦しむあいつがオレ自身であったらどうしただろうと。そこにあるのは同情ではない。そこでふと、ジュライの怒りの理由に考えが及ぶ。
「ジュライ、お前が怒ったのは同情をされていると思ったからか? もしそうなら、リュヴァルクの奴らはお前に同情したんじゃない。共感したんだ」
「どっちも一緒じゃないのか?」
「違うな。簡単に言うと、あいつらは昨日のオレと同じように思ったんだ。お前が家を出たのは当然だと思うし、お前の悔しさや負けたくないって気持ちがわかる。これを共感と呼ぶんだ」
「……そうかよ。同情じゃあなかったんだな」
「仮にも、仲間であり友であり家族だと口にする奴らだぞ? ただ同情するんじゃなくて、一緒にその気持ちを背負うのを当然だと思っているんだろ。だから、オーディスはオレ達を【リュヴァルクの子】と呼んだんだ」
「ソージは子供と思えないほど理解が深いな。オレが頭を悩ませて説明する前に全て正しい形で伝えてくれた。それほどの推察力を持つ者は滅多にいない」
「どーも。こんだけベラベラしゃべっていて、実は見当外れでした! ってのが一番しょっぱいからな。そうならずにすんで、今オレは心から安堵しているぞ」
「ええっ!? それを言わなきゃ格好よかったのに!」
「どうせ気どったところで、すぐにボロが出るのがオチだ。それにな、本当に格好いい奴は格好つけたりしないだろ。──ところで、オーディスはさっきなにを言いかけたんだ?」
「ああ、ソージが鍛錬を受けるようになって三か月だろう? そろそろ、お前の魔法適正を調べておくようにと言われたんだ」
「魔法適正?」
「ああ。聞いたことくらいはあるだろう? 魔法属性には種類があり、オレ達はその中から魔法適正によって使える魔法が別れているんだ。そこから自分にあった魔法を成長させていくことになる」
そういえば、こちらに来た当初ガオスから簡単な説明を受けた覚えがある。確か、この世界では魔法属性と呼ばれるものがあり、それは光・闇・火・水・木・土・風・雷・氷・鉄・空・速の十二種類が存在する。
しかし、世の中の全員が魔法適正を持っているわけではなく、その方向性が肉体強化や補助に向いている者もいるんだとか。詳しく聞きたかったけど、まずは身体を鍛えろと言われて副頭に丸投げされたんだよな。
「魔法属性が十二種類あるのは知ってるよ。だけど、そっち方面はあんまり詳しくない。適正ってのはどこで調べられるんだ?」
「ギルドで金を払えば誰でも調べることが出来る。もし金がないのなら、簡易的に安く調べる方法もある。たとえば、魔道具屋で適正検査玉が売ってるからそれを使うというやり方だ。もう一つは、占いだな」
「当たるのか?」
「相手の腕によるが、当たらぬ占いでは商売にならんからすぐ消える。易者は魔力に敏感だ。腕がよければ成長度合いまで見通せる者も存在するらしいぞ」
「ちなみにね、普通の占いもしてくれるんだよ」
「カナンはやったことがあるのか?」
「うん! 失くし物をした時に頼んだんだ。そしたら、ちゃんと言われた場所にあったんだよ。すごいよね~」
「胡散臭ぇな。だいたいよ、あれはオレに貸したのをお前が忘れてただけじゃねぇか」
「君は疑いすぎだよ。占い師のお兄さんに『失せものは三日待てば戻る』って言われて、本当に言葉通りに戻って来たんだから、信じるでしょ!」
「へぇ……腕のいい人に当たったんだな」
カナンの体験談に感心していると、オーディスが話の筋を戻す。
「ただ、そちらはあくまでも簡易的なものだ。今回はガオスの友人が持っているという上級魔道具を使わせてもらう。そのついでに届け物をするのがオレの頼まれごとだ」
「そういう事情か。魔法も易者も気になるとこだけど、そろそろ街に向かった方がよさそうだな。これ以上話してたら時間がなくなる」
「そ、それがいいかもね。まずはガオスさんのご友人に会いに行こう。魔法のことは僕達が教えてあげるよ!」
横からずいっとカナンが出てきて焦り顔で急かされた。大きな目がしきりに訴えかけてくる。……魔法のことを深くオーディスに聞くのは危険か? 知っていて当たり前のこと聞いてしまってもまずい。カナンの意図を正しく受け取り、オレは目で頷いた。
「ああ、そうだな。オレはあまり詳しくないから教えてもらえるのはありがたい」
「オ、オ、オレに任せとけ!」
二人とも慌て過ぎだ。顔にも声にも動揺が思いっきり出ている。オーディスは不思議そうに瞬くと、表情の乏しい顔で一つ頷いた。
「うむ、短期間でずいぶんと仲良くなったようだな。いいことだ。では説明はお前達に任せよう」
二人のファインプレーに助けられて、オレは小さな危機を脱したようである。




