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中魔王メデューサ  作者: 隘路(兄)
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第14話 キーとなる感情

「石化の蛇眼」でベヒモス族の魔王、グスタフを石化させ、勝利したウェスタ。

 しかし、友軍のリヴァイアサンの魔王、レヴィアがグスタフをこの場で処刑する提案をして来た。


「今彼を処刑しなければならない理由は何です?」


「敵対していたというだけで十分では?

 大魔王城に攻め込む前に見せしめておかないと彼の配下に背後を突かれるやも知れません」


「逆に彼らの恨みを買うかも知れない。

 承服し兼ねます」


「それはこのわたしを敵に回すという意味でよろしいですか?」


 合流した勇者一行とゲイリー、アンクだったが、何故ウェスタとレヴィアが言い争っているのか分からない。


「一体何事ですか?」


 アンクはウェスタに駆け寄った。


「なるほど。政敵であるベヒモスを消しに掛かって来ましたか」


 ウェスタはアンクに状況を説明する。


「リヴァイアサンと事は構えたくありませんが、ここで彼女に従うと今後も要求をされ続けるかも知れません」


「そうだな…、どうすべきだろうか?」


「おい女」


 大メデューサが鎌首を持ち上げていた。

 レヴィアを見下ろしている。


「貴様は誰が主なのか、分かってないんじゃないか?」


「さっきからこの蛇髪は一体何なのです!?」


「貴様はそもそも大魔王が人間かどうかなどどうでもいいのじゃろう。

 話していてすぐ分かったわ。

 大魔王の後釜を狙っておったからその口実が欲しかっただけじゃ」


「なっ、何を勝手な事を…っ!」


 レヴィアは狼狽していたが、大メデューサはさらに畳みかける。


「若造の魔王ならばどうにでもやり込めて実権を握れる、そう考えておったな?」


「馬鹿な…。無礼者め!」


「やはり、分かっておらん。

 貴様にできるのは支配を受け入れるか、ここで滅び去るかじゃ」


 場の空気が変わる。

 圧倒的な、抗い難い力で抑え付けるような威圧感。

 その正体はもちろん……


「待って下さい!それはいけな…」


「ダマッテオレ!」


 どちらもウェスタの声だった。

 ウェスタはレヴィアの顔を見据えた。

 しかし、その表情は青年魔王のものではなかった。

 まさしく獲物を睨み付ける爬虫類のそれだった。


(やめろ!やめるんだ!)


 ウェスタは声を出す事ができない。身体を動かす事も。


(意識を奪われた、こんな事が……!)


 そして、ウェスタの中央の瞳が赤く染まり、一瞬赤い光線が放たれた。

 無論目の前のリヴァイアサンの魔王に対して……。


「ウェスタよ、三度も使ってやったのだから気付いたじゃろう。『石化の蛇眼』のキーとなる感情を」


 石像と化したレヴィアの前にウェスタはひざまずいていた。

 身体の自由は戻った。


「は…はい……」


 ウェスタは肩で息をしていた。

 疲労ではなく、ショックの余りだ。


「言って見い」


「殺意と……、支配欲、です」


「その通りじゃ。そしてこれらは王の座に着こうとする者にも必要なものじゃ。

 貴様は大魔王になると言っておったな?」


「そうです……」


「メデューサとは女王を意味する言葉。

『石化の蛇眼』は支配するための力じゃ。

 王の座を目指すのは結構なことよ。

 じゃが王になるという事は支配者になる事。

 平和と自由と言っておったが、今のお前に必要なのはそれらと正反対の感情よ」


「そんな…。他の感情で使えないの?」


「いつでも殺せる者の、慈悲として支配、それが絶対的な呪いである『石化の蛇眼』…、そういうことですね」


「どこが慈悲なのよ」


 インゲルは理解できないと言った風だ。


「戦乱の世にあって敵を殺さぬのだから慈悲深いことこの上ないわ」


「石化の蛇眼」習得のため、大魔王になるため、それだけではなかった。

「リヴァイアサンめは大魔王を倒した後の魔界で自分が優位に立つことを考えてベヒモスを殺すことにこだわった。

 じゃがこれを奴だけだと思うでない。

 大魔王を倒すのが先決で、最優先だ、などと思っておるなら足元をすくわれるぞ」


「人間界との戦争は大魔王の意志です」


「わしはそうは思わんな。

 これは時代の流れ、時代の意志じゃ。

 四千年の間、魔界と人間界の二つに分かたれた世界の必然と言ってもよい」


「そんなに大きな話!?」


「確かにこの時代は四千年前より平和じゃ。

 魔界においてすら秩序のようなものができつつある。

 じゃが生き物のさがとでも言うべきものは変わりようがない。

 卑しく身勝手な生き物のさがは支配することでしか変わらないし、支配を受け入れないものは殺すしかない」


「貴様の自由と言ってやりたいが、わしの目的はメデューサ族を生き延びさせること。

 大魔王との戦いの間に貴様が『石化の蛇眼』を習得できなかったらもう一度お前の意識を奪う。

 今度は永遠にな」


「そんな横暴な!」


インゲルは狼狽した。

 しかし、大メデューサは本当にそうするだろう。

 容赦なくレヴィアを石化させる様を見てしまっていると冗談とは思えない。


「わしに逆らう者は誰であろうと同じ目に遭わせるぞ!」


 駆けつけて来た半魚人の兵士たち、レヴィア軍に向かって大メデューサは言い放った。


「ウェスタ、お前はっ!」


 捕縛された氷の巨人族、ヨトゥンの魔王、ヘルセーだった。


「やはりお前は野心のために戦っているのではないのか!」


 ヘルセーが見たのは、味方のはずのレヴィアを恐ろしい形相で石化させるメデューサの魔王の姿だった。

 ゲイリーの話を聞いた時は戦争を止めるために大魔王を倒そうと言うのも信じられなくはないと思った。

 しかし、今は……。


「わたしは、わたしの望みのために戦う」


 ウェスタはそれだけを言った。


「石化の蛇眼」の習得は、同時にに王座に着く者の気構えを問い掛けるものだった。

 そして、それができなければ永遠に意識を奪われるという。

 殺意と支配欲を要求され、ウェスタは大魔王と戦う事になった。

【現在展開可能な情報】

・魔界12支族


魔王:現当主

1:ミノタウロス:ミノース

2:アラクネー:未登場

3:オルトロス:未登場

4:クラーケン:未登場

5:ヒドラ:ハイドラ

6:メデューサ:ウェスタ

7:イフリート:ヒートラ

8:サイクロップス:ゲイリー

9:テュポーン

10:スフィンクス:アンク

11:リヴァイアサン:レヴィア

12:ベヒモス:グスタフ


※:バロール:ザデン

※:ヨトゥン:ヘルセー


※:かつての十二支族だが大魔王城の護衛に回った際、領地を放棄した。

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