轟き響く爆音!揺らぐハーモニー!
――時は遡り、あおいが家を飛び出した頃の事。
佐伯ミカは、チャペルの席へ座り、うずうずと姉の入場を今か今かと待ち受けていた。
「ミカ、凄い顔してるわよ?」
「えっそ、そう??」
「そうよ?もっと笑顔で居てあげなさい。その方がリエも喜ぶわよ」
――親族控室に挨拶に来た義兄とお姉ちゃんの姿を見た時は、思わず声が詰まってただ目から静かに涙が溢れていた。
そんな私を見てお姉ちゃんはいつも通り「ミカは泣き虫なんだから」と、ドレスが濡れるのも厭わずに優しく私を抱き締めてくれた。
ちゃんとおめでとうって言いたかったのに……私の馬鹿。
――だから、お姉ちゃんが入ってきたら……ここを通ったら、おめでとうって言うんだ……!幸せになってねって、いっぱい言ってあげるんだ……!
司会者が何かをアナウンスした後、ガチャンと扉が音を立てて開き、参列した人々が一斉に扉の方へと顔を向ける。
ミカも慌てて顔を扉へ向けると、新郎が一人胸を張って入場し、静かに祭壇の前まで歩き、いつの間にか現れていた神父の立つ祭壇の前でゆっくりと扉の側へと振り向く。
ずっと新郎の姿を目で追っていたミカだったが、その新郎の背後に立つ神父の顔へ視線が移った。
立派なカイゼル髭を蓄え、白髪の混ざった髪をオールバックに撫でつけた外人の神父。
彼の立ち姿は堂々としており、背筋は伸び自身へ向けられる視線も何のその。むしろ参列者を見回して頷く姿は経験の多さを感じさせる。
……しかし、目の合ったミカへ見せた、ニヤリとした笑みはどこか胡散臭い。
「……お待たせ致しました。まもなく新婦様、入場です!皆さま、温かな拍手でお迎えください」
司会者の声にはっとしたミカは、再び扉の方へと身体ごと向け、その扉が開かれる瞬間を手に汗握りながら待つ。
パイプオルガンが鳴り響き、チャペル内の空気を一気に神聖な厳かな物へと変えていく。
続けて聖歌隊の歌声も響く中、ようやくガチャリと音を立て、純白のウェディングドレスに身を包んだ新婦、リエがゆっくりと一礼し、入場してきた。
エスコート役として待っていた父の腕を取り、ゲスト達の視線を一斉に集めながら静々とバージンロードを一歩、また一歩と歩き始めた。
リエの友人らがスマホのムービーを取りながら、口々に祝いの言葉と拍手で迎え、いよいよミカの座る最前列の近くまで進んできた。
「お……お姉ちゃんっ!!おめでとうっ!!」
ヴェール越しではあったが、ミカはしっかりとリエと目が合っていた。リエは口元に笑みを浮かべ
「ありがとう……!」
と、はっきり返してくれた。
父のエスコートが終わり、新婦が新郎の隣へと並び立ち、手を取り合い祭壇へと共に一歩踏み出した。
一度パイプオルガンも聖歌隊の歌も鳴りやみ、これよりいよいよ結婚式が始まるのだ。
式次第ではこの後讃美歌を一同揃って歌うのだが、何故か神父は静止したまま動かない。
不思議に思った人々の注目が、神父へと集まっていく。
それでも、神父は薄ら笑いを浮かべ沈黙を保ったまま動かない。
チャペルを満たす静寂。
誰もが困惑しながらも、式の進行を待ちわびていると、ようやく神父に動きがあった。
「この、特別な日。皆様が待ちに待ったこの瞬間――祝福に満ちたこの空間に」
祈るように目を閉じ、聖書へと右手を置いた。
「今こそ、爆音の祝福を届けましょうぞッ!!」
神父が目をカッと見開き、胸元から禍々しい輝きを放つ宝石を取り出して上へと掲げた。
それと同時に、宝石よりおどろおどろしい光が溢れ、その輝きを目にしていた人々から悲鳴が漏れ出した。
「うっ……!?」
「な、何……これ」
参列者たちが頭を抱え、髪を掻きむしり、叫び声が次々に広がっていく。
その混乱の中でミカも、自分の胸の奥から温かな気持ちが、いっぱい伝えたかった姉への想いが、その全てがどこかへ流れ出て、自分の中から失われていくのを感じていた。
「あああっ、ああああああっ!?やめて、とらないでっ……!!わあぁぁぁぁっ!」
代わりに胸を満たしていくのは、暗い感情。
寂しい、悲しい。……お姉ちゃんを奪う義兄が憎い、羨ましい、——嫌い。
そして……目の前が真っ暗になって、自分がどこにいるのか、どうしてここいるのかも分からなくなって、ただぼんやりと、椅子に座った。
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「みんなお待たせっ!!メロリィエンジェル、ただいま到着だよっ!!」
エンジェルの必殺技、プリズム・シャイニングキックによって、ステンドグラスを突き破り、広い中庭へと転がり落ちていったバクオンダー。
エンジェルの到着に表情を明るくするエストレアとソラリスだったが、すぐに気を引き締めて祭壇の上に浮かぶフォルティシモ男爵を見据えた。
未だ神父の服を着たままの男爵は、不敵な笑みを浮かべて三人を見下ろしていたが、横目で外の様子を確認すると、白い歯をむき出しにして笑みを深めた。
「ふふん、いいのかね?ワシなんざ相手にしていて。バクオンダーは伊達ではないぞ?」
男爵の余裕綽々な態度にエンジェルは一瞬迷いの色を浮かべるが、すぐにバクオンダーを追撃する事を選択した。
「ソラリス、一緒にお願いっ!」
「うんっ!エストレア、男爵を!」
短いやり取りで二手に分かれる。
外のバクオンダーへと向かうのはエンジェルとソラリス。
男爵を相手に、エストレアがチャペルに残った。
エストレアが一歩踏み出す度、祭壇だったものの残骸や装飾品の破片が足元でジャリッと音を立てる。
つい先程まで、一組のカップルが今まさに夫婦になろうと神と人の前で誓い合い、幸せと祝福で満たされていたはずのこの場所が……。
今は砕かれたステンドグラスと瓦礫と、感情を奪われ頭を抱え込む参列者たちの苦しげな声で満たされている。
「あなたが壊したのは、式場だけじゃない……この日のために、どれだけの想いが込められていたか、分かってるの?」
その声は怒りに震えていたが、決して叫ぶことはなかった。
代わりに、刺すような怒気を込めた眼差しで男爵を見上げる。
「それでも芸術を名乗るの? あなたのそれは、ただの騒音だよ」
「おんやぁ~? お耳が塞がってしまっておるのかァ? 常人なら見ることも聞くことも叶わぬ、
このフォルティシモ男爵の爆音の祝福を与えてやったのだぞ? 感謝こそされど、雑音なぞクレーム言われる筋合いはないわいッ!!」
男爵が神父の服を脱ぎ捨て、その下に重ね着していた、いつもの黒の燕尾服が現れる。
その胸ポケットから取り出した指揮棒を、男爵は胸の前に抱くように構えた。
すると、構えた指揮棒が黒い靄に包まれ、漆黒の刀身に、五線譜を捩じり纏わせたような鍔と護拳を持つ一振りの細剣へと姿を変えていく。
「いざッ!!」
その男爵の声と共に、両者は動き出した。
エストレアは床を、男爵は空中を蹴り、一呼吸の間に肉薄し、手にした得物を振るう。
「キィエエエエエエイッ!!」
男爵の細剣の剣筋は早く鋭く、繊細に剣先を踊らせ、しなりによる曲線を描いた高速の突きを、フェイントを織り交ぜてエストレアへと畳みかける。
しかし――
「――負けないっ!」
エストレアは手にしたチャクラムを投げずに握りしめ、近接武器として迫る突きの雨を、弾き、反らし、押し曲げながら受け止め、的確に反撃の殴打を男爵へと振るう。
「ぬぅっ!? やるな……!」
あわよくば見た目通りの脆さであって欲しいと、男爵を狙うように見せて細剣の破壊を狙った一撃。
だが、甲高い金属音と共に手応えは横へと流される。
「うがっ……!?」
腹部へと突き刺さる男爵の前蹴り。思わぬ重い一撃に蹴られた衝撃のまま床を転がり、隙を見せ過ぎぬように痛む腹部へ手を当てながらすぐに体制を整えた。
口の中に酸っぱいものがこみ上げ、無理やり飲み込むと次は鉄臭さが口内に蔓延する。
――失敗した……、身構えていなかった。無防備な所へ直撃させてしまった……。
ズキズキと痛みを増していく腹部をさすり、頬を伝う冷や汗を拭う。
「イイのが入ったなァ!?……そもそもお嬢ちゃん、近接苦手じゃろうて。無理せず投降してもいいんじゃぞー??そしてワシの芸術を称えるのじゃッ!!」
高笑いしながらも一切の隙を見せない男爵を前に、エストレアは苦々しく表情を歪ませ、しっかりと両足へと力を込めて立ち上がる。
「確かに私は近接型ではない。でも……この輝きは、誰にも霞ませはしない!」
一層目の輝きを強めたエストレアへ、男爵は僅かに身動ぎするもすぐに細剣を構え直した。
「そうかい……そいじゃ、仕方ないのぅ」
ドンッと男爵が床を踏み込む鋭い足音がチャペルの空間に響き渡る。
漆黒の細剣が、弧を描くように再び迫る。
その軌道を見極め、エストレアはチャクラムを盾のようにかざして受け止める――が。
「……くっ!」
その剣先がわずかに逸れ、エストレアの頬をかすめる。
風を切る感覚と共に、ピリリとした痛み。
視界の端に、髪の毛がふわりと落ちるのが見えた。
続けて、腕にも一閃。
服の袖が裂け、肌に走る衝撃に、わずかに身体が揺らぐ。
「はっはーッ!どうした、どうしたぁ? 口ほどにもないのう、星の娘っ子ッ!!」
高らかに笑いながら、男爵が空中で旋回するように跳躍し、さらに一撃を振りかぶる。
しかし。
「……うるさいよっ!」
踏み込みと同時に、エストレアのチャクラムがぎゅんと唸りをあげて射出される。
男爵の剣とぶつかるその瞬間、直線だった軌道が少しだけ曲がり、それに瞬時に男爵が対応するも、完璧な弾きには失敗する。
エストレアが狙ったのは、決定打ではない、崩しのための一手――。
「この場所は、あなたの爆音で汚していい場所じゃない……!」
続けざまにもう一つのチャクラムを同じ角度から打ちつけるように叩き込み、ついに男爵の姿勢が崩れる。
「なっ……ぬぅっ!?」
細剣を取り落とさぬよう、チャクラムの衝撃をまともに受け止めた反動でバランスを崩した男爵が、ふらつきながら後退する。
その背後には、バクオンダーによって割られた大きな窓。
「出ていってっ!!」
エストレアが叫ぶと同時に、再生成したチャクラムを低く射出する。
それが男爵の足元からアッパーカットの如く急上昇し、男爵の顎を捉えんとした。
「ぬおおっ!?」
男爵は寸でのところで細剣で防ぎ直撃は避けたが、バランスを崩したまま瓦礫へ躓き、そのままチャペルの外へと転げ落ちていった。
残されたチャペルの中で、エストレアは深く息を吐いた。
頬と腕の痛みはまだ残るが、その目に迷いはない。
エストレアは外へ落ちた男爵を追いかける前に一度振り向き、チャペルの入り口付近へ誘導し、避難させた人々の中から、ぼんやりとこちらを見つめるミカの姿をしっかりと目で捉える。
「……みんなの輝きは、もう誰にも奪わせない」
決意表明の様に呟き、割れた窓から外へと飛び出していった。
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チャペルの外、中庭。
土砂降りの中、戦闘の余波でひび割れた石畳を踏みしめ、バクオンダーが低く唸る。
「中々っ……しぶといわねッ!このバクオンダー!」
空を切り裂き、容赦なく振るわれるパイプの爪をソラリスが受け止めた隙に、エンジェルが懐へ踏み込み、重い一撃を当てて離脱するヒットアンドアウェイ戦法。
じわりじわりとダメージが蓄積しているのか、バクオンダーの動きが少し鈍ってきたようにも見える。
「ぬおぉぉおっ!?」
突然フォルティシモ男爵がチャペルから転がり落ちてきたと思ったら、続けてエストレアも割れた窓から飛び出してきてエンジェル達の近くへと着地する。
「お待たせ、二人共!」
再び集合したブレッシングノーツ。
三人はお互いに顔を見合わせ、笑みを浮かべるとバクオンダーへと向き直った。
「反撃のターンだよっ!」
エンジェルが、いつもの明るさで檄を飛ばす。
「いっくよぉっ!!」
その掛け声と共に、三人のメロリィが一斉に飛び出した!
エストレアはチャクラムを、ソラリスは輝く短槍を、そしてエンジェルは軽やかなステップで距離を詰め
、すでに二人だけでもなんとか抑え込んでいたバクオンダーに、連携した一撃が叩き込まれる!
「バ、バクッオンダッ!!?」
三人を近付けさせまいと、パイプの爪を大きく振り回すバクオンダー。
しかし、ソラリスが穂先に灼熱の魔法を纏わせて槍を振るい、右手のパイプの爪を溶かしながら炎上させ、切り裂いていく。
続くエストレアが近距離からチャクラムを射出し、バクオンダーの左手の爪を二本へし折り、残す一本の爪を鋭いキックで弾き飛ばす。
がら空きになった正面へエンジェルがまっすぐ突き進み、疾走の勢いと踏み込みの力強さを合わせた正拳突きを、バクオンダーの腹部へと深く深くめり込ませ、一気に振りぬいた。
「ダアアアアッ!?」
またしてもバクオンダーの巨体が浮き上り、くの字に身体を曲げながら少し宙を舞い、地を転がって噴水へとぶつかり、彫刻を砕き水を激しく空へと吹き上げさせる。
「ほほぅ!?やるじゃあないかッ!」
邪魔をするように、追撃をかけようとするエンジェルへ男爵が細剣を手に距離を詰めていた。
だが二人の間にソラリスが割り込み、炎を纏う槍の連撃で男爵を牽制し、そのまま足を止めさせる。
「邪魔はさせない……!!」
「はんッ!付け焼刃の槍捌き程度で、ワシの細剣を捌けるかッ!」
「ふふん、私は足止めなの!エストレアっ!!」
ソラリスの声と同時に、男爵とバクオンダーが直線上に重なる位置へと移動していたエストレアが、静かに溜め、集束させていた一撃を解放する。
「いくよ!ミーティア・レイ!!」
放たれるのは夜空を貫く流星の矢。激しい閃光と長く尾を引く高速のエネルギー波がまず直線上にいる男爵へと襲い掛かる。
「むぉぉぉっ!?」
男爵は無理に身体をねじり、燕尾服を焦がしながらもミーティア・レイを避ける。
そのまま突き進んだミーティア・レイは、噴水に衝突し少し行動不能となっていたバクオンダーへと迫り、爆音と衝撃波をまき散らしながら着弾した。
「ダダダダ、ダアアァアっ!?」
「今っ!!」
すかさずエンジェルがブレッシング・パクトをライアーへと変化させ、弦へ指を這わせる。
「希望のメロディ、愛のリズム……みんなの想い、響かせて!」
浄化のメロディーを奏で、ダウンしたバクオンダーへと祝福の音色を降り注いでいく。
「ハーモニック・フィナーレ!!」
まばゆい輝きと優しく温かな光がエンジェルを中心に広がり、バクオンダーを柔らかな光が毛布のように包んでいく。
バクオンダーが纏う闇と禍々しいオーラが柔らかな光に包まれて――——消えない。
「……え?」
光が届いた瞬間、確かに感じたはずだった手応えが、掻き消される。
まるで音そのものに拒絶されるように、光が砕かれた。
ギンッと、バクオンダーのサングラスが赤く煌めく。
刹那、爆音が爆ぜる。
「ヴァアアアアアクオオオオオンッダアアアァァァァァ!!!」
重低音の咆哮と共に、全身から闇が溢れ出し、パイプが増殖していく。
背中、腰、肩、腕。まるで全身が巨大な楽器のように変化していく。
その全てのパイプから、同時に放たれる不協和音の爆音。
「うわ……っ!? 耳が……っ!」
「この音……心が、乱される……っ!」
音圧、振動、そして心に直接訴えかける不協和音。
それは戦う意思そのものを削り取っていくようだった。
「ソラリス、下がってっ!ここは私がっ!」
エンジェルが前に出ようとするが、その瞬間、重たい音の衝撃が襲う。
「——っ!?あああああああっ!」
爆音の音圧による衝撃波で身体が宙を舞い、地面へと叩きつけられるエンジェル。
ぐわんぐわんとまだ脳を揺さぶられているような前後不覚に陥り、更に耳へのダメージが激しく、吐き気すら覚えて立ち上がる事すらままならなかった。
「バクオンッダアアアゥッ!!!」
その隙を逃さぬと、地響きを立てながらエンジェルへと肉薄したバクオンダーは、手から剣を模したパイプを生やし、まだ立てぬエンジェルを横薙ぎに打ち据え、チャペルの壁へとボールを飛ばすが如く叩きつけた。
「エンジェルーッ!!!」
チャペルの屋根に隠れ、ブレッシングノーツの活躍を見守っていたソラシーが思わず声を上げた。
壁に叩きつけられたエンジェルは変身が解け、私服姿のあかりが土砂降りで水浸しになった地面へと倒れ込む。
「そんな……あかり!?」
ソラリスが動揺を隠しきれぬまま槍を構え直してバクオンダーに接近し、穂先に雨にも消えぬ炎を纏わせ全力の力で投擲する。
だが、バクオンダーから放たれる爆音の壁が槍の軌道や勢いを殺し、羽虫を叩き落とすかのように槍を手で払い落した。
「まだっ……!」
ソラリスは耳を塞ぎながらもバクオンダーへと迫り、エンジェルのように飛び蹴りを放つも、勢いの乗らなかったそれは何のダメージにもならず、バクオンダーの嘲笑うかのような咆哮と共に手で払い退けられ、地へと転がされる。
エストレアが歯を食いしばり、チャクラムを構える。
足元はふらつくが、その眼はなおバクオンダーを睨んでいた。
「まだ……私は、終われない……!」
チャクラムを投擲しようとした、その瞬間。
「バァァァクオオオオオオンダァァァァァァ!!」
背のパイプオルガンから耳を劈くような不協和音の爆音が放たれる。
地面が割れ、空が揺らぐ。
爆音に飲み込まれたエストレアは視界に星がチラつき、身体が平衡感覚を失い、自分の意思に反するようにその場に仰向けに倒れ込んでしまう。
眩い光と共に、その身から星々の輝きが剥がれ落ち、あおいは顔を打つ大雨を降らせる灰色の黒い雲を倒れたまま見上げる事となった。
「まだ、まだああぁッ!!」
槍を失っても戦う意思は失っていないソラリスが、再びバクオンダーへと拳を握りしめて迫るも、巨躯から放たれる遥か上からの手の叩きつけを受け止めきれず、石畳へと叩きつけられ、太陽の輝きがその身から剥がれ落ち、意識を刈り取られる。
息も絶え絶えに、三人の少女が、中庭のあちこちに倒れていた。
破壊されたチャペル。彫刻を砕かれ水をまき散らす噴水。
ガラスの破片、瓦礫、そしてなお鳴り響く不協和音の残響。
「は、ハハ……フハハハハッ!!!祝福?調和?……そんなものが、この爆音に勝てると思ったかァ?」
フォルティシモ男爵の声が、どこか愉悦に満ちて響く。
「さぁて、ワルイゾーの仕上げ演奏といこうかッ!!ワシらの爆音を、まだまだ聴かせてやらねばなァ……!」
「バクオンダアアアアッ!!!」
勝ち誇るように咆哮を上げ、さらに体中からパイプを生やし、ハリネズミのようになっていくバクオンダー。
唯一意識のあるあおいは、動けない。反撃できない。
それでも——
「……ぐぅっ……、まだ……!」
小さく、あおいが指先を動かした。
だが、それ以上は動けない。
あおいも既に、限界だった。
今日、ブレッシング・ノーツは、初めて完全に敗北した。
本気を出したバクオンダーの前に為すすべも無く敗北したブレッシングノーツ。
バクオンダーに加え、未だ健在の男爵。
ここからエンジェル達は再び立ち上がり、ミカ達の感情を取り戻す事が出来るのか?
それでは次回予告です!
~~次回予告~~
うぅっ……さすがに今回は、ピンチかも……。
でもね、ここで終わるわけにはいかないんだ!
だって――
誰かが、私達を守ってくれて。
誰かが、私達を信じてくれて。
まだ……胸のこの音色が、響いてるからっ!
三人の想いが重なれば、きっとできる!
もう一度、立ち上がって――今度こそ、届けよう!
次回!「重なる想い、響き合うハーモニー!」
新しいハーモニー、はじまるよっ♪




