58話 茜とカラオケで愛の熱唱(?) 3
あわわっ、遅れてごめんなさいっ
茜に口を塞がれ声を上げることができないまま数分が過ぎた。
ここまで長くキスをする経験がなかった俺は、茜の唇の感触と熱を存分に味わってしまい、思考が麻痺してきていた。
それからしばらくして、ようやく茜が口を離し潤んだ深紅の瞳で俺を見つめる。
「ふふっ、次はナニをしましょうか、お兄ちゃん♪」
恍惚とした表情で尋ねてくる茜。
「何って訊かれてもな。ここはカラオケなんだし、歌を歌う以外あるのか?」
俺は一縷の希望に賭けて、ごく普通の返答をする。
「ふふふ、とぼけちゃって♪ 恥ずかしがらずに言っていいんですよお兄ちゃん♪」
「いや、さっきから何言ってるかわかんないんだけど。それよりも早く歌おうぜ?」
そう言いデンモクを指差すが、茜は俺の手を掴み自らの頬に当てた。
朱に染まった頬は普段より温かくなっている。
いつまでも触っていられるような心地よさに、俺は心が安らぐのを感じた。
「お兄ちゃん、折角の個室なんですから、もっとイチャイチャしましょうよ♪」
が、茜に声掛けられ現実に戻る。
そうだ、心安らいでる場合じゃない。早くこの状況を何とかしないと……
ジワリと額から汗が浮かぶ。
早く何とかしなければならない。そうでないと、今もなお摩り減っている理性が消えてしまう。
頑張れ俺の理性! もう少し耐えてくれ!
心の中で自らの理性に声援を送り、現状の打開策を考える。
「急に黙り込んじゃって、どうかしたんですかお兄ちゃん?」
「い、いや、なんでもないぞ?」
「そうですか。なら早くイチャイチャしましょうよ♪」
そう言うと茜は服の裾を掴み、
「えいっ♪」
掛け声と共に服を脱ぎ捨てた。
「なななっ、何してんだ!?」
「ナニって、服脱いだだけですよ?」
何かおかしいことでも? と首を傾げる茜。
「おかしいわ! カラオケで服脱ぐ時点でおかしいわ!」
声を荒らげると、茜が「落ち着いてください」と肩を叩いてきた。
膝の上に半裸の妹が座ってるこの状況でどう落ち着けというのだ。
「嬉しくないですか?」
「正直言って眼福だと思ってる」
白く綺麗なお腹にキュートなおへそ、それと少しセクシーな赤黒い下着。
思春期男子がこれを見て嬉しくないワケない。
「ふふっ、そうですか。それはよかったです♪」
嬉しそうに微笑む茜に、少しだけ見惚れてしまう。
仕方ないだろう。茜は家族贔屓無しにしてもめちゃくちゃ可愛いんだから。
「お兄ちゃんがどうしてもと言うなら、触らせてあげてもいいですよ?」
「えっ?」
突然のことに素っ頓狂な声を上げると、茜はクスッと笑った。
「お兄ちゃんがどうしてもと言うなら、どこでも触らせてあげますよ?」
「どっ、どこでも!?」
その言葉に自然と目が露になっているお腹や魅惑の太もも、そして下着に隠された膨らみへと向く。
触り心地の良さそうなお腹と太もも……ゴクリッ。
──って、何が「ゴクリッ」だよ! なに誘惑されてんだ俺!
どうやら俺の理性はそろそろ限界らしい。
これは早く何とかしなければ。じゃないとホントにヤバい……
「ほらお兄ちゃん、好きに触っていいんですよ? だって私はお兄ちゃんのモノですから♪」
「なっ」
「ですから、触ってもいいんですよ?」
「……」
ど、どうする俺! そろそろ理性が切れそうだぞっ!
茜の肢体に誘惑され続け、そろそろ触ってみようかな、なんて思い始めている俺もいる。
どうするどうするどうする……っ!
俺は必死に思考を巡らせた。
そして──
「……わかった、触らせてもらうよ」
「そうですか♪」
お兄ちゃんを籠絡できました♪ と嬉しそうな茜。
俺は無言で茜のお腹に手を伸ばし、
「ひゃんっ」
指の腹でおへその中を掻いた。
「お、お兄ちゃん? 確かに触ってもいいと言いましたけど、そこはちょっと……」
どうやら耳と同じでおへそも弱いらしい。
よし、他には……
「んんっ……くすぐったいです」
茜のお腹を、優しくゆっくりと撫で回す。
すると茜は声を漏らしながら身をよじらせる。
「お、お兄ちゃん、触るならもっと別のところにしてくださいよっ」
茜の声を無視して、俺は茜の横腹を強めに押した。
「んんっ!」
くすぐりに弱い茜なら、当然横腹も弱い。
この調子でくすぐり続けたら、大丈夫なハズ……っ!
「お兄ちゃんっ、どうして無言なんですか?」
俺がずっと黙っていると、茜が不安そうに尋ねてきた。
「いや、なんでもない。それより、本当に好きにしていいんだな?」
「っ! はい! ついにお兄ちゃんがその気になってくれました!」
嬉しそうにはしゃぐ茜が、とても微笑ましい。
だが、今は和んでいる時ではない。
俺は茜に両手を上げるよう頼む。茜は喜んでと両手を上げた。
「ところでお兄ちゃん。手を上げてナニをさせるつもりですか?」
期待に輝く瞳を向け、茜は首を傾げる。
「楽しいことだ」
「楽しいこと?」
むむむ? と梟のように首を傾げる茜。頭上に疑問符が見えてきそうだ。
と、和みながら、俺は晒された茜の脇に手を当てくすぐる。
「ひゅぅっ!? お、お兄ちゃん脇は、だめっ」
茜は反射的に腕を下ろすが、それも無駄なこと。
俺は茜の脇をくすぐり続ける。
「ひゃっ、あははっ! だめですよお兄ちゃんっ」
目尻に涙を浮かべ、茜は笑い声を上げる。
「お兄ちゃんっ、私が予想してたのはそれじゃないですからっ。ひゃっ」
「そうか」
「そうかって──あっ」
ふと、今までの笑い声とは違う声が茜の口から零れた。
「あっ、んっ……ふぁぅっ」
だんだん茜の目が蕩けだし、頬が紅潮していく。
「はぁっ、んっ……おにい、ちゃんっ……だめっ、いま敏感にっ」
「そうか」
俺は相槌を返すと、茜の脇から手を引き抜く。
「お、お兄ちゃん……」
潤んだ瞳を向けてくる茜。
俺は茜を抱き寄せて、耳元に顔を近付ける。
「お兄ちゃん?」
「なんだ?」
「いえ、ナニをするのかなって」
「安心しろ、茜がしてほしいことだから」
「そ、それって……っ。こんなとこでするなんて、恥ずかしいですけど……」
お兄ちゃんが望むならっ! と茜は何か勘違いをしているらしい。
まぁ別にいいか。
「茜……好きだ」
「ひうっ」
俺は耳に息を掛けるように囁く。
「お兄ちゃん?」
「ほら、茜言ってただろ? 『抱き締めながら耳元で愛を囁いてください』って」
「そ、そうでした。けど今はいいじゃないですかっ──ひゃうっ」
俺は茜の言葉を遮るように、おへそをくすぐる。
「家庭的なところが好きだ」
「んっ」
「ちょっと抜けてるところも好きだ」
「はひっ」
「嫉妬深いところも好きだ」
「はふっ」
「楽しそうにはしゃぐ茜も、ちょっとエロい茜も好きだ」
「はぅぅぅっ」
俺はおへそをくすぐりながら、息を掛けるように茜の命令を熟す。
「わっ、わかりましたからぁ、もうだめですぅ……んあっ」
必死に逃れようと身動ぎする茜だが、そんなことは無駄である。
俺は茜の耳に息を吹き掛け、右手で背中を、左手でおへそをくすぐる。
そして極め付けに、茜の耳を舐め回す。
「んっ、ふぅぅぅっ……だめぇ、だめですぅ──」
茜は俺の背中に手を回しシャツをギュッと掴む。
ちょっと可愛いと思いつつ、俺は手の動きを激しくする。
「あっ、だめっ……お兄ちゃんっ、だめぇぇっ」
ビクッと大きく跳ねたと思うと、小刻みに痙攣を起こす茜。
少し罪悪感が湧くも、過ちを冒さなかったことに安堵し息を吐く。
「……さて」
俺は茜をシートに寝かせる。
……完全に事後じゃねぇか。
俺は落ちそうになっていた服を掴み、茜に着せる。
店員が来てないことから、俺たちのことはまだバレてないとわかっている。
「一件落着だな」
俺は額の汗を拭い、シートに腰掛ける。
「……さて」
そのまま俺は、茜が起きるまで一人カラオケを楽しんだ。
茜とのデート編はここまでです




