56話 旅行は家に帰るまでが旅行
今日で「妹ハーレム」が投稿開始から九ヶ月が経ちました! ここまでこれたのも皆様のお陰です、誠にありがとうございます!
これからも「妹ハーレム」を宜しくお願いします!
今回は少し短くなっています。すいませんm(_ _)m
な、何か重い……
謎の寝苦しさに、俺は目を覚ました。
うっすらと開けた瞼に、淡い日差しが差し込んでくる。
そうか、もう朝か……
さて、体を起こそうか。と体に力を入れるが、手足(とついでに胴体)が拘束されているように動かない。
まさか、と嫌な予感が脳裏を過り慌てて瞼を開き状況を確認する。
「や、やっぱりかぁ……」
予想通りすぎて、ついため息を吐いてしまう。
俺の右腕には楓ちゃんが、左腕には司音ちゃん、右足に朝日と光月、左足にかすみんが抱き付いており、俺の上に茜が乗っかっていた。
他のメンバーは、俺のなるべく近くで寝ている。
何というハーレム状態。この状況には異世界ハーレムモノの主人公も脱帽するんじゃないだろうか。
ふっ、と苦笑が漏れ、どうしようかと考える。
「取り敢えず起こすか」
俺はまず、右手を動かして楓ちゃんを起こすことにする。
だが、どうすればいいのだろうか。右腕に楓ちゃんが抱き付いているということはわかっているが、茜が邪魔してどのように抱き付かれているのかわからない。
もし動かして変なところを触ったら……と危惧するが、まぁそんなラッキースケベは起きないだろう。
「楓ちゃんー、起きてくれー」
俺は名前を呼びながら、楓ちゃんの体のどこかをタップする。
「あんっ」
「ふぁっ!?」
突如楓ちゃんの口から漏れた悩ましい声に、俺は思わず素っ頓狂な声を上げる。
まさか本当にラッキースケベが!?
そう思えば、手に伝わってきた感触は以前触ったことのあるような柔らかさだった。……そう、茜の太股のような感触だ。
……まじで?
もし俺の感覚が正しいのであれば、俺がタップしたのは楓ちゃんの太股ということになる。
少しだけ、本当に少しだけ、楓ちゃんの太股を妄想してしまった。
……俺はもしかしたら、太股フェチなのかもしれない。
新たな性癖を感じつつ、俺はゆっくりと右腕を引き抜く。
流石に太股をタップし続けるのはマズい。何がとは言わないけど。
抱き付かれているとはいっても、固め技程強くされているわけではない。なら、ゆっくりと引き抜けば解放されるはずだ。
スル、スルスルスル……
ゆっくりと、少しずつ腕を抜いていく。
順調にも思えるが……実は第二の関門があるのだ。
それは………………楓ちゃんの胸だ。
太股の感触で忘れていたが、二の腕辺りが楓ちゃんの柔らかい胸に挟まれていたのだ。
それを引き続ければ、やがて俺の手はその谷を通ることになるだろう。
つまり……………………………………ゴクリッ。
間接的に楓ちゃんの胸をも、揉むことに……。いやいやいや! あくまで間を通るだけだ。そう、通るだけ。揉まなければ大丈夫!
そう自分に言い聞かせていると、ふと気付く。楓ちゃんの拘束が緩まっていたのだ。
これを好機と見た俺は、今までゆっくり動かしていた腕を素早く引き抜いた。
「ふあぁっ」
ビクッ。腕が、手が楓ちゃんの胸を通り過ぎるのと同時に、艶めかしい声を上げ体を痙攣させた。
な、なんというか……エロい。
そんな感想を抱きながら、一先ず第一ミッションをクリアしたことに安堵する。
後は司音ちゃんに拘束されている左手を引き抜けば、茜を起こして足に絡み付いている三人を退けミッションコンプリートだ!
完璧すぎる。そう自画自賛し、俺は右腕同様に左腕を引き抜くのであった。
◇妹◇
シスターズバインドから逃れた俺は、浴衣から持参の服に着替え妹たちを起こして回った。
そして起きた妹を見渡し、一足先に部屋を出た。
理由は妹たちが着替えるためだ。
茜は「別にお兄ちゃんがいても気にしませんが?」と言っていたが……それに対して楓ちゃんがまた怒っていた。
あのままだと巻き込まれそうだったから、俺は颯爽と部屋から逃げ出した。
茜は怒られていたが、昨日の件もあるし仕方ないだろう。
だから部屋から聞こえる説教に、同情することはなかった。
妹たちが着替え終わったタイミングで、部屋に朝食が運び込まれた。
昨日の夕食からもわかっていたが、この旅館は結構レベルが高いみたいだ。
後々調べてみたが、割りと高い旅館だったみたいだ。羽真グループの高級ホテル程ではないにしても、よくこんな旅館の宿泊券をゲットできたな。かすみんのお母さん、何者。
やけに豪勢な朝食を摂り、三十分ばかりの休憩を取って俺たちは旅館を後にした。
たった一泊とはいえ、とてもいい気分転換になった。お陰でとてもスッキリしたぜ。
「……なに私の頭を撫でてるんだ」
「なんだ、嫌だったか?」
感謝の意を込めて頭を撫でていたのだが、かすみんは唇を尖らせていた。俺を見上げる目がどことなく鋭い。
だが俺が尋ねると、かすみんはプイッと顔を逸らしてしまった。が、
「別に」
ボソリと呟いた。暗に続けろと言われているので、俺はその意を汲み取ってかすみんの頭を撫で続けた。
皆からの羨望の眼差しが、少しだけ恥ずかしかった。
◇妹◇
「帰ってきたぞぉ!」
ホワイトハウスに引けを取らない豪邸の前に立ち、長旅(一時間)で凝った体を背伸びをして軽く解す。
リムジンでの移動中、一応ポケットにトランプを忍ばせていたのだが……
振り向いてみると、まさに地獄絵図。半数──司音ちゃん、魅音ちゃん、夜花ちゃんが地面に膝を突いている。
はしゃぎすぎた朝日と蓮唯ちゃんも、リムジンの中でぐったりとしていた。
この様子じゃ、復活までは時間が掛かりそうだな。
仕方ないな。俺は「はぁ」とため息を吐き、楓ちゃん、かすみんと目配せを交わし五人を家に運び込むのであった。
場所変わりだだっ広いリビング。
「それにしても、はしゃいでたとはいえ蓮唯ちゃんも酔うなんて意外だったな」
「そうですか?」
俺の呟きに楓ちゃんが不思議そうに首を傾げる。
「いやぁ、やっぱり楓ちゃんたちはリムジンには乗り慣れてるだろ? だから大丈夫じゃないのかなって」
「まぁそうですね。確かに慣れてはいますけど、それとは別に蓮唯は乗り物に酔いやすいんですよ」
「なるほど。蓮唯ちゃんは乗り物酔いしやすいっと」
「何を書いてるんです?」
「おっと、見せられないなぁ」
楓ちゃんが身を乗り出してくるので、俺は素早くメモ帳を引っ込める。
危ない危ない。もう少しで見られるところだった。
なんですか? と楓ちゃんは訊いてくるが、俺は「何でもない」とだけ返し頭を撫でる。
「むー。葉雪にぃさんは卑怯です」
「えぇ? 別に卑怯じゃないと思うけどなぁ」
卑怯です。と楓ちゃんは唇を尖らせる。
「こんなことされたら、もう追求できないじゃないですか」
そう言いながら、俺の手を取り自らの頭へ押し付ける。
まだ続けろと。
と考えていると、楓ちゃんがジトーとした視線を向けてきた。
嫌なんですか? とその目が語っている。
まさか。ご褒美に決まってるじゃないですか。
なんて考えながら、俺は楓ちゃんの満足がいくまで頭を撫で続けるのであった。
「楓さんばかりズルいです」
楓ちゃんの頭を撫でていると、部屋から戻ってきた茜が頬を膨らませながら俺の膝の上に寝転がった。
だから猫かって。
内心でそう突っ込みを入れながら、視線で送られてくる期待に応えるべく空いている左手で茜の〝お腹〟を撫でる。
お腹を撫でられるとは思っていなかったのか、茜は「ふぇっ!?」と頓狂な声を上げた。が、すぐに頬を緩ませだらしない笑みを浮かべた。
「なんだかこうしていると、お兄ちゃんのペットになった気分です」
「さしずめ、猫か犬かな」
「私的には犬です」
つまりお兄ちゃんの雌犬ですね! と目を輝かせる茜に、自然とため息が零れた。
隣にいる楓ちゃんも、とても呆れていた。
まったく、いつからこんなポンコツになったのやら……
だがそこが可愛い。なんてことは口にしなかった。
「ほらお兄ちゃん、手が止まってますよ」
「葉雪にぃさん……もっとお願いします」
と少しだけ茜の魅力を感じていると、二人から催促の声。
「まったく、二人は甘えん坊だな」
なんて笑いながら、俺は昼前まで楓ちゃんと茜を撫で続けるのであった。
……微かだが、体に二人の匂いが残っている気がするのだが……多分気のせいじゃない。
それから昼食を全員で摂り、司音ちゃん、魅音ちゃん、夜花ちゃん、かすみんが帰ることで、俺たちの旅行は本当に終わったのであった。
夏休みには、またどこかに行きたいな。
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