53話 ゲーセンでデート 終
今日で「妹ハーレム」が投稿開始から7ヵ月になります! これからも宜しくお願いします!
波瀬姉妹とのデートを終え、妹たちとのデートも終盤。残るは羽真家三姉妹の下の子二人、蓮唯ちゃんと凉ちゃんだ。ただ、蓮唯ちゃんは来て早々俺とエアホッケーをやった罰としてデートは一番最後。
つまり、次のデート相手は凉ちゃんということになる。
「……にぃさま、おねがいします」
司音ちゃんと替わって俺の隣に立った凉ちゃんは、律儀に頭を下げて控え目に手を握ってきた。
いつもと違いまるで借りてきた猫のようだが、これでも凉ちゃんは精一杯甘えているのだ。ただ、今は人の目があって大胆になれないだけなのだ。
俺たちだけのときは、結構大胆になるんだけど。
などと思いながら、俺は凉ちゃんの手を握り返し、微笑み掛けて騒音の中へ足を踏み入れた。
「さて凉ちゃん、なにして遊ぶ?」
集合場所からある程度離れた位置までくると、俺は凉ちゃんにそう尋ねる。
凉ちゃんは「うぅぅ」と唸りながら、ゲーセン内を見渡した。
「あれ、やってみたいです」
「どれどれ~っと、おお、意外だな」
「ダメ、ですか?」
コテッと首を傾げる凉ちゃん。反則級に可愛いので旅館戻っても是非やっていただきたい。
さて、話を戻そう。俺が口に出した通り、凉ちゃんが選んだのは意外なモノだった。それは数あるリズムゲームの一つ、ダンスゲーム。画面の指示に従って床のパネルを踏むというやつだ。
正直意外としか言いようがないが、当の凉ちゃんがやりたいと言っているのだ。俺が断るわけがない。
「わかった、やろっか」
「はいっ」
俺が頷くと、凉ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
凉ちゃんマジ天使。
◇妹◇
さて始まりましたダンスゲーム。凉ちゃんの提案により二人一緒に踊るモードで遊ぶこととなった。
空いている台に向かい、投入口に百円玉を二枚ポイしてスタート。まずは曲選びなわけだが、
「凉ちゃん、どの曲にしたい?」
「……っ、これがしたいです」
羅列されている曲名を眺めていた凉ちゃんは、ある曲を見つけると目を輝かせて指差した。
その曲は俺も知っている曲だった。というか、少し前にアニメ化した、俺が大好きなラノベ『妹がいればそれでいい』のオープニングだった。
凉ちゃんが知っていたことに驚きだが、まぁ楽しそうだから気にしない、気にしない。
「わかった」と返しその曲を選択。次に難易度選択なのだが、無難にノーマルにしておいた。
さぁロード画面から切り替わり、ゲームスタート。
前奏が流れ始め、そして画面に指示が表示された。
「~♪」
凉ちゃんは曲を口ずさみながら、その指示に沿って踊り始める。
その姿は、まさに地上に降り立った天使だった。(吐血)
腰程まである艶のある水色の髪がフワリと揺れ、スカートやシャツの裾もヒラヒラと舞っている。心なしか落ち着くような良い匂いが辺りを漂い始めていた。
もう凉ちゃんが天使すぎて前が見えない……っ!
これが最近ネットで見る〝尊い〟ということなのか。と勝手に解釈しながら、俺は凉ちゃんに合わせてダンスを踊った。
三分にも及ぶダンスを終え、俺と凉ちゃんは近くのベンチで休憩を取っていた。
ノーマルながらなかなかにいい運動をさせられ、俺は汗を掻き上着を脱いでいた。そして、汗を掻いていたのは凉ちゃんも同じ。だが、凉ちゃんはもとから薄着なので脱ぐということはしていない。
チラリと横目で隣に座る凉ちゃんを見る。運動したからか顔は火照って少し赤みを帯びており、薄緑のペプラムトップスの袖は汗でか腕に少し張り付いている。鮮やかな青いミニスカートから伸びるスラッとした脚。太股が少し扇情的に見え──
って俺はなにを考えてるんだ!?
脳の暴走により凉ちゃんの姿を雄弁に語っていたことに気付き、慌てて思考を遮断する。
いやぁ、危ないところだった。もう少しで凉ちゃんを抱き締めるところだったぜ──
「……あ、あの、にぃさまっ、恥ずかしいです……」
……訂正。俺は凉ちゃんを抱き締めていた。
凉ちゃんの消え入りそうなか細い声で我に返る。凉ちゃんは先程より一層顔を赤くし潤んだ瞳で俺を見つめている。その姿と鼻腔を刺激する甘い香りが相まって破壊力抜群。俺の理性は大ダメージを受けた。が、なんとか止まり、俺は凉ちゃんを解放した。
「ご、ごめん無意識に抱き締めてた」
「い、いえ。大丈夫です……嬉しかったので。でも、今は少し汗臭いと思うので、後にしてください……」
「いや、良い匂いだったよ」
「っ~!? ふみゅぅぅぅっ」
勿論事実なのだが、少し照れ隠しのつもりで口にした言葉に凉ちゃんは羞恥か何かで赤面。もはや湯気すら出てきそうな程である。
それから「ふみゅぅぅぅっ」と鳴く凉ちゃんの頭を、思う存分撫で続けた。
◇妹◇
予想以上に凉ちゃんの頭を撫でていたらしく、気付けば時間もあと少しとなっていた。
「ごめん、凉ちゃん。折角のデートだったのに……」
「い、いえ、大丈夫です。恥ずかしかったけど、この……嬉しかったので」
先程も聞いたようなフレーズに、俺はまた凉ちゃんを撫でそうになった。
もう凉ちゃんの天使っぷりが反則級に可愛いのが悪い。
「うーむ、時間もあと少しだし、できて一つくらいだと思うけど……」
「あっ、にぃさま、あれがやりたいです」
なにをしようと悩み始めた途端、凉ちゃんが俺の手を引っ張りあるゲーム台(やっぱり相性占い)を指差した。
うむ、やっぱり出てきたか相性占い。今度は無難な結果を出してくれ。
今までの結果が結果だったので、切実にそう思う。
俺は今日だけでこいつに幾ら注ぎ込んだのだろうか。そう考えながら百円を投入。名前を記入すると質問が表示された。
「『私服の選び方』? また面白いようなワケわかんない質問してきたな」
「? また?」
「あぁいや、なんでもない」
どうやら凉ちゃんは俺が皆とコレをやっていることを知らないらしく、俺の言葉に首を傾げた。
危ない危ない。言葉には注意しないと。
俺は『かっこよさ』と記入。対して凉ちゃんは俺と似て『可愛いモノ』と答えた。
続き二問。『寂しいときに一緒にいたい相手』という質問には、俺は『妹』、凉ちゃんは『にぃさま』と答えた。まったく、嬉しいこと言ってくれるぜ☆
その他四問を終え、結果発表なのだが──
「『相性抜群。あと一歩踏み出せば結ばれるかも?』……なんだよこれ」
まぁ悪くはないが……
「あ、相性抜群……。あと一歩……」
凉ちゃんは顔を赤くしながら、結果を復唱していた。顔には歓喜の色が表れていたが、あくまでも声音は静かだった。
まったく、器用なことをする。
まぁ、嬉しそうでなによりだ。
それから間もなくデート時間は終了し、俺と凉ちゃんは手を繋いで集合場所へ戻った。
◇妹◇
さて、『妹デート十本勝負』も最後。相手はずっとお預けを食らっていた犬のように震えていた蓮唯ちゃんだ。
「それじゃあ行こうか」
「うんっ!」
まるで兄妹のように仲良く(実際兄妹なのだが)手を繋ぐ俺と蓮唯ちゃん。
さて騒音の中、まず蓮唯ちゃんが選んだのは太鼓のゲーム。元気にバチで叩く蓮唯ちゃんの姿は、とても微笑ましかった。
「楽しかったね、にぃい!」
「あぁ、そうだな」
蓮唯ちゃんは達成感で満たされたような表情を浮かべる。
うむ、プレイはお世辞にも上手いとは言えないけど、楽しめてるならそれでいい。
次に遊んだのはド定番UFOキャッチャー。蓮唯ちゃんは何度か自分で挑戦してたが、すぐに俺に助けを求めてきた。
妹の頼みならやむおえない。と心の中でカッコつけながらも台の前に立ち、百円を投入。
思うがままにアームを操り、見事スライムのクッションを掴み取った。
取り出し口からクッションを取り出し手渡すと、蓮唯ちゃんは嬉しそうに受け取り抱き締めた。もう力入れすぎてスライムが潰れてる。
蓮唯ちゃんはなんというか、反応が正直すぎて楽しいなぁ。
「そういえば、にぃには好きな人とかいるの?」
「ん? そうだなぁ」
ゲーセン巡りの中、不意に蓮唯ちゃんが他愛もない質問をしてきた。
この手の質問は、過去にも何度かされたことがある。まぁ俺の答えは「妹」なワケだが。
例に漏れず今回も俺はそう答えた、のだが……
「そうじゃなくて、この人って決まった人はいないの?」
まさか、詳しく言及されるとは思っていなかった。予想外の展開に、俺はつい言葉を失う。
どう答えればいいだろうか。恥ずかしい話、俺は妹たち意外で好きになった人などいないのだ。
俺が言いあぐねていると、蓮唯ちゃんは興味がなくなったのか「やっぱりいいや」と言い少しだけ速く歩き始めた。
先程の会話など気にする素振りも見せず、蓮唯ちゃんはデートを楽しんでいた。
気紛れのモノだったのかな……。まぁいいか。
「にぃに! もう一回勝負しよっ!」
ある程度ゲーセン内を巡ったところで、再び蓮唯ちゃんが勝負を仕掛けてきた。
売られた勝負は買うのが道理。俺はその申し出を受諾した。
さて、蓮唯ちゃんが挑んできたのは、あのときと同じエアホッケー。つまり、これは蓮唯ちゃんのリベンジマッチだ。
百円を投入すると、お馴染みの音と共にパックが出現。そのままパックは蓮唯ちゃんの方へ流れていった。
どうやら、今回も蓮唯ちゃんスタートらしい。
機械が明らかに贔屓してると思いながら、俺は蓮唯ちゃんの動きに注意を向けた。
「……」
「……」
「…………っ、たぁっ!」
少しの静寂を、蓮唯ちゃんの気の抜けるような可愛らしい掛け声が切り裂いた。
スマッシャーで弾かれたパックは、真っ直ぐと俺のゴールに迫ってくる。
ただ、軌道が真っ直ぐすぎて俺にはそれを止めることは容易だ。
パックをスマッシャーでテーブルに押さえ付けることで動きを止め、蓮唯ちゃんに目を向ける。
蓮唯ちゃんは対応しやすいよう、ゴールの中央にスマッシャーを置いていた。
ふむ、まぁ分かりやすい作戦だな。さてと、どこに打とうか……
数秒程思考を巡らせ、俺は左の壁に力強くパックを打った。
斜めに滑り、壁と衝突すると共に軌道変換。パックは俺の計算通りに、蓮唯ちゃんのゴールの左側へ向かい滑った。
だが、これを見逃すとは思えない。と思えばその通り。蓮唯ちゃんはしっかりと反応し、止めることなくパックを弾き返してきた。
「おっと」
虚を衝かれ危うく得点させてしまうところだったが、そこは持ち前の身体能力を活かして防いだ。
先制点は譲れない。だって俺はお兄ちゃんだもの。
「蓮唯ちゃん、今からとびきり速いの打つから、覚悟してくれよ」
「いいの? 先にそんなこと言って」
俺の忠告に、蓮唯ちゃんはムッを顔を顰める。それに対し俺は「大丈夫だ」とだけ返し構えを取る。
今から打つのは、俺の全力を込めた一撃だ。
すぅっと息を吸い込み意識を集中させ、力強く、素早くパックを打ち飛ばした。
カンッ! と音が鳴り、パックは滑らかに滑り蓮唯ちゃんのゴールへ消えた。
流石に蓮唯ちゃんも反応できず、ただポカンと口を開いている。
「……え?」
カラン、とパックが台横から出てきて、やっと蓮唯ちゃんは反応を示した。
「ふふふっ、さぁ、勝負はここからだぜ、蓮唯ちゃん」
「……むぅっ、絶対に勝ってみせるもん!」
◇妹◇
「にぃに大人気ないよぉ!」
「ははは、仕方ないさ。勝負ってのはそういうもんだ」
蓮唯ちゃんのリベンジマッチは俺の勝利で幕を閉じ、今俺たちは気ままにゲーセン内を巡って残りの時間を潰していた。
そんな中、蓮唯ちゃんは数分置きには勝負の話を掘り返しては頬を膨らませるのだ。可愛い。
「あっ、にぃに! あれやろっ!」
デート時間も残り僅かというところで、蓮唯ちゃんがやつを見付け指差した。
もう十回目。つまり俺は今日だけで千円もこいつに使っているのだ。まったく、妹の要望じゃなかったら絶対やらないよ。
二人並んで台の前に立ち、投入口に百円をポイしてスタート。
名前を記入し、少しして質問が表示される。
「『小学校の頃の思い出』。これまた面白い質問がきたなぁ」
「へー、ねぇねたちのときはどんな質問があったの?」
「それはな──ってええっ!?」
自然な会話の流れで答えそうになり、俺は驚愕の声を上げる。
なぜだ、なぜ蓮唯ちゃんは知っているんだ。と思ったが、その謎は案外簡単で、
「ねぇねたちから聞いたよー」
「そ、そうか」
まぁ茜たちが話したならいいけどさ。
「それでどんな質問があったの?」
「……ノーコメントで」
追及してくる蓮唯ちゃんにそう言い、俺は書くことがなく『何もなし』と記入した。蓮唯ちゃんは『駆けっこで一位になった』と書いていた。とても微笑ましい。
続く二問目は『今までで一番楽しかったとき』。俺は『妹と一緒にいたとき』、蓮唯ちゃんは『皆でゲームをしたとき』と記入した。
皆でゲームといえば、思い出すのはあの『ドキッ♪ イチャラブ妹ルーレット』だ。
うぅ、悪寒が。
その後も質問に答えていき、結果発表。
「『とても親密な関係。他には言えない秘密があったり? 』──って、もうこれ撤去した方がいいんじゃないのか?」
あまりの結果の酷さに、ついため息が零れる。だが蓮唯ちゃんは、頬を綻ばせ「にへへ~」と笑みを漏らしていた。可愛い。
「……っと、蓮唯ちゃん、デートの終わりの時間だ。皆のところに帰ろっか」
「うんっ。すごい楽しかったよ、ありがとねにぃに!」
「ああ」
こうして、俺たちのデートは幕を閉じたのであった。
蓮唯ちゃんの笑顔は国宝級でした。まる。
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