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44話 茜とデート♡ その1

 夜花(よるか)ちゃんと放課後デートをした翌日。土曜日。

 今日、俺は(あかね)とデートをすることになっている。

 

 俺はいつもの時間に夜花ちゃんと走り、それが終わると夜花ちゃんをマンションに送り、家に帰った。

 着替えを持ってすぐに風呂場に向かい、汗を流して風呂場を出る。

 勿論、体はちゃんと洗っている。もし汗の匂いで茜が反応したと思うと……ちょっと嫌だから。

 

 それから(かえで)ちゃんと一緒に朝食を作り、皆が席に着いてから食べ始めた。

 

 

 朝食を食べ終え、少し部屋で休憩していると、突然扉がノックされた。

 俺はベッドから起き上がり、扉を開けた。

 そこには、まだおしゃれをしていない茜が立っていた。

 まぁ、俺もまだシャツのままだけどな。

 

「お兄ちゃん、いつ出ますか?」

「そうだなぁ」

 俺は今の時間を確認する。

 午前八時か。

「それじゃ、八時半でいいか?」

「了解ですっ」

 茜はビシッと敬礼をした。

 なにこれ可愛い。

 茜が部屋を出ていったあと、俺はタンスからいつもの外出用の服を取り出した。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 八時半。

 俺は着替え終えると、茜の部屋に向かった。

 扉を二度ノックすると、中から「どうぞ」と茜の声が。

 俺は扉を開け、部屋に入る。


「お兄ちゃん、私の服、どうですか?」

 茜は部屋の中央に立つと、くるりと一回転した。

 茜が纏っているのは、黒を基調としたゴスロリのワンピースで、それに赤いリボンを上手く結んでいる。

 そして頭には赤色のカチューシャ。

 こう見ると、やっぱり茜も女の子なんだな。細かいところもちゃんと意識しているし。

 

「さぁお兄ちゃん、どうぞ感想をっ!」

 茜は赤い瞳を輝かせる。

「うん、まぁ普通に可愛いぞ。すごい似合ってるし、ホントすっげぇ可愛い」

 と褒め倒すと、茜は顔を真っ赤に染め、プルプルと震え始めた。

「お、お兄ちゃんっ、不意打ちは卑怯ですよっ!」

 と言っているが、茜は嬉しさに頬を綻ばせている。

 可愛い。

 俺は溢れ出す気持ちを表すように、茜の頭を撫でた。

 茜は更に顔を蕩けさせ、「ふへへぇ♪」とだらしない笑みを浮かべる。

 なにこの生物、すっげぇ可愛い。

 

 そう和んでいる間に時間は過ぎていき、気付けば九時を過ぎていた。

 俺と茜は慌てて家を出ると、お馴染みである駅前に向かった。


 そして駅で電車に乗り、向かうのは(かえで)ちゃんと行ったところとは逆の方向、都心部だ。

 電車に揺られること二十分程。

 お目当ての駅に着いたのか、茜は俺の手を引っ張り電車を降りると、そのまま早足で駅を出た。

 

 それから歩くこと数分。

 辺りに聳え建っているのは、どれも高い建物ばかり。

 そして、それらの半数以上にはアニメやゲームなどの広告が貼られている。

 いやぁ、すごいなぁ。

 テレビなどでは見たことあったが、実際に来るのは初めてのこの場所──秋葉原に俺はテンションを上げていた。

 それはどうやら茜も同じらしく、俺に負けないくらい目を輝かせ、建物を見上げていた。

 茜の様子に微笑んでいると、茜はおもむろに両手を挙げ、

 

「やってきました! あーきはーばらーっ!」

 と某ラノベのセリフを大声で叫んだ。

 正直、潰されかねない。あと、周りの歩行者の目が痛い。

 俺は茜の手を引っ張り、急いでその場を離れた。


 

「それじゃあお兄ちゃん、最初はどこいこっか」

 茜のいつもよりも明るい声音、そして眩しい笑顔に俺は苦笑する。

「そうだな、まずはあそこに行こうぜ」

 俺が指差したのは、全国にある某アニメショップ──アニメストだ。

 本店は秋葉原ではないのだが、ここのも十分凄いとネットで書いてあった。

 俺は茜の手を握り、アニメストへ向かって歩き始めた。

 なお、茜が恋人繋ぎにしてきたのはご愛敬だ。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 店内に入ると、俺と茜はまずラノベコーナーに立ち寄った。

 最初はグッズとか見るだろって人もいるだろうけど、俺たちはあまりグッズに興味ないからな。どっちかって言うと、ラノベのアニメスト限定特典の方が魅力的。

 

 俺は各文庫、文芸のラノベから、まだ持っていない妹モノのラノベを漁った。

 結果見付かったのは、『妹は俺への愛でできている』、『サバイバルナイフを常備している妹は嫌いですか?』、『ただいま兄を捜索中』、『引きオタ兄さんは異世界の勇者』の計四作品。

 これ以外にもあったのだが、財布と相談した結果の四つに絞られた。

 どれも面白そうで、家に帰ってからが楽しみだ。

 

 とウキウキしながら会計を終えると、茜は仁王立ちして俺を睨んでいた。

 

「ど、どうしたんだ、茜」

「どうしたもこうしたもありません。どうしてお兄ちゃんは来て早々帰ってからのことを楽しみにしてるんですか。もっと楽しみにすることがあるでしょう?」

 怒気を孕んだ低い声に、俺は気圧され堪らず「すまん」と謝った。

 

「まぁいいですけど。その分、ちゃんと楽しませてくださいね?」

 茜はその場でくるっと回ると、パチッとウィンクを決めた。

 なにこの()、すっげぇ可愛い。

 俺は茜の可愛さに悶え震えた。

 

 

 それから店内の商品を見て回り、俺たちはアニメストを後にした。

 続いて向かったのは、計六階にも及ぶ高さの、コスプレ専門店だった。

 どうも、色んなコスプレイヤーに対応するために、王道作品のモノから、マニアックなモノの衣装まで揃えているとのこと。

 

 そこで始まったのは、茜のプチコスプレショー。

 楓ちゃんのファッションショーのときのように、俺は試着室の前で待機した。

 

 茜は店内から幾つか衣装を取ってきて、試着室でそれに着替え、俺がそのコスプレを評価する。

 それの繰り返しを各階最低でも五回は行った。

 

 六階に到着する頃には、俺はもう疲れて平凡な感想しか口にできなかった。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 コスプレ専門店を出た俺たちは、近くのレストランで休憩を兼ねて昼食を摂ることにした。

 

 窓際の席に案内され、俺たちは対面して座る。

 珍しい。いつもなら近くにいたがる茜が、自分から対面して座るなんて。

 そのことに驚きながらも、俺はスマホで時刻を確認する。

 十二時手前か。結構いい時間に来たかもしれない。

 ふと窓の外を確認すると、結構な歩行者の数で、反対側の店が見えなかった。

 これは、もう少し時間が遅かったら並ぶ羽目になってたんだろうなぁ。

 俺は息を吐くと、メニュー表を眺める。

 

 ふむ、やっぱり普通のものばかりだな。まぁ普通のレストランだし、当たり前か。

 そう思いメニューを眺めていると、茜が手を伸ばし、袖をくいくいっと引っ張ってきた。

 

「ん? 決まったか?」

「お兄ちゃん、これ注文しましょう!」

 興奮気味に茜が見せてくるのは、メニュー表のドリンクの欄。

 そして茜が指差していたのは、よくカップルが注文してそうな、ストローが途中で二つに別れているアレだった。しかもご丁寧にハート型にしてある。

 その上に赤い太字で『カップル様限定!』と書かれている。俺たち、カップルじゃないだろ。

 俺はその意を伝えるために、ジト目で見つめる。

 すると茜は、朱色に染めた頬に手を当て、体を左右に揺らす。

 

「お兄ちゃん、そんなに見つめられたら興奮しちゃいますよ……っ♪」

 俺はすぐさま視線をメニュー表へ逸らした。

 明音は唇を尖らせ、膨れっ面になる。

「そんな露骨に逸らさなくてもいいじゃないですかっ」

「はははっ、ごめんごめん」

 俺は宥めるように、茜の頭を撫でた。

 すると茜はすぐに上機嫌になり、頬を綻ばせる。

「ふへへっ♪」

 茜はだらしない笑みを浮かべると、鼻歌を歌いながらメニュー表に目を向けた。

 

 それから俺たちは注文を決め、料理を待った。

 俺が注文したのはボリュームのあるナポリタン。茜はステーキを注文をした。

 そして茜が瞳を潤ませせがんでくるので、仕方なくあのカップル用のドリンクも注文した。

 

 

 茜は「お兄ちゃんの作った方が美味しいですけど」と言いながら、ステーキを食べていた。

 そう言えば、茜は肉食系なのだ。

 いや、違う。違わないけど違う。肉食系と言うのは、肉が好きでよく食べるという意味だ。けっして淫乱なわけではない。

 ……まぁ、淫乱なのかもしれないけど。だってよく迫ってくるし。

 

 それからカップル用のドリンクを二人で飲み、俺たちはレストランを後にした。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 昼食を終えた俺たちが向かったのは、少し規模の大きいペットショップだった。

 俺と茜は一緒に犬や猫、インコなどを見て回る。


「見てくださいお兄ちゃん!この犬すっごいフサフサですよ!」

「そうだな。撫で心地がよさそうだ」

 そう呟くと、茜が少し悲しそうに俺を見つめてくる。

「……私じゃダメですか?」

 くっ……! そんな捨てられた子犬みたいな目で見られたら、ダメって言えないじゃないか! ……まぁ、茜の髪も、サラサラして気持ち良いんだよな。

 俺は「ダメじゃないよ」と返すと、茜の頭を撫でた。

 

 それから茜は何故か、レジ近くにあった首輪を手に取りそれを購入した。

 店員さんは笑顔で「ワンちゃん用ですか?」と茜に訊ね、茜は「はいっ」と同じように笑顔で答えた。

 嘘吐け。犬飼ってないだろ。

 俺は後ろから、そんな茜の様子を見て苦笑を浮かべた。

 

 店を出る際、茜は背伸びをして耳元で「家に帰ったら付けてくださいね♪」と囁いた。

 そんなことはお断りだ☆

 

 

 ペットショップを出た時刻は一時半。

 まだまだ茜とのデートは続く。

この作品を読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字、改善点等がございましたら容赦なく教えてください!

この作品を読んで頂いた読者様に最大の感謝を

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