27話 体育祭前日に
ふぇぇぇぇ、執筆が思うようにできなかった……(´・ω・`)
総合評価900ありがとうございます!
ジャンル別四半期93位、重ね重ねありがとうございます!
なんやかんやあって木曜日。
金曜日から今日の木曜日まで、特に変わったことは起こらなかった。
体育祭実行委員の話し合いは順調に進んでいたらしい。(かすみんから聞いた)
なにかあったと言えば、今週始まってから、朝起きたら茜がベッドに潜り込んでいたり、久々に楓ちゃんとの逆ラッキースケベがあったり……と、本当に些細なことだ。
夜這い紛いの行為を些細と流せるようになったことは異常だと思うが、茜のことだ、この程度で騒いでたら体力が持たない。
そう言えば、誕生日以来凉ちゃんの様子がおかしいと言うか、そわそわしている気がするのだが、まぁ、特に心配することはないだろう。うん。
放課後。
俺と茜は、久しぶりにPTA研修室に来ていた。
明後日となった体育祭の最終確認や、当日の動き等を話したいらしい。
これを聞いたのは昼休みだ。
と言うか、当日まで俺たちはサポートをしなきゃならんらしい。そんなの聞いてない。
まぁ、本当に困った時だけ仕事をすればいいってことだから、まだ楽だとは思う。
「もう、明後日ですね」
「そうだな」
茜の呟きに、俺は適当に返す。
明後日かぁ、実感無いなぁ。去年もそうだったけど。
体育祭実行委員の最後の話し合いが始まったのは、俺たちが研修室に着いて十分程経ってからだ。
話し合い、と言ってももう煮詰まっており、確認程度にしかなってなかった。
そのため、今日の話し合いは二十分程度で終わった。
なんと言うか、あっという間だったな。
◇妹◇
時過ぎて夜。
俺の部屋には茜と楓ちゃんの二人が来ていた。
先に言っておくが、夜這いじゃない。…………じゃないよな?
楓ちゃんはともかく、茜が怪しい……何事も無いことを祈ろう。
それはさておき。
俺の部屋に集まったのは、体育祭のことについて話がしたかったからだ。
「私とお兄ちゃんは同じ赤組ですけど、楓さんは赤と白どっちなんですか?」
俺の膝上に座っている茜が、思い出したかのように楓ちゃんに訊ねる。
伊吹高校は、各学年一組と二組が白組。三組と四組が赤組となっている。
俺が四組、茜が三組だから、同じ赤組ということだ。ついでに、司音ちゃん、翼、奏も赤組になる。
……よくよく考えたら、いつものメンバー全員赤組じゃね? あと、白組の人全く知らない……
いや、忘れよう。敵のことはその時だけ知ってればいいさ。
「私も赤組ですよ。蓮唯も。こっちは一組、二組、三組が赤組で、四組、五組、六組が白組なんですよ」
なるほど──って、クラス多いな。伊吹高校が少ないだけか?
「なるほど、全員仲間ですね! 当日は頑張りましょう!」
茜は腕を振りそう言う。
「そうですね、頑張りましょう」
楓ちゃんはくすっと笑う。
なんと言うか、そう言う仕草ってお嬢様っぽいよな。
「ところで、体育祭の目玉種目ってなんですか?」
雑談をしていると、突然楓ちゃんが訊ねてくる。
その質問に、俺と茜は首を傾げる。
「目玉種目、か。なんだろうな?」
どれも普通だと思うけど。(コスプレ競争は例外)
俺が悩んでいると、茜がぽんっと手を叩く。なにか閃いたようだ。
「借りモノ競争です!」
借りモノ競争かぁ……確かにお題によっては盛り上がるだろうし、目玉種目なのかなぁ。
「借り物競争ですか。確かに面白そうですね!」
楓ちゃんは笑顔でそう言う。
「そう言えば、霞さんから聞いたんですが、お題に『好きな人』があるらしいですよっ」
そのお題に、俺はむせた。
待て待て待て、それってアウトじゃないか? 確かゴール後にお題を発表するんだろ? 『好きな人』を引いた場合、告白ってことになるんじゃないのか……
と考えていると、鋭い視線が二つ、俺に刺さるような感覚に襲われた。
はっと顔を上げると、茜と楓ちゃんが無言で俺を見つめていた。獲物を狙うライオンのような目で。
すかさず悪寒が走った。
だが、その悪寒もすぐに過ぎ去り、二人の視線も優しいものになっている。
大丈夫、だよな……?
ただ、誰かに確認を取るわけでもなく、俺は心の中で呟いた。
まさか、当日あんなことになるなんて。等と思わなくて済むように、フラグは絶対に立てない。俺はそんなバカじゃないからな。
◇妹◇
翌日。
ついに体育祭の前日となった。
この日はどのクラスも、誰がどの種目に出るかを決めるのだ。
うちのクラスは三、四時間目の二時間を使って決める。
そして只今三時間目が始まって十分が経過した。
この十分の間に決まった者は一人もいない。
さて、どうなるか。
「誰も挙手しないか……」
体育祭実行委員の翼が、教卓に肘を突き低い声で呟く。
大変だなぁ、実行委員は。
いつもの爽やかイケメンが困ってると、ちょっと楽しくなる。
そうニヤニヤしていると、ふと翼の目がこちらに向けられた。
そして困り果てた顔に笑みを浮かべる。まるで悪戯でも思い付いた子供のような笑みを。
しまった……と思った時には既に遅かった。
「それじゃあ、とりあえず葉雪は全部の種目に出るってことで」
「はぁっ!? ふざけんなっ! なんでそうなるんだよっ!」
俺は席を立ち、抗議の声を上げる。
そして然り気無く小宮さんは黒板の各種目の参加者の欄に俺の名前を書いていた。
ちょっとー、二人ともー? 俺になにか恨みでもあるのー?
クラスの皆は俺の方を向き、愉快そうに笑う。
「それなら~、私と翼は『三人四脚』やろっかなぁ? ねぇ、翼?」
クラスが沈黙から騒がしくなると、奏が手を上げそう提案する。
「えっ、まぁいいけど」
翼がそう答えると、小宮さんが『三人四脚』の参加者の欄に翼と奏の名前を書き入れる。
なるほど、そうなったか。
そんな騒ぎがあり、瞬く間に各種目の参加者が決まっていった。
結局、俺は全種目出ることになった。ちくせう。
◇妹◇
放課後。
今日はどの部活も活動はなく、変わりに体育祭の準備をしている。
教師の方々も、率先してテント等を倉庫から運び出している。
あの天ノ川学園と合同と言うだけあって、気合いの入れ具合が凄い。
そんな中、俺と茜、かすみんは別のことをしていた。
別のこととは、明日伊吹高校に来る天ノ川学園高等部の生徒と担当の教師、総勢七百四十人分のプログラムを作ることだ。
数が馬鹿げてる。
だが、茜が弱音を吐かずにプリントを順番に並べているのだ。俺が弱音を吐くわけにはいかない。
俺の中にある兄としてのプライドが許さない。
「うへぇ、疲れたよぉ~」
…………兄たる者、妹の前で弱音は吐けないっ! たとえ妹が弱音を吐いても!
「お兄ちゃんは凄いね、私もう疲れちゃったよ」
そう言いながらも、茜は手を止めない。
茜も普通の女子からしたら凄い方だろ。
と思っていると、茜の手の動きが鈍くなる。
「茜、頑張ったら頭撫でてやる」
そう言った途端、茜は最初の比にならない速さでプリントを並べていく。
茜の深紅の瞳は、やる気に燃えていた。
す、すごいっ! どれだけ頭撫でてほしいんだよ!
茜の仕事が速くなったお陰で、一時間程で七百四十人分のプログラムを作り終えた。
この時点で時間は六時。多分他の生徒は帰っているだろう。
だが、俺たちはまだ帰れなかった。
プログラムを作り終えた俺たちの次の仕事は、買い物だ。
来賓の方々にお出しするお茶を買わなければならない。
しかも二リットルのペットボトルが何十本も。
これも全て童心を忘れていない厳人さんの所為だ。
厳人さんが体育祭に来ると言い出し、それを聞き付けた子会社の社長やらどこかのお偉いさんが次々と伊吹高校に電話を入れてきて……もうわけ分かんない。
その全員に出す量のお茶をどう運ぶのか。それはかすみんの車だ。
今まで触れてこなかったのだが、かすみんは車の免許を持っている。
本音を言うとあんな幼女体型で車を運転できるのか心配だが、それは大丈夫なんだろう。多分。
なんせ、かすみんは毎日車で学校に来ているからな。
だが、かすみんの車はそこまで大きくない。つまり、店から学校を何往復もしなければならない。
金は問題なかった。厳人さんが責任を感じて出してくれたから。……常識外れの額を。
いや、あの人お茶買うためだけにどれだけ出してるんだよ。いくらなんでも十桁は出し過ぎだろ。当人曰く『楓たちのお小遣いと同じだろ』と。……楓ちゃんたちって、もしかしなくても俺より金持ち?
流石は世界を牛耳るとまで言われる超大企業の社長とその娘だ。もう頭痛い。
俺が羽真家の財力に頭を痛めている間に、かすみんは車を何往復もさせ、七時過ぎに買い終えた。
体育祭が終わったら厳人さんに文句の一つでも言ってやりたい。
仕事を終えた頃には、茜色の空はもう紺色のように暗くなっていた。
流石にここまで暗くなっては、歩いて帰るのは危険だ。とかすみんが言うので、俺と茜はかすみんの車で家の前まで送ってもらった。
「ありがとな、かすみん」
「ありがとうございます、霞さん」
俺と茜は車を降りると、かすみんに礼を言う。
「いいさ。こんな遅くまで付き合わせて悪かったな。それじゃあ、今日は早く寝ろよ? 明日は体育祭なんだから」
「おう。かすみんも、今日は早く寝ろよ? クマとかつくってきたらもう許さねぇからな」
そう言うと、かすみんはふっと笑う。
「分かってる。それじゃあな、おやすみ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
俺と茜は遠ざかっていく車を見送り、家に入った。
玄関には目尻に涙を溜め、顔を真っ赤にした楓ちゃんが待っていた。
その姿を見て思い出す。
連絡するの忘れてた……
俺と茜は帰るなり、小一時間程楓ちゃんに説教をくらった。
俺は説教を受けている間、普段見ることのできない取り乱した楓ちゃんに頬を緩めた。
こう言う楓ちゃんも可愛いなぁ。と。
なお、にやけていたのがバレて、食後にまたお説教を受けたのは別の話だ。
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