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25話 凉ちゃんの誕生日

凉ちゃん可愛いっ!

今回は可愛く書けたと思うっ!

 木曜日。今日は(すず)ちゃんの誕生日。

 夕食の席で誕生日パーティーをするらしい。

 (あかね)の時は慌ただしかったけどな。(俺だけが)

 (かえで)ちゃんは物凄く張り切っていた。朝こっそり訊いたが、ケーキを作るらしい。

 ケーキか、中学二年の時に作って以来だな、上手く作れるかな?

 若干不安になったが、まぁ大丈夫だろう。俺だし。

 

 朝食を食べ終え、俺と茜は先に家を出る。

 本来なら光月(みつき)朝日(あさひ)と一緒に行きたかったのだが、かすみんに『朝から作業がしたい。いつもより早く登校してくれ』と言われているので、仕方なく二人っきりで登校することにした。

 忌々しい体育祭、もし楓ちゃんたちと一緒にできなかったら今からボイコットしてた。ホントに。

 

 

 俺と茜は学校に着くと、真っ先に職員室に向かった。

 勿論、かすみんを呼びに行くのだ。

 

「失礼します、かすみ──飛矢佐(とびやさ)先生はいますか?」

 俺は職員室の扉を叩き、奥まで聞こえるように言う。

 かすみんは自らの席で、なにやら書類とにらめっこをしていた。

 が、俺に気付くと、書類をファイルに綴じこちらに向かってくる。

 

「おう、それじゃあ研修室行くぞ」

 そう言い、かすみんはすたこらと職員室を出ていく。

 俺は職員室の扉を閉じて、茜と共にかすみんの後を追った。

 

 四階、PTA研修室。

 そこには既に多くの書類が机の上に積まれていた。

 かすみんは事前に用意していたであろうパソコンを開くと、早速キーボードを打ち始める。

 タタタ、と軽い音が、速く、途切れることなく部屋に響く。

 流石、仕事のできる大人は凄いや。

 かすみんの姿に感心していると、茜は席に座り、書類に目を通していく。

 俺もそれに倣い、茜の隣の席に座り書類を一枚一枚確認していく。

 

 それから暫くして、予鈴が鳴る。

 俺たちはそれと同時に作業を止め、研修室を出る。

 

「それじゃあ、昼休み、いつものところな」

 かすみんはそう言うと、スタスタと階段を降りていった。

 

 俺は茜の頭を撫でて、ため息を吐く。

 はぁ、朝っぱらからこんなことしなきゃならんなんて、面倒過ぎる……

「それじゃあ、教室に行くか」

 俺は気を改めてそう言う。

「そうですね」

 茜は俺の手を物欲しそうに見つめながら頷く。

「……昼休みに撫でてやるから」

 そう言うと、茜は目を輝かせる。

 なんというか、可愛いなぁ。

 そう思いながら、俺は教室に向かった。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 午前の授業は瞬く間に過ぎていき、あっという間に昼休み。

 俺は(つばさ)(かなで)にかすみんによばれていることを伝え、茜の待つ一年三組の教室に向かった。

 

 教室では、茜と司音(しのん)ちゃんが仲良く駄弁っていた。

 そう言えば、茜が俺以外と話してるところって、あまり見ないな。

 ある意味珍しいモノが見れたと思っていると、茜がこちらに気付き大きく手を振る。

 

「おーにーいーちゃーんー」

 周りの一年生は苦笑いを浮かべ(男子は俺に嫉妬の籠った視線を向けている)、司音ちゃんは飼い主を見付けた子犬のような視線を向けてくる。

 なんなんだこのクラス……

 と、そうしている間に茜は目の前まで迫っていた。

 んっ? このままじゃ突撃されるんじゃ?

 茜の速さから、寸前で止まるということはあり得なさそうだ。

 俺は腰を若干低くし茜を受け止める構えを取る。

「お兄ちゃんっ!」

 案の定、茜は勢いを抑えることなく俺に衝突した。

 俺は茜を受け止めると、優しく抱き締める。

 あぁ、落ち着くなぁ。

「さぁお兄ちゃん、行きましょう!」

 俺は「おう」と返事をすると、茜と共にかすみんの待つ『旧生徒指導室』に向かった。

 

 

 

 ──『旧生徒指導室』

 

 俺と茜は今、昼食を食べながらかすみんの説明を聞いていた。

 と言っても、とても大雑把な説明で、する必要あるか? と思う程のものだった。

 多分、茜は右から左へと聞き流しているだろう。

 俺はまぁ、一応覚えておく。後々必要になるかもしれないし。

 

 数分で説明は終わり、かすみんも昼食を食べ始める。コンビニ弁当だった。

 前は確か自分で作ってるとか言ってた筈なんだが。

 俺は気になり、かすみんに訊ねる。

「なぁ、かすみん、なんでコンビニ弁当なんだ?」

「……最近夜遅くまで仕事してて、朝起きれないんだよ」

 なるほど、最近体育祭のことで忙しいもんな。

 俺は納得すると、かすみんに提案する。

「なぁ、よかったら俺がかすみんの弁当作ろうか?」

 そう言うと、かすみんは驚き目を見開く。

「まさか、葉雪(はゆき)に昼飯を作ってもらう日が来るなんてな」

「嫌なら作らないけど?」

「作ってくださいお願いします」

 なんと、かすみんは机に頭をぶつける勢いで頭を下げた。

「わ、分かったよ。リクエストはあるか?」

「いや、同じで大丈夫だ。…………その方がお揃いって感じで良いし……」

「ん? なんか言ったか?」

「いや、なんでもない。それより早く食うぞ。昼休みが終わる」

 そう言うと、かすみんは流し込むように弁当を食べる。

 

 それから少しして全員食べ終わり、残りの時間は他愛もない雑談をしていた。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 放課後。

 今日も今日とて研修室で体育祭についての話し合いをした。

 だが、昨日から特に進んでおらず、このままで大丈夫か? と心配になる程だった。

 まぁ、昨日より早く終われてよかったけど。

 

 

「葉雪、今日もお疲れ」

 話し合いが終わり、研修室を出たところで翼が声を掛けてくる。

「翼もな。つっても今日はそんな進んでないけど」

 そう言うと、翼は苦笑いを浮かべる。

「仕方ないさ。なんせ今年の体育祭は特殊だからな」

 その言葉に、かすみんがうんうんと頷く。

「そうだな。今年はホントに特殊だ。なぁ葉雪?」

 なにやら意味深な笑みを浮かべこちらに振ってくるので、俺は目を逸らしてそれを流す。

「それじゃあ、今日は大切な用があるから、俺と茜は急いで帰るわ」

「さよならです、翼さん、(かすみ)さん」

 茜は礼儀正しく二人に挨拶をする。

「あぁ、さようなら。それじゃあ俺は部活に顔出すかな」

「はぁ、今日も仕事が……」

 二人はそう言うと、階を降りていった。

 他の者も既に降りており、ここにいるのは俺と茜だけ。

 だから、俺は疲れを癒す意味で茜の頭を撫でた。


「んっ~♪」

 茜は気持ち良さそうに表情を緩め、声を漏らす。

 それから少しして、俺と茜は階を降り、学校を後にした。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 帰宅後、俺はすぐに私服に着替えると、リビングに向かった。

 

「あ、お帰りなさい、葉雪にぃさん」

 台所では、既に楓ちゃんが今日の夕飯の準備を始めていた。

「ただいま。準備早いね」

「はい、なんたって、今日は凉の誕生日ですから」

 楓ちゃんは満面の笑みで答える。

 こう見ると、楓ちゃんは立派に〝お姉ちゃん〟をしてるなぁ。

 俺は感心しながら、楓ちゃんの隣に立つ。

 手を洗い、俺は夕飯を作り始めた。

 

 

 夕飯のおかずは大半を作り終え、今は茜も手伝いケーキを作っていた。

 作るのはショートケーキ。凉ちゃんの好物なのだ。

 茜は「腕がぁぁ~」と情けない声を上げながら、クリームを泡立てる。

 楓ちゃんはスポンジを焼き上げ、形を整えている。

 俺はと言うと、イチゴをきれいに真っ二つに切り、それを皿に移す。そしてまたイチゴを切る、と単調な作業をしていた。

 

 それから二十分程。

 

「完成、しました!」

 楓ちゃんは嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。

 その度に長い白髪がふわりと舞う。

「それじゃあ冷蔵庫に入れるよ」

 そう言うと、俺はケーキを乗せた皿を冷蔵庫に入れる。


「そろそろ、時間ですかね?」

 楓ちゃんはそう言い首をこてっと傾げる。

 俺はポケットからスマホを取り出し時間を確認する。

「六時五十分か。いい頃合いだな」

「そうですね、それじゃあ私はお父様とお母様を呼んでくるので、葉雪にぃさんは蓮唯(れんゆい)と凉を呼んできてください」 

 そう言い、楓ちゃんはリビングを出ていった。

「茜、悪いけど俺の部屋からプレゼントを取ってきてくれないか?」

 そう言うと、茜はにこっと笑う。

「はい、分かりました。丁度私も部屋に取りに行こうと思ってましたし」

 そう言い、茜は小走りでリビングを出ていった。

 俺はテーブルに食器を並べると、蓮唯ちゃんと凉ちゃんを呼びに、二人の部屋に向かった。

 

 

 

 夕食の席に羽真(はねま)家の面々と俺、茜、光月、朝日が揃い、凉ちゃんの誕生日パーティーが始まった。

 

「凉(ちゃん)! 誕生日おめでとう(ございます)っ!」

 

 皆で声を揃え、凉ちゃんの誕生日を祝う。

 凉は頬を赤く染めながら、嬉しそうに微笑む。

「あ、ありがとうございますっ」

 凉ちゃんは噛まずに言えたことにホッと胸を撫で下ろす。

 その姿にほっこりとした気持ちになる。

「さて、それじゃあ食べ始めようか」

 厳人(げんと)さんはそう言うと、早速唐揚げを幾つか皿に移し、その内の一つを大きく一口で食べた。

「うん、旨いな。これはどっちが作ったんだ?」 

 厳人さんは俺と楓ちゃんを交互に見て訊ねてくる。

「私が作りました」

「そうか、楓も料理が上手くなったな」

「はいっ、これも葉雪にぃさんのお陰です」

 そう言い、楓ちゃんは笑顔を向けてくる。

 可愛い。

 と、そうしてる間に皆どんどん自分の皿に各々の好きなものを取り、美味しそうに食べていく。


「凉ちゃん、美味しい?」

 そう訊ねると、凉ちゃんはゴクッとなにかを飲み込み、コクコクと頷く。

「すごい美味しいですっ、にぃさま、ねぇさま、ありがとうございますっ」

 俺と楓ちゃんの愛情たっぷりの料理は、満足頂けたようだ。

 だが、それだけじゃないぞ。

 俺は心の中で笑いながら、一つ、また一つとおかずを口に運んでいった。

 

 

 夕食を食べ終わり、一時の休憩。

 さぁ、ここからが本番だっ!

 と意気込み、俺は冷蔵庫からケーキを取り出しテーブルの中央に置いた。

 

「わぁぁぁぁっ!」

 

 凉ちゃんはケーキを見ると、目を輝かせ口をパクパクと動かしていた。

 なにこれ可愛い。

 俺は台所から包丁を持ってきて、ケーキを切り分ける。

 そのうち、クリームとイチゴの多いところを凉ちゃんの皿(新しいやつ)に移した。

 

「いただきますっ」

 凉ちゃんはすぐにフォークを持ってケーキを食べ始めた。

 そんなに急がなくても、ケーキは逃げないよ。

「ふぁぁぁっ! すごい甘くて美味しいですっ」

 凉ちゃんは目を輝かせそう言う。

 もう、凉ちゃんぶっ壊れだ。

 

「確かに、甘くて美味しいですね。頑張った甲斐がありました」

 茜は頬に手をやりそう言う。

「「おいしー」」

 光月と朝日は、口の回りにクリームを付けながらそう言う。

「美味しいねっ」

 蓮唯ちゃんも、少し興奮気味に感想を言いケーキを一口、また一口と口に運ぶ。

 

 俺と楓ちゃんは顔を合わせ、くすっと笑った。

 いやぁ、喜んでもらってよかった。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 ケーキを食べ終わった後、皆それぞれ凉ちゃんにプレゼントを渡した。

 熊のぬいぐるみを渡すと、凉ちゃんはそれを抱き締め何度も「ありがとうございますっ」と言ってきた。本当に嬉しそうだった。

 他の皆もなにか渡していたが、俺はすぐに洗い物をし始めたので中身は分からなかった。

 

 それから茜、光月、朝日、楓ちゃん、蓮唯ちゃんの五人は風呂に行ってしまった。

 何故凉ちゃんは残っているのか。それは、凉ちゃんが「にぃさまと一緒に入りたい、です……っ」と言ったからだ。

 茜は「誕生日ですもんね……」と渋々承諾した。

 

 俺は一度部屋に戻ると、寝間着を持ってリビングに戻った。

 リビングに凉ちゃんの姿はなく、俺と同じように着替えを取りに行ったようだ。

 少しして、凉ちゃんは水色のパジャマと白色の下着を持ってリビングに戻ってきた。

 やんわりと下着が見えていることを伝えると、凉ちゃんは顔を真っ赤にして「ふゅぅぅぅぅ~っ!」と声を上げた。 

 恥ずかしがる凉ちゃんも可愛い。

 

 それから更に十分程経ち、茜たちが戻ってきた。

 俺と凉ちゃんは二人で脱衣所に向かい、俺が先に風呂に入った。

 

 ガラガラガラ、と風呂場の扉が開く。

 入ってきたのは一糸纏わぬ姿の凉ちゃんだった。

 俺は必死に逸らそうと頑張りながらも、どうしても凉ちゃんの方を見てしまった。

 凉ちゃんは俺の視線に気付き、体をうねらせる。

 

 少しして落ち着いたのか、凉ちゃんは俺の元にやってくる。


「そ、それじゃあ、お願いします……」

 俺は「おう」と返し、手にシャンプーを垂らす。

 ほんの少し泡立て、凉ちゃんの水色の髪を洗い始めた。

「んっ、ひゅぅぅ~」

 手を、指を動かす度に、凉ちゃんの口から声が漏れる。

 痛くはないようだ。

 ゆっくり丁寧に髪を洗い、シャワーで泡を洗い流す。


 髪を洗い終えると、凉ちゃんがゴクッと息を呑んだ。

 多分、覚悟を決めたのだろう。

 俺は手にボディーソープ(・・・・・・)を垂らすと、凉ちゃんの背中に押し付けた。

 

「ひゃうっ!」

 

 凉ちゃんは驚き、おかしな声を上げる。

「ご、ごめんっ」

 俺は咄嗟に謝る。

「だ、大丈夫です……つ、続けてください」

 そう言われ、俺はゆっくりと手を動かす。

「んっ、はぅぁぁぁっ」

 俺が手を這わす度に、凉ちゃんは先程とは違った声を漏らす。 

 

「気持ち、良い、です」

 凉ちゃんは途切れ途切れにそう言う。

 なんだろう、すごいイケナイことをしてる気分だ……

 俺は罪悪感と戦いながら、凉ちゃんの体を洗った。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 風呂上がり、部屋には俺と凉ちゃんの二人がいた。

 どうやら、もう一つお願いがあるらしい。

 

「それで、お願いって?」

 凉ちゃんに訊ねると、凉ちゃんは頬を朱色に染めながら口を開く。

「その、キスして、一緒に寝たい……です」

 一瞬イケナイことが脳裏を過ったが、俺はそれを殴り捨て、頷く。

「分かったよ」

 俺はそう言い、凉ちゃんを手招く。

 凉ちゃんはゆっくりと近付いてきて、そして抱き付いてきた。

 俺は部屋の電気を消すと、凉ちゃんを抱き締めたままベッドに倒れ混んだ。

 

「凉ちゃん……」

「にぃさま、んっ」

 俺は優しく、凉ちゃんの唇にキスをした。

「誕生日、おめでとう」

「ありがとうございます、にぃさま。おやすみなさいです」

 そう言い、凉ちゃんは目を閉じた。

 少しして凉ちゃんの可愛らしい寝息が聞こえてくる。

 俺はその寝息を子守唄にし、眠りに就いた。

 

 

 

 

この作品を読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字、改善点等がございましたら容赦なく教えてください!

この作品を読んで頂いた読者様に最大の感謝を

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