第80話 反政府組織
「問題はどうやって宮廷に侵入するかだな」
アストリアは思案する。
フィーネルさん曰く、宮廷は広く、さらに衛兵も市中の倍いるらしい。
まさに鼠1匹入れない鉄壁の要塞といった風らしい。
しかも、“神”がいる社は、宮廷の奥の奥。
例え闇夜に紛れても、見つからずにたどり着けるのは難しい。
「僕が【時間停止】させて、一気に社の奥に忍び込みましょうか?」
僕が考えを伝える。
だが、アストリアは首を振った。
「確実にたどり着けるだろうが、【時間停止】は魔力を食うのだろう。忘れてはいないか。社の奥で“神”を解放しなければならないんだぞ、君は。それにイレギュラーも十分考えられる。君だけ孤立し、封印が解けなくなるという可能性もある」
【時間停止】は万能だ。
だが、その中で動けるのは、僕だけしかいない。
あのゲヴァルドも、サリアも時間の停止からは逃れられていない。
アストリアの言うとおり、時間を停止させた後で僕が力つき、宮廷に孤立する可能性は捨てきれない。
僕の影に隠れているサリアも、果たしてその時助けてくれるか何も保証はなかった。
「国と戦うというのに、圧倒的に戦力が足りない。さすがに君と私だけでは……」
「ソロンさんに協力してもらうのはどうでしょうか? ソロンさんなら事情を話せば、理解を得られるかもしれません」
「いや……。この件に冒険者を巻き込まない方がいい。彼らはこの国の内情とは無縁の人間だ」
「そうですね。お2人に協力を依頼したわたくしが言うのもなんですが、無関係な人を巻き込むのは……」
確かにそうだな。
ソロンさんたちは単なる冒険者だ。
その生活を壊すわけにはいかない。
「宮廷に協力者はいないのか?」
「いないわけではありません。しかし、ごくわずかです。その方たちも、今はどうしているか……」
「期待できそうにないか……」
「あの……」
「なんですか、フィーネルさん」
「あまり気乗りはしないのですが、1つだけわたくしたちに協力してくれる組織があります」
「組織?」
「反神王国同盟です」
「はんしんおうこくどうめい?」
僕はつい鸚鵡返しに質問する。
反応したのは、アストリアだった。
「レジスタンスだな。打倒カリビア神王国を掲げた獣人の反政府組織だ。昔、エルフと戦った獣人の軍人で構成されると聞いている。まだ残っているのだな」
「はい。実は、わたくしが預かっている子どもたちは、その反政府組織の親族のお子さんなのです」
「「えええええええええええ??」」
アストリアと僕は同時に大声を上げてしまった。
その声は伽藍堂のアパートメントにこだまする。
「国の“神和”が……。反政府組織と繋がっているなんて」
「ご、ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったのですが……」
初めは神都にいた子どもを預かるだけだった。
だが、その中の1人に反政府組織の子どもが紛れていて、本人たちと接触を持つようになったという。
「彼らは政府に追われる身です。子どもを連れて逃げるわけにはいかない。そこでわたくしに預けることにしたようです」
「エルフの実質最高位に預ける方も預ける方だが……」
「預かる方も預かる方だね」
さすがに唖然として、変な笑い声を漏らしてしまった。
アストリアは話を戻す。
「だが、会ってみる価値はある。反政府組織なら宮廷に侵入する何か良い知恵を出してくれるかもしれない」
「しかし、彼らと協力すれば。あなた方は間違いなく国に刃を向けることになりますよ」
「今だって大して変わらないじゃないですか」
「そ、それはそうですが……」
フィーネルさんは俯く。
アストリアと同様で、責任感が強い人なのだろう。
「“神和”様……。預言をし、私たちをここに導いたのは、あなたです。どうか自信を持っていただきたい」
それに反政府組織に協力するわけじゃない。
僕も武力闘争だけでこの国が変わると思っていないしね。
そんなことをすれば、フィーネルさんを殺しに来た暗殺者や“王”と同類になってしまう。
確かに無血で国を変える事は難しいだろう。
でも、無駄に血は流れて欲しくない。
「ちょっと知恵を拝借しにいくだけですから」
「ユーリさん……。アストリアさん……」
「わわ!」
「おお!」
フィーネルさんは僕とアストリアを同時に抱きしめる。
「あなた方で本当に良かった……。どうかお願いします。この国を救ってください」
フィーネルさんはぽろぽろと涙を流した。
責任感の強さとエルフ。
少し泣き虫なところ。
誰かさんとそっくりだ。
それとも、エルフってみんな泣き虫なんだろうか。
本日はここまでです。
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