第85話
今回はグロ注意と共に少々性的なものを思わせる描写もあります。
苦手な方はご注意を。
「チリト。侵入者の様子は?」
「はい。第2階層への侵入者は6名。平均レベルは7。編成としてはタンカー、物理アタッカー、スカウト、回復、補助、魔法アタッカーで、魔法使いは風特化です。実力としては8体編成の泥兵士部隊を退けています。現在地は第1階層と第2階層の境目ですね。」
俺はチリトの報告を受けてどう戦うべきかを考える。
「分かった。それならば、俺が直接出るとしよう。久しぶりに戦いたいしな。」
「分かりました。」
そして、俺は第1階層に移動した。
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「お前らが侵入者か。」
俺は第1階層で沼地に膝まで浸かった姿を見せつつ侵入者たちに話しかける。
「貴様…何者だ?」
侵入者PTの先頭。メイスに盾、それにフルプレートアーマーを装備した重戦士の人間が俺に問いかけてくる。
しかし、あの恰好でよく沼地を移動できるもんだな。あっ、後衛の補助か魔法使いが手助けしてんのかな。
まあいい、質問には答えてやるべきだな。
「俺か?俺の名は『蝕む黒の霧王』。ここ『白霧と黒沼の森』の支配者さ。」
俺は見るからに魔王と言った様子を見せつけて言う。
そして俺の言葉に侵入者PTの緊張の度合いが一気に増す。
「お前が魔王…。そうか、ならばここで倒してやる!」
「≪敏捷強化≫≪筋力強化≫!」
「≪振り下ろし≫!!」
侵入者PTの一人。巨大な剣を持った男が補助役の強化スキルを受けて勢いよく突っ込んできて俺を頭から真っ二つにする。
「待って!?そいつは本物じゃない!」
「何!?」
が、斥候役の言うとおり切られた俺は本物じゃない。≪幻惑の霧≫で生み出された偽物だ。
さて、無闇に突っ込んできた報いは受けてもらおう。
「≪尖水柱≫」
「ヤバい!≪引き寄せ≫!」
「ガアッ!!」
俺の放った≪尖水柱≫が巨大剣の男を真っ二つにしようと足元から勢いよく突き上がる。が、後衛の魔法使いが当たる直前にスキルを使って自分の側に巨大剣の男を引き寄せることで直撃は免れる。尤も右腕は完全にもげたが。
「治します!≪治癒≫!」
「グッ…うっ…」
「ほう。中々の回復力だな。」
回復役の女が巨大剣の男のもげた右腕に≪治癒≫を使い、一瞬にして止血する。失われた生命力も幾分かは戻っているようだ。
「敵の本体はどこに居る!」
「分からない!さっきから探ってはいるんだけど何か妙な力で阻害されてる!」
重戦士が斥候役に俺の位置を聞くが斥候役は分からないと返す。まあ当たり前だな。なにせ今の俺は霧状態であり、侵入者PTを全方位から囲っているわけだし。
「ちっ、それなら『こっちに来い』!」
重戦士の男が俺に対して恐らくは挑発系と思われるスキルを用いる。が、甘いな。俺の精神の前では人間が行う挑発程度は無意味だ。
さて、ガンガンと攻めさせてもらいますかね。
「そんなもの効かんよ。では行くぞ。≪霧爆≫」
「「「!!?」」」
俺はPTの中心部に向かって≪霧爆≫を放つ。そして同時に無詠唱で≪幻惑の霧≫とを発動しとある連中を呼び寄せる。
「っつこれは!?」「あっ…ぐっ…」「大丈夫!?」
「くそ!やられた!」「何だこれは!?」
「全員動かないで!魔力を持った者の数が倍近く増えてる!!」
俺は侵入者PTに≪幻惑の霧≫によって泥人形、泥兵士、泥魔法使いの姿をランダムに重ねる。そしてそれと同時に本物の泥人形部隊を呼び寄せて、誰が誰なのかを分からなくする。
当然この状況に侵入者PTは身動き一つ取れなくなる。
まっ、最悪同士討ちをすることになるしな。
「ふふふふふ。動かなくていいのか?≪尖水柱≫」
「ガアアアアアアアア!!」
俺はうずくまる巨大剣の男の下から≪尖水柱≫を生み出して止めを刺す。
「きっさまあああああああ!!」
重戦士が俺の声がした方に向かって走り出す。まあ声がする以上は当然そっちに俺が居ると思うだろう。それにそちらには実際俺の姿もあるしな。
尤も、
「ま…グフッ…」「あっ…?」
重戦士のメイスによって俺の頭が潰れる。
が、一瞬の間の後俺の姿は虚空に消え、後に残るのは頭にメイスが食い込んだ魔法使いの死体。そして重戦士は理解する。自分が今何をしたのかを。
「あっ…あ、あ、あああああぁぁぁぁぁ!!あ…」
重戦士は絶叫を上げる。そして、その隙をついて泥兵士の一体が重戦士の鎧の隙間から短剣を刺し込んで殺す。
これで残りは斥候、回復、補助の三人。
既に回復と補助の二人は身をすくませて動けなくなっている。斥候の一人は一発逆転を狙っているのか俺の居場所を必死に探っている。
さて、何故にこの三人を残したのか。まあ理由は単純だわな。この三人は女の子。つまりはナニ目的です。ただ霧人にする気はないので使い潰すけど。
というわけで、
「さて、勝敗は決したな。」
俺は泥兵士たちに命じて三人を拘束しようとするが、補助と回復の二人は怯えから体を動かせず素直に捕まったのに対して斥候は必死の抵抗を見せて逃げようとする。
「ほう。頑張るな。」
「当然よ!こんなところで死ぬつもりなんて無いわ!」
死ぬつもりは無い。か。ならもう少し遊んでやるか。
ちなみにこの間に捕まえた二人には封技の鉄枷Ⅰを付けて完全に拘束。懲罰房の方に運んである。多少暴れられたから自殺防止も含めて猿轡も咬ませたけどな。
「では、これから逃れられたら貴様だけは外に逃がしてやるとしよう。」
「え?」
俺は斥候役の後ろで手だけを実体化させる。
「『幻想の大地より湧き立ちし黒き死の水。それは凍てついては廻り、廻りては凍てつく。』」
斥候役の身体は俺の放つ莫大な魔力量に中てられ、声も出せずに震えている。
「『為す形は剣。断つは現実。さあ見るがいい聞くがいい感じるがいい。幻想が現実に換わるその時を。アウタースキル・クロキリノダチ』」
俺の手に斥候役の体よりも遥かに大きい氷の野太刀が生み出される。それはクロキリノコと違い凹凸はほとんど無く、刀身は黒い氷で出来ていて中では黒い水が高速で循環している。なので外見に関しては一般的に美しいと言っていい形をしているだろう。
だが、この野太刀は触れたもの全てを凍らせて砕くことが出来る力を秘めており、その力は人の身では絶望としか感じないだろう。現に斥候役の身体は既に震える事すら止めてしまっている。
「では行くぞ。」
俺はクロキリノダチを振り下ろす。
そして目前に差し迫った死の気配から少しでも逃れるためなのか斥候役の少女は全力で前方の沼地に飛び、その右足の親指の先端をわずかにクロキリノダチは傷つける。
「はあっはあ…避け…あああああああ!!?」
だが、その僅かでさえクロキリノダチの力の前には致命的であり、少女の右足と左足の一部は瞬く間に凍り、そして砕け散る。
「がっ…ひっ…あぐっ…」
少女の体はその右足の有った場所から伝わってくる痛みと寒さからビクビクと震えている。このまま放置すれば長くは持たないだろうし、そもそもこの傷では外に出るのも無理だろう。
「ふむ。すまないな。当たれば確実に殺せると思っていたのだが、流石は現時点では高位に属する冒険者だ。」
「ヒッ…アッ…」
俺は少女の首根っこを掴んで持ち上げる。全身泥まみれで、顔は恐怖に歪んでいるがそれなり。正直、ダンジョン何てものには来ないで、どこかの片田舎で平和に暮らしていた方がよほど合っている気もする。
「さて、約束では今の俺の攻撃から逃れられたら外に出してやる事だったが、実際には完全には逃れられなかった。そしてその傷では外に放り出してやっても長くは持たんだろうな。」
「うっ…ぐっ…」
「となればこちらで命が助かる程度には治療して、治療費を体で払った後に外に出してやるのが適当か。」
「あっ…あっ…」
俺は嫌らしい笑みを浮かべながら話しかける。そして少女は身体で払うの意味を勘づいてしまったのか先程よりも遥かに怯えている。
「心配するな。命だけは助けてやる。」
そして俺は叫び声を上げることも出来なくなった少女を連れてその場から去っていった。
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とあるPTが『白霧と黒沼の森』に突入してから数週間後。
そのPTのメンバーの一人が旧入口(元第1階層の入り口)の近くで発見される。
発見された少女は右足の全てと左足の一部を失っていたが、命に別条はなかった。が、中で何があったのかは分からないが少女はまともに喋ることも出来ず、雲や霧に対して異常な怯えを見せるようになっていた。
その後、この少女がどうなったのかは不明である。
なんでクロキリはよくクズ化するのやら……クズクロキリだからしょうがないかもねw
06/04 誤字訂正




