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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
4:未来は黒い霧の中で定まらぬ

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第154話

 クロキリが魔神の所に向かっていった後、私はリョウお嬢様のダンジョン『霧命の社』を訪ねていました。


「お久しぶりです。リョウお嬢様。」

「久しぶりですわね。イチコ。」

 リョウお嬢様がダンジョンの奥からゆっくりと出てきます。

 その姿はかつて『霧人』だった頃とは違い、純白の髪の毛に赤い目。それにゆったりとした服装に変わっています。


「それで今日は何の用ですの?」

「はい。実は……」

 私はリョウお嬢様にクロキリが魔神に挑みに行った事。それから何故私が付いていかなかったかの理由を話します。


「それで今日リョウお嬢様の下を訪ねたのはリョウお嬢様に頼みたいことがあるからです。」

「話してみなさい。」

 リョウお嬢様の固有スキル≪全ての命を導く者≫。それは強力な回復と指揮の効果を併せ持つスキルであり、回復ならば死に瀕した者の命をすくい上げるほどの力を有し、指揮の効果ならば死者も生者も関係なしにリョウお嬢様の為に働かせる事が出来ます。

 そして今回、私はクロキリと魔神の戦いが終わった後に、帰ってきたクロキリの治療をリョウお嬢様に頼みに来ました。


 なにせ相手は魔神です。例えクロキリが勝っても無傷と言うわけにはいかないでしょうし、傷のレベルによっては『白霧と黒沼の森』に居る治療スキル持ちだけで対応できるとは限りません。


 そしてそこまでリョウお嬢様に話したら……


「分かりましたわ。条件付きですけど怪我の治療そのものは受けさせていただきますわ。」

「条件ですか。」

 私は多少身を固くします。リョウお嬢様の事ですからそこまで無茶な頼みはしないでしょうが、それでも不安になります。


「イチコ。クロキリに加勢しに行きなさい。」

「えっ、でもお嬢様。私はクロキリから……!?」

「クロキリの事情何て関係ありませんわ。それに本心ではイチコ。貴方も行きたいはずですわよ。」

 それは……確かにそうですが……しかし、私の実力では足手まといになるからこそクロキリは私を置いていったわけですし……。


「心配しなくても対策はありますわよ。イズミ。」

「イチコお姉ちゃん久しぶり。」

 リョウお嬢様の呼びかけに答えるようにイズミが奥から出てきます。


「イズミ!?いつの間に戻ってきていたのですか!?」

「ついこの間だよ。なんか嫌な予感がしたから。帰ってきたの。」

 イズミは朗らかな笑顔をこちらに向けながらそう言ってきます。


「そう……ですか。それで対策と言うのは……?」

「詳細は企業秘密だけど、魔神の精神干渉を退ける事と特別な事を二つぐらい起こせるようにするぐらいなら問題なくできるよ。」

 とてもいい笑顔を浮かべながらイズミは胸を張ります。


「だから後はイチコお姉ちゃん次第。現世でクロキリが帰ってくるまで待ち続けてやきもきしているか、後を追って一緒に魔神を討伐するか。そう言う話だよ。」

「私……次第……。」

 私は考えます。仮にここで私が向かわなかった場合クロキリは何事も無く魔神に勝てるでしょうか?私が向かえばクロキリは無事に魔神に勝てるようになるでしょうか?

 ……。ここで悩む必要はありませんね。足手まといになると判断したならば逃げればいいんです。役に立てるなら役に立てばいいんです。けれど、その場に行かなければどちらの選択肢も選べません。


 私はイズミをまっすぐ見つめます。


「イチコお姉ちゃんはさ、彼の事をどう思っているの?もし私が考えている通りなら迷う必要なんてないよ?」

 クロキリの事をどう思っているか?

 今更そんなの問われるまでもありません。

 私はクロキリの事を……


「イズミ。魔神への対抗策があると言うのならそれを私に教えてください。私はクロキリを助けたいです。」

 愛していますから。


「分かったよ。」

 イズミが私の手を握って何かの力を私に流し込んできます。

 恐らくこれがイズミの言う所の魔神への対抗策なのでしょう。


「じゃあ行ってらっしゃい。もう戦いは始まってるから急いだ方がいいよ。」

「はい。」

 そして私はクロキリを助け出すために駆け出しました。



■■■■■



「それで貴方は一体何者ですの?」

「何の話かな?リョウ姉ちゃん。」

 私はイチコが去っていった後でイズミの姿をした何者かに声をかけます。


「数日前にイズミはアメリカ大陸の方に居ることが私を含めたこの国の六魔王の会談によって確認されています。なので現時点でここに居るには『超長距離転移陣』でも使わなければいけません。ですが、私の記憶が確かなら最後に『超長距離転移陣』が展開されたのは2週間前。物理的にありえませんわ。」

「リョウ姉ちゃんの知らない未知のスキルを使っただけかもよ?」

「そうかもしれませんわね。けれどクロキリの事で頭がいっぱいだったイチコはともかく私の目は誤魔化せませんわ。」

「?」

「明らかに言葉遣いが違いますわ。」

 私の指摘に何者かはイズミなら絶対に浮かべない様な狂気を秘めた笑みを浮かべます。


「いやはや、わざとやったとは言え流石にバレるか。まあ心配しなくても大丈夫さ。私がこの世界に干渉するのはここまで。贋作(・・)を打ち倒すのはあの二人に任せるさ。」

「贋……作……?」

 あの魔神を贋作呼ばわりしますの……?

 なら、今イズミの体を操っているのは……


「迂闊に理解はしない方がいい。じゃ、体は返すからこの子の世話は貴様に任せるとしよう。」

 そう言ってイズミの体はその場で前に向けて倒れこみ、私は慌ててそれを支えます。

 そして、倒れたイズミの顔には既に先程の狂気を秘めた表情は欠片も残っていませんでした。

イズミに憑いてた方を理解したらSAN値は0になります。

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― 新着の感想 ―
[一言] クトゥルフ神話って事は分かりましたよ! SAN値-10 あれこのすまほおいしそういただきます
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