表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

オススメ短編・中編

公爵令嬢ですが違う女を毎日連れてきて婚約破棄を宣言されるので物理サバイバルが必須です

作者: 砂礫零

「スカーレット、君との婚約を破棄する!」


 私は拳にうなりをつけ、婚約者の腕に絡みつき瞳を潤ませている特待生の聖女候補を、ぶっとばした。


 その翌日。


「スカーレット、君との婚約を破棄する!」


 私は(えぐ)れるほど強く床を蹴って跳躍し、婚約者の背に胸を押し当て切ないため息を漏らしている男爵令嬢に、脳天チョップを炸裂させた。


 さらにその翌日。


「スカーレット、君との婚約を破棄する!」


 私は身を低く沈め3歩前に進むと、婚約者の首に腕を巻きつけニヤリと口元を緩ませている子爵令嬢に、疾風の如きアッパーカットを見舞った。


 さらにその翌日。


「スカーレット、君との婚約を破棄する!」


 私は片足を軸にして異国の舞踊のように華麗に回転し、婚約者の胸にもたれかかりウットリとした表情で頬を()り寄せている伯爵令嬢に、渾身の蹴りをくらわせた。


 さらにその翌日。


「スカーレット、そろそろ結婚しないか」


 私は婚約者の身辺を注意深く観察した。

 今日は珍しく、ほかの女を連れてきていないようだ。

 私はほっと息をつき、婚約者の隣に腰をおろす。


「その霊媒体質が治らない限り、お断りでしてよ」


「本当にすまない。情けないけど、スカーレットの除霊だけが頼りだよ」


 私の婚約者には女性の霊が寄ってきやすく、婚約者は毎日のように(あやつ)られては私に婚約破棄を叩きつけてくる。

 これで結婚などすれば今度はきっと、愛人狙いの霊が毎晩とりつき 『君を愛することはない!』 などと彼に言わせてくることだろう。

 そうなれば私はいつか(いえ)じゅうを破壊してしまうかもしれない。ストレスで。


「霊が寄ってこないよう、ずっと修行しているのにな」


「愛が足りないのではなくて?」


「ならもっと、君のことだけ考える」


 私は婚約者とキスをする。

 幼い頃からの婚約。お互いに愛も信頼もあるのは、知っている。

 それでも ――

 結婚する気にはまだ、とてもなれない。


「どうしても、結婚できない?」


「そうね。もしくは、国じゅうの霊をなるべく早くあの世に送るしかありませんわね」


 聖地のど真ん中にあるため、昇天できない未練の強い霊が集まる国。

 いつ婚約者が操られてしまうか、気が気ではない。

 私のサバイバルは、まだまだ続きそうだ ――



「スカーレット、一刻も早く結婚なさい。さよう、これは王命である!」


 私は婚約者の背後に両手を回し、肩越しに覗きこんでくる先代王と王妃の、透き通った青白い(ほお)を思いきり、つねりあげた。

 義両親のくせに、出歯亀(デバガメ)してくるんじゃない。


なろうラジオ大賞応募用1000文字短編です。お題は「サバイバル」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
すごい!お見事! 物理がすべてを解決するのですね! 予想外の結末でとっても楽しかったです!! 天晴!
こんにちは。 すごい……。 千文字で「婚約破棄」ものを書ききった。 しかも、面白い。 意味も通じる。 頭が下がります。
やはり暴力……!! 暴力は全てを解決する……!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ