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91.姉妹剣士

 ――会場からは、歓声が耳に届く。

 おそらく、レインあたりが盛り上げている頃だろう。単独で行動を始めたセンは、くすりと笑みを浮かべる。


「ふふっ、レインったら、頑張っているみたいね。お姉さん、ちょっと嬉しいわ」

「ぐっ、くそ……」


 通りすがりに出会った参加者達を歯牙にもかけずに斬り伏せ、センは目的の人物の元へと向かった。その人は、センが来ることが分かっていたように、ただ待っていた。


「来たか、セン」

「来たわよ、姉さん」


 センの実の姉――エイナ。およそ、妹に向けるものとは思えないほどの殺気。先ほど、戦いが途中で終わってしまったことが、よほどに気に入らなかったらしい。

 別れ際に、センに向けられた視線で察した。

エイナは早々に、センとの決着を望んでいる、と。


「ここならば、もう邪魔が入ることはないだろう。参加者は皆、レインを狙っているようだ」

「ええ、そうね。姉さんも、フレメアに協力しているんでしょう? 報酬は――わたしを連れ戻すこと?」

「ああ、そうだ。セン……お前は私より強い。それは紛れもない事実であるし、私も認めるところだ」

「分かっているのに、わたしとの勝負を望むの? 別にいいじゃない。わたしの方が強くたって……それとも、妹のわたしより弱いってままだと嫌?」

「否定はしない。お前に嫉妬をすることもあった。どうして、同じ修行をしてもお前の方が上手くやれるのか。どうして、お前の方が強くなるのか――私だって、お前を超えるために人一倍努力をしてきた。それでも、お前を超えることはできなかったんだ」

「そうね。だから、わたしは姉さんのパーティを抜けたの」


 センは誰よりも強い剣士だった。それ故に、孤独だった。

 姉のエイナのパーティは、決して弱い者を集めたわけではない。だが、それではセンは満足できなかったのだ。

 故に、自らの望む戦いができる仲間を求め、旅に出た。――そして、《紅天》というパーティに入ることになったのだ。


「わたしはここで満足してるの、だから、姉さんのところに戻る必要はないわ」

「……本当にそうか?」

「? 何が言いたいのかしら?」

「お前の望んだ仲間とは、本当に『あれ』なのかと聞いているんだ。お前は強い仲間を求めて私の元から去ったはずだ。確かに、《紅天》というパーティの話は私もここに来て聞いている。だが、はっきり言ってお前の望むものがそこにあるとは思えないと言っているんだ」

「ふふっ、面白いことを言うわね? それなら、姉さんはわたしを楽しませてくれるのかしら?」

「ああ、そのために――私はここに立っているのだから」


 エイナはそう答え、握り締めた刀の先をセンに向ける。


「私はお前に勝って、私の強さを証明する。そうしたら、また私とパーティを組んでもらうぞ」


 決意に満ちた表情に言葉。エイナは本気だ――本気で、センに勝とうとしている。

 そんなエイナを見て、センは笑みを浮かべた。


「……何を笑っている?」

「ふふっ、だっておかしいじゃない? 姉さん、『私を連れ戻す』とか言いながら、私に勝つことばかり考えているんだもの」

「当然だ。私がお前より強ければ、お前は私のところへ戻ってくるのだろう?」

「そんなにわたしと一緒にいたいの?」

「ああ、私はお前のことが心配だ。だから――」

「心配? あははははは! 姉さん、『今のは』面白かったわ」


 エイナの言葉を遮り、センは大きな笑い声をあげて、刀を構えた。そのまま言葉を続ける。


「でもね、わたしは縛られるのが嫌いなの。だから、わたしも本気で戦ってあげるわ。本気で戦って――二度とわたしの前に立てないようにしてあげる」


 挑発的な言葉を受けても、エイナの表情は変わらない。だが、その言葉が合図となり――姉妹剣士の戦いは、火蓋を切った。

センがパーティを抜けた理由は姉が弱いからで、エイナが妹を取り戻したい理由は心配だからっていうことなんですよ。


ところで次回はこの戦いの続きをするのと、レインちゃんがひどい目に遭うのどっちが見たいですか?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] レインちゃんが遭うひどい目とは…
[気になる点] 妹に着いていけばええんや( ˘ω˘ ) [一言] 二人の戦闘に巻き込まれてヒドい目に遭うレインさん?
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