表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/103

79.第一ゲーム

『あーっと!? 登場と同時に転んだレイン選手ですが、あの水着は……!?』

『あれは《スクール水着》、だ』

『スクール水着というと、王都の学園指定にもされている水着でしたね、確か! 肌の露出度は低く、水着大会では不利とも思われますが……そのあたりはどうなんでしょう!』

『うむ、スクール水着の本来の語源は《スクロール》にあると言われている』

『スクロール、ですか? 魔道具の種類の一つですね!』

『その通り。古来、スクロール水着と呼ばれていた水耐性の高い服がダンジョンで発見されたことが由来だと言われている。それが今では機能性などが採用されて呼びやすく、学園指定の象徴としての《スクール水着》という呼び方が主流となっているが、あれをあえて水着大会に着てくるというところは評価したい。ましてや、男の選手でな!』

『これはトキゾウ氏から中々の高評価だーっ!』

(ぜ、全然嬉しくないんだけど……!)


 転んだレインはサササッとローブを着ながら移動をしていく――だが、すぐにスタッフに止められた。

 水着大会においてローブなどの姿を隠す物は基本的に禁止されているというのだ。

 堂々と水着を披露している者が多い中、明らかに挙動不審なレインは目立つ。


(くっ、普段ですらフードをかぶって生活してるのに……こんな晒し者されるなんて……!?)


 一刻も早く帰りたい――帰りたいのだが、水着大会は始まったばかりだ。

 むしろこれからが本番だと言える。

 次々と入場してくる選手達は全て、堂々としているが――唯一レインだけは常に恥ずかしそうなままだった。

 傍から見れば、男でありながら恥ずかしがって大会に出るという、「ひょっとしてレインは露出癖のあるドMの変態なのでは……?」というあらぬ噂と立てられかねない。

 実際、数度に渡って全裸で町に戻っているレインは一部どころか広い範囲で噂になっている。

 よく裸になってパーティメンバーに運ばれているのはレインだ、と。


(ぐっ、このままだと僕の沽券が……)


 そんなものはすでに存在しないのだが、レインはそれを守りたい――という意思だけは見せていた。

 リースやシトリアといった紅天のメンバーの入場も終わり、ようやくレインの周囲が知り合いで固められる。

 その近くにはフレメアやエイナもいた。

 他の参加者も当然実力者は揃っているが、フレメアは別格だ。

 そういう雰囲気を漂わせている――水着大会とはいえ、フレメアが何を仕掛けてくるか分からない。

 レインだけは警戒しているが、同じ立場にあるはずのセンは余裕の笑みを浮かべる。


「こうして水着姿を人目に晒すのも悪くないわね」

「なんかその発言、少し変態めいてないか?」

「前から言ってるじゃない。晒して恥ずかしいような身体はしてないのよ」


 リースの言葉に、センはしたり顔で答える。

 実際のところ、センは本当にそう思っているのだろう。

 一方、レインの他に唯一少し恥ずかしそうにしているエリィは呟く。


「あたしは少し恥ずかしいけど……」

「心配ないですよ、エリィさん。一番恥ずかしいのはレインさんですから」

「どさくさに紛れて毒舌! 僕だってこんな格好人前に晒したくないんだよっ」


 シトリアの言葉に突っ込みを入れるレイン。

 もはや人前で水着姿を晒すというある意味では引っ込みのつかない状態ではあるのだが、それ以上の問題はフレメアに負けること。

 極論から言えばレインが勝てなくても、フレメアが負けさえすればいい――レインもまた、フレメア以上に必要が出てくれば卑怯作戦で勝つつもりではあった。

 ――レインはそういう奴なのだ。


『さてさて、メンバーが出揃ったところで……水着大会第一ゲームの内容は――』

(第一ゲーム……!?)


 いきなり水着の評価ではなくゲームが始められるという事実を放送で知るレイン。

 他のメンバーは特に動揺する様子はない。

 やはり、水着大会と言ってもすでにまともに水着を評価するという段階にはないらしい。

 こうなってくると、水着だけの評価ではない時点でレインにも有利に働く可能性もなくはない。

 なくはないのだが――同時にフレメアからの妨害もやりやすくなる可能性はあった。

 ちらりとフレメアの方を見るが、フレメアは特にレインの方を見ない。


(一体どんなゲームが……)

『レースです!』

「レース……?」


 レインはその放送を聞いて首をかしげる。


「スカート?」

「それは服装ですね」

「幽霊の魔物」

「それはレイスですね」


 センの言葉に逐一突っ込みを入れるシトリア。

 レースはレース――完全に競争のことを指し示している。

 会場内には確かに、流れる川のような水路が配置されていた。

 なるほど、そこでレースをするらしい。

 するらしいのだが――


(え、水着関係なくない……?)


 レインは心の中で素直な感想を漏らす。

 水着大会の第一ゲームはレース――明らかにレインの不運では勝てなさそうな内容であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ