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75.解毒成功?

「これで……」


 無事かどうかはとにかく、何とか自室に戻ったレイン。

 シトリアとエリィの組み合わせだと、女物の服を買ってくるということもなく、しっかりとしたローブを買ってきてくれた。

 ここ最近でローブの消費が激し過ぎるところが難点だったが、レインとしてはローブは必需品だった。

 顔を隠すには必要なのだ。

 レインが自室に引きこもってから作り出したのは、猫化を解除するための薬。

 手に入れた素材は毒の湿地でも生きていくことができる生物の一部を使って、新たに作ったものだ。

 ぐつぐつと紫色の液体が煮えたぎっている。

 レインには調合の心得はある。

 素材さえあれば、あとは解毒効果を抽出して薬を作るくらいのことはできた。


「んくっ」


 ごくりと薬を飲み干す。

 少しだけなめらかで、苦みのある味。

 飲めないほどではないけれど、顔をしかめるレベルではあった。


「おいしくはにゃいけど……まあそこにこだわりはにゃいし」


 レインはベッドに横になる。

 一日寝れば効果はあるだろう。

 色々と出掛けた疲れもあってか、レインはすぐに眠りに落ちた。


(シトリアとエリィにも、今度しっかりお礼しないと……)


 レインが夢見心地でそんなことを考えていると、ドンドンッとドアを強く叩く音が耳に響く。


「ん……? 誰?」

「わたしよ、わたし! あなたのお姉さんのセンよ!」

「誰がお姉さんだ!」

「もう、ノリが悪いわねぇ。何時間寝てるのよ、せっかくだからレインも飲みましょう」


 まさかの飲みの誘い。

 どれくらい寝ていたのか分からないが、レインは一応声を確認する。


「な、なー、な! も、元に戻ってる!」


 声が元に戻っている――つまり、完全に解毒に成功していると考えた。


(ふっ、さすが僕の作った解毒薬……完璧だな)


 自画自賛したくなるくらいの完璧な解毒作用。

 やはり、素材がいいと治りも早い。

 レインは身体を起こして扉を開く。


「まったく、騒がしいな……」

「レインったらずっと寝て――え?」

「ん、なに?」

「レイン……それって虎耳と虎尻尾ってやつ? 随分と変わったもの付けてるのねぇ」

「……へ?」


 レインが確認したのは声だけ。

 そう、声が治ったらから完璧だと思い込んでいた。

 実際には違う。

 声は治っていたが、レインの身体にはまだ重要な部分が残っていた。

 しかも猫耳ではなく――虎のように少し丸みを帯びていて、それで尻尾も図太くなっていた。


「な、ななな……」


 普通に話せているからこそ油断した。

 レインは虎耳尻尾状態でセンの前に姿を現してしまったのだ。


(……げ、解毒に成功したと思ったのに!?)


 やや寝ぼけていたところもあったところが大きい。

 すぐに扉を閉めようとしたが、センが足を扉の隙間に突っ込む。


「出てきたってことは一緒に飲むんでしょ?」

「い、いや……ちょっと待って!」

「いいじゃないの、お姉さんは別にレインがどんな姿をしていても引かないわ! むしろリースだって喜ぶと思うわ。レイン可愛いものね!」

「や、やめろ! そういう言い方をするにゃ!」

「するにゃ?」

「はっ、つい癖で……!」

「癖……?」


 ここ最近ずっと「な」を「にゃ」と言うようになっていたからか、レインは言い間違いまでしてしまう。

 にやりと笑うセンが思いっきり扉を開く。


「さあレイン! 一緒に飲むわよ!」

「にゃああ! や、やめろぉ!」

「いいじゃない、その姿可愛いわよ!」

「か、可愛いって言うな!」


 無理やりセンに抱っこされるような状態で、レインは連れられていく。

 悲しいことに、レインの身体能力は高くない。

 この状態で飲み会に連れ回されることはレインにとっては日常茶飯事だった。


「なんだ、レインを起こしてきた――」


 虎耳尻尾の状態のレインを見て、リースが固まる。

 前回は猫耳尻尾で、今回は虎耳尻尾。

 勘違いされてしまってもおかしくはない。


「リ、リース……! こ、これは僕の趣味とかじゃなくて……」

「心配するな。別に私はそういうところで引いたりしない。むしろ歓迎するタイプだ」

「か、歓迎……?」

「この飲み会が終わった後、私の部屋でどうかな?」

「何を!?」


 思わず聞き返すが、リースは「言わせるな」という表情をしている。

 今の状態で酒を飲むのはまずい。

 間違いなく、リースの部屋に連行される気がする。

 シトリアとエリィも同じ部屋にいた。

 レインは二人に助けを求めようと視線を向けるが、


「……」

「……」

「目逸らさないで!?」

「それにしてもよく出来た尻尾ねえ。本物みたい」

「ひっ、さ、触るな!」

「セン、レインの言う通りだ。尻尾の方は敏感だぞ」

「違うからぁ!」


 色々な勘違いと、そして諦められてしまったレイン――問題の水着大会まで残り一週間を切っている。

 レインの虎耳と尻尾が元に戻ったのはこの三日後で、その間センには遊ばれ、リースにも定期的に誘われ続けるのだった。

一応ここで第二部完結かなって感じです。

HJ大賞は二次で落ちていましたが……三部は水着大会編をようやく書いていこうかなと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大会前に耳と尻尾戻っちゃった…震
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