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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
百折不撓
47/64

参上

テスト勉強に追われているため、とりあえず、書き溜めの分を投下します。

もしかしたら次回の更新まで一週間ほど間が空くかもしれません。

麗香を乗せた攻撃隊は倉庫から20kmほど離れた簡易基地に止まった。


どうやら少しここに留まるようだ。


だが。


「とりあえず捕虜を本部に送らなければな。おい。」


「解りました。ほら、立て。」


リーダーの補佐役の男に体を起こされる。


「やめて!触らないでッ!」


大声で抵抗するが、すぐに口に猿轡を噛まされてしまった。


そして、攻撃隊の最後尾の車両に乗せられた。


「ンーッ!ンンーッ!」


「黙れっ!……全く、こんな状況なのに気の強い女だ。」


運転手がアクセルを踏み、車が発進してしまう。


麗香はどうすることもできなかった……。



















「いたぞ………!」


麗香を乗せた車が発進してしばらくたった後、ゾンビの後を付けてきた悠斗は、その簡易基地の近くで攻撃隊を発見していた。


何人かが集まって話し込んでいる。


「1、2、3……10人か。」


10人。


攻撃隊と称するには少し少ない気がするが、こちらは一人だ。


十分すぎる数だろう。


それに、これだけの人数で麗香を迅速に連れ去っていったし、連携も取れていた。


ただの一般人ではあるまい。


(少数精鋭か………。)


だが、やらなければ麗香を助けることはできない。


まず、装備を選ぶ。


疾風に積んであったのは、レミントンと9mm拳銃とバール、破片手榴弾と軍用ナイフの刀身と自衛隊基地から持ってきたM24だ。


しばし逡巡する。


一番堅実なのはM24による狙撃だろう。


宮本と同じ銃なので使い方は分かる。


だが、悠斗がそれを使いこなせるかと言われれば、返す言葉を持たない。


では、手榴弾はどうか。


今のように集まっている状況ならば、一網打尽にできなくもない。


だが、もし変な方向に飛んで行った場合は敵がいるとばらしているようなものだし、そもそもこの場所から簡易基地まで投げれるほど腕力もない。


「どうするか………。」


「何をどうするというんだ?」


不意に後ろから声が聞こえたので振り向く。


すると、攻撃隊の一員と思われる男がこちらにニューナンブを突きつけていた。


悠斗はその時、あるものを握った。


そして、それを腕の内側に持ってくる。


この位置なら相手には見えない。


「さて、どうしてやろうか……。この場で殺すか……?それとも向うに連れて行って全員で嬲り殺しにするか……?いや、この場で殺すか。そうすりゃあ俺の手柄になるな。」


男が撃鉄を起こす。


「待ってくれ!話をさせてくれ!」


降伏するかのように両手を上げる。


男にとってその行為はこの状況では想定内のことだった。


だから気づかなかった。


悠斗の手から軍用ナイフの刀身が飛んできていることに。


その軍用ナイフは綺麗に円を描き、男の顔面めがけて飛んで行った。


「うおっ!?」


男はニューナンブを使って払いのける。


だが、ニューナンブも一緒に弾かれた。


その隙を悠斗は逃さない。


「ケンカなんかした事無ぇけどよォーーッ!」


しゃがんで男の足を手前に払う。


そして倒れこんだ男に馬乗りになる。


増田先生の時のように。


そして男の鼻頭に拳骨を両手で食らわせ続ける。


「これならァッ!」


「クソがァァァァッ!」


男が悠斗を払いのけ、転がったニューナンブのところへ走る。


「行かせるか!」


悠斗は男の足をつかみ、自分の方に引っ張る。


「ぐがっ!」


男が地面にたたきつけられる。


その男を飛び越えて、悠斗がニューナンブをつかむ。


そして男に向けて構える。


「ハァーッ……ハァーッ……。」


男は息を荒げて立ち尽くす。


「終わりだ。」


引き金に指を掛ける。


そして、引こうとする。


だが。


「あれ?なんでだ!?」


引き金が動かない。


さっき落下した衝撃でどこかが曲がってしまったのだろうか。


その可能性もないことはない。


だが、そんな偶然があるだろうか。


いや、起こってしまったのだ。


起こってはいけない偶然が。


男はナイフの刀身をつかむ。


「さんざんコケにしてくれたなぁ………あぁ!?」


ゆっくり近づいてくる。


悠斗も後ずさるが、すぐに壁についてしまう。


キィィィィィ━━━━━━


車のブレーキ音がしたように聞こえたのは気のせいか。


「鼻骨が折れちまったじゃねぇか……どうやって落とし前付けるんだてめぇっ!」


男のナイフを持つ手に力がこもる。


「命で償えぇぇぇぇぇぇッ!」


その時。


悠斗には男が高速で横に吹っ飛んだように見えた。


否、実際に吹っ飛んだ。


「イィィィーーーヤッホオオオォォォォォウ!!ホームラァァァンってなぁ!」


悠斗の目の前にはカーキ色の長そでに迷彩柄のカーゴパンツを履いた青年。


悠斗よりもいくつか年上に見える。


その男が金属バットでもって、男の顔面をフルスイングしたのだ。


哀れ、男は顔面が大きく陥没してしまっていた。


壁際に転がったまま動かなくなった。


悠斗は青年に礼を言う。


「ありがとうございます。助かりました……。あなたは?」


「俺は和久井遼。遼でいいよ。あんたらの仲間からあんたが麗香って女の子を探しに行ったって言われてな。助けに来たわけだ。えっと、確か悠斗だったよな?」


「えぇ、あってます。」


「んで。麗香ちゃんはどこにいるんだ?」


悠斗は簡易基地の方を指さす。


「あそこにいます。」


「よし、行くぞ。」


遼が立ち上がる。


「えぇ、その、作戦とかはないんですか!?」


「簡単な話だ。俺が援護するから、お前は後ろから回り込んで攻撃しろ。」


「援護って……。」


「あぁ、コイツでな。」


遼は誇らしげにジープに据え付けられたM2重機関銃を見上げた。


「これで一気に5人は殺せるはずだ。人間ってのはどうしても反応するまでに時間がかかるからな。うまくいけば全滅できる。」


「なるほど……。」


確かに行けるかもしれない。


少なくとも、狙撃や手榴弾での攻撃を試みるよりよっぽど現実的だ。


「いくぞ!麗香ちゃんを助けに!」


「はい!」


そして二人は一歩を踏み出した………。


















次回もお楽しみに。

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