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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
烏合之衆
19/64

捕縛

急展開です。

それではどうぞお楽しみください。

悠斗達の乗った車が駐車場に入ってくるのをまるで英雄の凱旋のように出迎えてくれた。


大関は一通り挨拶を終えると、遺族に挨拶をしに出て行った。


山本は知り合いであろう男性と肩を叩きあい談笑している。


「キャー!かわいいー!」


「わ~!カッコいい~!」


宮本は…女性に囲まれて赤くなっていた。


「大変だったんだって?」


「安心できる場所だよ、ここは。」


水咲は新しい住人という事もあり多くの人に囲まれていた。


そして。


「お帰り!悠斗君!」


遠くから手を振りつつ走ってくる麗香を抱き止めながら返事をする。


「ただいま。麗香。」


…水咲がニヤニヤしながら見ていたのは気のせいだと思いたい。


「君、変な敵を仕留めたんだって?思ってたよりやるじゃん!」


雨音が声をかけてくる。


麗香は不満そうに、


「思ったよりって何よ。」


と頬を膨らませた。


「いや~。2班の方々、お疲れ様でした。」


尾西が全員の注意を引くような拍手をしながら前に出てきた。


「皆さん!もう一度この方たちに拍手を!」


割れんばかりの拍手が駐車場に響き渡る。


「2班の方々はゆっくり休まれてください。明日、生還記念のパーティーを開きます。では皆さん、解散にしましょう。」


いまだ興奮冷めやらぬ様子で人々が帰っていく。


すると、尾西がこちらの方に来た。


(槇原さん。)


(何ですか?)


(お話したいことがありますので、3時ごろに警備員室へお願いします。)


(はぁ…。)


もとより苦手な人からの誘いに困惑する。


「何だったの?」


「3時に警備員室に来てくれって。」


「ふ~ん。よく解らないけど大変だね。」


「全くだ…。」



























部屋に戻ると、一日居なかっただけなのに懐かしい感じがした。


「やっぱり落ち着くな~。」


「ふふっ。」


ベッドの上で伸びをする悠斗を見て麗香が笑う。


コンコン


「ん?誰だ?」


「私見てくるよ。」


麗香が扉を開ける。


「麗香おねぇちゃん!遊ぼうよ!」


「鬼ごっこしよ~よ鬼ごっこ!」


そこに立っていたのは、数人の子供。


奈菜ちゃんや、奈菜ちゃんよりいくつか年下の子が集まっていた。


麗香がこちらをじっと見てくる。


意味を察した悠斗は、目で返事をする。


「解ったわ。みんなで何しましょうか?」


「俺鬼ごっこが良い!」


「かくれんぼだよ~!」


「おままごと!」


「はいはい、じゃあ全部やっちゃおう!」


「やったー!」


…麗香って幼稚園にでも勤めてたのか?


「まぁいいか。疲れたし寝よう…。ん?」


ベッドの脇に本が置いてある。


きっと麗香が寝る前にでも読んだのだろう。


『サルでも解る!サバイバルの基本』


『楽しく学ぼうモールス信号』


『インナーマッスルの鍛え方』


『お笑い一本道!』


…麗香はいったい何処へ向かいたいんだろう。






























「ここだよな。」


三時になって悠斗は警備員室の前に来た。


念のため作った服の隠しポケットに警察署で拾ったニューナンブを忍ばせている。


コンコン


ノックをして待つ。


「どうぞ、お入りください。」


扉の奥から声が聞こえる。


「失礼します。」


中に入ると、尾西が此方を向いて座っていてその前のテーブルには…。


「チェス?」


「どうです?話がてら一戦やりませんか?」


「えぇ、構いませんが。」


「どうぞ、御掛けになってください。」


チェスの駒を並べる。


「で、いったい何の用ですか?」


「まぁまぁ、そう焦らずに。楽しんでやりましょうよ。槇原さんからお願いします。」


「はぁ…。」


ポーンを前に進める。


「まずは遠征お疲れ様でした。」


「いえいえそんな。大関さんや宮本の方がすごかったです。」


「大関さんとはすでにお話ししました。チェスもね。」


尾西はクイーンを動かす。


「で、今日はぜひお頼みしたいことがありまして。」


「それはどんな?」


ナイトを動かして牽制する。


チェスは中盤戦に向けて展開するのが基本である。


なので、あらゆることを想定して相手の動きにくい位置に置くのが悠斗の得意戦法である。


「あなたにプロパガンダになって頂きたいんです。」


「プロパガンダって宣伝的な奴ですか。」


「えぇ。」


プロパガンダとは、政治的な事などを都合のいいように喧伝したりすることである。


「しかし、プロパガンダとは、政治的なことでやるのでは?」  


尾西がクイーンを持ち。


「えぇ、実はこの度。」


滑るように動かし。


「私は建国をすることに致しました。」


ルークがとられた。


「なっ…!?」


「驚くのも無理はありませんが、ここは領土。国民。そして主権が揃っています。」


ビショップを動かしてポーンを狩る。


「…冗談キツイですよ。」


「いえ、私は至極まじめな話をしています。」


ルークでポーンがとられる。


「国家として認められるには各国の了承のもとでないといけない筈だ。勝手に国家なんて作って良いはずが!」


「確かに認められないと駄目です。…ですが、もう咎める国などないのですから問題ないでしょう?」


「咎める国が…無い?」


ナイトを動かしポーンを取る。


「日本という国はすでに無くなりました。アメリカも在りませんしイギリスやフランス、中国も在りません。すべて無くなりました。」


「何を言っているんだ…?」


「先日のラジオ放送で伝えられたことです。政府は国防大臣を残し、全員感染。洋上に政府を移しましたが、その船も数日前から応答がないそうです。各国もまた同様です。事実上世界は崩壊したのです。」


「嘘…だろ…?」


「このことをコミュニティの人に話せばパニックが起こるのは間違いありません。だからあなたには民衆の希望の象徴となってほしいのです。ギリシア神話に登場する軍神アレスのように、不安を拭い去るヒーローに。さしずめ、チェスのナイトと言ったところですかね。」


「もし、俺が断ったら…?」


尾西がクイーンでナイトを屠り、チェックをかけた。


「お分かりいただけましたか?」


「…大関さんはいったいどうなったんだ!」


最早チェスのことなど忘れて掴みかかりそうな勢いで尾西に迫る。


「彼は頑なに拒否されましてね。ああいうのが本当の英雄なのかもしれませんが。危険分子だと思ったので残念ですが。」


トン。と尾西がビショップを動かした。


チェックメイトだ。


「…大関さんはキングってことかよッ!」


不意に扉が開き、肥った男と石田陸士がサブマシンガンをこちらに向けてきた。


「どうしますか?」


「…お前に尻尾を振れば生き永らえれるってか。見縊ってんじゃねえぞ!俺だって男だ。譲れないものくらいある!」


「それは拒否と受け取っても?」


「あぁ、構わない。」


「仕方ありませんね。谷さん、石田さん。地下倉庫に閉じ込めておいてください。」


「はい。」


谷と呼ばれた肥った男が縄を持ってきた。


「手を出せ。」


石田がサブマシンガンを構えているので動けない。


「くそっ!」


両手の平を上にして手を出す。


そのまま手首を縛られた。


「石田さん。自衛隊のどうして貴方がこんな!」


「お前にはわからんだろうな。尾西様の崇高なお考えが。腐敗した日本を撤廃し新たな楽園を築き上げるのだ!」


「…狂ってる!」


「おら、早く行くぞ!」


悠斗は谷に引かれて、地下倉庫へ連れて行かれたのだった…。








出してほしい武器や、あったらいい展開などあればご一報ください。

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