表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ILIAD ~幻影の彼方~  作者: 夙多史
Episode-13
99/119

098 改める決意

 イクストリームポイント内部。

 転移した先の景色は、やはりライズポイントと似ていた。違うことといえば、向こうが黄金色の宇宙だったのに対し、こちらは澄みきった青色ということである。しかし、そんな異界の景色などよりも、セトルたちは目の前の光景に驚愕していた。

「な、なんや……これ……」

 大きく目を見開き、しぐれは震える声で呟いた。皆も、それぞれが自分の目を疑っている。彼らが見ているもの、それは――

巨像(コロサス)の群れ……嘘だろ」

 アランの顔が引き攣る。何かの冗談だと思うも、現実にそこには何十体もの超巨大守護機械獣『巨像(コロサス)』が――全て破壊されていた。

「ねえ、何であれが壊れてるのよ。元からかな?」

 サニーはもちろん、ここにいる全員が巨像(コロサス)の強さを知っている。蒼霊砲で一度遭遇したとき、全くと言っていいほど歯が立たなかったのを覚えている。一体だけでもどうしようもないそれが、そこに何十体も転がっている。やはりここで何かが起こり、元々こうなっていたのかもしれない。

 だが、それをウェスターが否定する。

「いえ、見たところ破壊されたのはつい最近、それも数時間前といったところでしょう。爆発とかではないようですし、切断された痕が残ってますから恐らく――」

「兄さんの仕業だろうね。こんなことできるのは、兄さんしかいない」

 セトルもウェスターと同じ考えだった。ここにはワースたちしか入れないのだから、やったとすれば、彼らしかいない。

「これを倒すなんて、あなたの兄さんは化け物かしら?」

「……うん。兄さんの強さは尋常じゃないんだ。正直、僕たちでも勝てるかどうかわからない」

 苦微笑して言ったシャルンの言葉をセトルは否定しない。寧ろ肯定して自分の兄の強さを改めて思い知る。暗い顔をしていると、サニーが寄ってきて顔をぐいっと近づける。

「勝つの、絶対に」

「うん、そうだね」

 やや弱気になりそうだったセトルを、彼女は一気に立ち直らせた。そんなセトルを見てしぐれが微笑む。

「さ、行こや。もたもたしてると逃げられてまう」

 頷き、セトルは前方を向いた。巨像(コロサス)の残骸の先に、永遠に続いていそうな青く透明な床の道が伸びている。この先何がいるかはわからない。もし、まだ動く巨像(コロサス)が襲ってきたら、ワースと会う前に全滅、ということになってしまうかもしれない。そうならないためにも、慎重に急いでセトルたちは進むことにした。

 しかし、守護機械獣(ガーディアン)はいなかった。否、いたのだが、それらは全て破壊されていた。間違いなくワースたちの仕業なのだが、何を思って守護機械獣(ガーディアン)を一掃したのかわからない。まるで自分たちが辿りつきやすいようにしているみたいである。

 そして、何事もなく最深部へ続く転移陣の前に到着した。

「もぬけの殻、だったらどうしましょうねぇ♪」

「ここまで来て何言ってんだ、ウェスター。いてもらわねえと困る」

 緊張感のないウェスターの言葉に、アランは嘆息する。

「いるよ」

 とセトルが言う。

「前にも言ったけど、僕にはわかる。この先に絶対兄さんがいる」

「流石セトルやな」

 褒めるようにしぐれが言うと、セトルは一歩前に出て皆を見回した。

「この先に行ったら、もう引き返せない。兄さんは本当に強い。みんな、無理に戦う必要はないんだ。引き返すなら、今しかない」

 それはセトルの最後の確認だった。皆は少しの間沈黙し、そしてウェスターが火口を切る。

「引き返す? ご冗談でしょう。何のために我々はここにいるんですか?」

 続いてアランが言う。

「お前一人じゃ絶対に勝てない。でも、みんなで戦えば絶対に勝てる。そうだろ? それに、これは俺たちのための戦いでもあるんだ」

「そう。この戦いが終わらないと、わたしのやりたいことができなくなるから」

 と、シャルンも頷いてそう言った。

「うちもアキナ代表として……って言いたいけど、たぶんうちもみんなと同じ気持ちやと思う。セトルを放っておきたくないんや」

「そうよ。セトルって放っといたら一人で戦いそうなんだもん。あたしは、セトルの力になりたい。だから、一緒に戦おうよ」

 しぐれとサニーも、それぞれの決心をセトルに告げる。セトルはもう一度皆を見回した。思わず微笑みが浮かぶ。

「わかった。じゃあ、行こう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ