17階層の反省点
本日2回目の更新です。
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──17階層の反省点
久隆の眼前に立ちふさがる鎧ジャイアントオーガ。
まさに重戦車だ。分厚い脂肪と筋肉だけでも本体はダメージを通さないのに、それに加えて鎖帷子とプレートアーマーを組み合わせた鎧まで纏っている。
だが、幸い頭部の守りはお留守だ。
「レヴィア、頼む」
「了解なの! 『吹き荒れろ、氷の嵐!』」
胴体への攻撃は魔法であろうと弾かれるが、頭部には有効だ。
顔面が氷の礫で引き裂かれ鎧ジャイアントオーガが悲鳴を上げる。
「上出来だ、レヴィア」
鎧ジャイアントオーガが藻掻いている隙に久隆が大きく助走をつけて跳躍する。ダンジョンの高い天井に届きそうなほどの高さまで跳躍した久隆は斧を一気に、鎧ジャイアントオーガの頭に叩き込んだ。
僅かばかり手ごたえが硬いが、鎧ジャイアントオーガの体はバランスを崩し倒れていく。そのまま久隆は後方の鎧ジャイアントオーガを狙う。
鎧ジャイアントオーガはやはり巨大な武器を好むようで今回は巨大なウォーハンマーを持っていた。ガリガリとダンジョンの壁を破壊しながら鎧ジャイアントオーガが久隆を狙ってウォーハンマーを振り回す。
鎧ジャイアントオーガ自身の身体能力とウォーハンマーの質量が加わり、その一撃はダンジョンの壁をいとも簡単に破壊した。
だが、当たらなければ意味がない。
その質量故にウォーハンマーは連打はできない。いわば、一撃必殺の武器だ。久隆は攻撃を躱して、鎧ジャイアントオーガの攻撃を無駄に終わらせると、そこで生じた大きな隙を狙って鎧ジャイアントオーガの頸椎に斬撃を加える。
その一撃が致命傷となり、鎧ジャイアントオーガが崩れる。
久隆は次の目標に飛び移る。
ウォーハンマーのもうひとつの弱点は狙いが定めにくいことだ。
相手が静止目標ならば絶大な破壊力を発揮しただろうが、鎧ジャイアントオーガですらようやく振り回せる程度の攻撃では、動いている目標を狙うことなど不可能。まして、余計な鎧を纏って、自らに枷をかけているのでは。
2体目の鎧ジャイアントオーガを倒した時の勢いをそのままに飛びかかる久隆の斧が、鎧ジャイアントオーガの首を裂き、致命傷を与えた。鎧ジャイアントオーガがまた1体撃破されていく。
最後の鎧ジャイアントオーガが3体目の死体もろとも久隆を始末しようとウォーハンマーを振るう。だが、それは命中しなかった。やはり命中精度に難がある。威力ばかりあっても命中精度がお粗末ならば、それは優秀な武器とは呼べない。
久隆があっという間に近接し、鎧ジャイアントオーガの頭に斧を突き立てる。
これにて、鎧ジャイアントオーガ全滅だ。
「フォルネウス、マルコシア! どうだ!」
「もう少しです!」
久隆は他に魔物が接近していないことを確認するとフォルネウスの方に向かった。
フォルネウスは鎧オーク2体を相手に格闘戦を繰り広げていた。マルコシアの炎が叩き込まれたところでさらに炎を宿した刃を突き立てる。フォルネウスは久隆の指示通り、魔物の頭を狙って攻撃していた。
だが、いかんせんフォルネウスは久隆ほど俊敏ではない。敵も自分の頭部と首が狙われているのに気づくと、防御を固めてくる。
「フォルネウス! 相手の目を焼け!」
「了解!」
フォルネウスは斬撃から炎を発し、その炎が鎧オークの目を焼いた。
視界を奪ってしまえばこちらのものだ。確実に仕留めていく。
フォルネウスは鎧オークの首に短剣を突き立てて、引き抜く。
「マルコシア! 敵の顔を狙って攻撃!」
「了解です! 『爆散せよ、炎の花!』」
マルコシアがピンポイントで鎧オークの顔面を吹き飛ばした。致命傷には至らなかったものの、戦闘継続能力はほぼ奪われている。
「はあああっ!」
そこでフォルネウスがトドメを刺す。
オークの頭部を短剣で叩き潰し、金貨と宝石を残して消え去った。
「片付いたな。一応、ダンジョン内を捜索し、地図を完成させよう」
「はーい」
久隆たちは先に送り込まれた偵察班が部分的に埋めた地図を完成させた。
「さて、この下である18階層はモンスターハウスだ」
久隆は下層に続く階段を見つめる。
階段を上って魔物は上がってこないのかと思うのだが、魔物はその階層に留まり続けるらしい。どういう原理なのかはダンジョンについては一日の長があるヴェンディダードでも分かっていないことなのだろう。
「17階層で俺たちは新しい敵と遭遇した。鎧ジャイアントオーガ、重装オーガ。戦ってみた感触を伝え、どう対処するべきかをしっかりと話し合っておきたい。俺は剣術の専門家でも、魔法の専門家でもない。意見があったら遠慮なく発言してくれ」
久隆はそう前置きして、交戦した2種の魔物について語り始める。
「重装オーガ。こいつはちとばかり面倒だ。フルフルの付呪を使っても、かなり鎧の手ごたえが残る。俺の斧がアーティファクトではなかったら、斧の方はダメになっていただろう。レヴィアの魔法も氷の槍は弾かれていた。顔面狙いで氷の嵐にした方がいい。マルコシアも重装オーガを相手にするときは顔面を狙ってくれ」
「うー……。レベルも上がって、魔法の威力も上がったはずなのに残念なの」
「役に立たないわけじゃない。狙いを変えるだけだ。魔法を敵は今のところ使ってこない。ゴブリン弓兵を除けば、こちら側が一方的に殴れる遠距離火力だ。上手に使っていくことが大事だと俺は思っている」
「そうなのね。適材適所ってやつなのね。けど、トドメは久隆に任せることになるの」
「確かに俺かフォルネウスがやることになるだろう。重装オーガを魔法だけで仕留めるのは現状難しい。炎で蒸し焼きにしてやるってことはできないんだろう?」
そこで久隆がマルコシアに尋ねた。
「ちょっと難しいですね。魔力のコスパが悪い感じで。長時間、魔法を持続させると魔力の消費が普通より多くなるんですよ。今はまだ魔力回復ポーションがあるからいいですけど、戦闘中に魔力切れを起こしたら足手まといですし」
「なるほど。一発、一発を短くだな。その方向で行こう。なるべく魔力は温存していきたい。魔法なしでは俺たちはまともに戦えないし、魔力回復ポーションはフルフルに優先的に割り当てておきたい」
そこでフルフルがびくっとする。
「あの、私の魔法は役に立たないのでは……?」
「いや。確かにフルフルの付呪でも重装オーガは固いが、それがなかったら今度は完全に攻撃が通らなくなる。そうなることは避けたい。それにフルフルにはこの捜索班全体の戦力を底上げできる能力がある。この捜索班の要は、フルフルだ」
「そ、そ、そうですか……。き、期待に沿えるように努力します……。べ、べ、べ、別にあなたのためではないですよ? この捜索班に何かあるというのは、すなわちレヴィア陛下に何かがあるということですから!」
「ああ。いざというときは、フルフル。自分に付呪をかけてレヴィアを連れて逃げろ。アガレスもそういうことができるから、お前に上層の偵察を命じたのだと思う。いざという時は頼むぞ」
「……分かりました」
フルフルは少し俯いて頷いた。
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本日の更新はこれで終了です。
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