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地上に戻る

本日2回目の更新です。

……………………


 ──地上に戻る



「さて、10階層までを1日以内にクリアにするという任務は達成した。物資をここに置いて、地上に戻ろう。明日来るときは、例の魔力回復ポーションを作るためのプランターとLEDライト、発電機などを持って来よう」


「了解なの」


「それから物資をアガレスに届ける。それが終わったら15階層以降に少しばかり偵察に向かう。いや、先に偵察に行った部隊から話を聞くだけでもいい。とにかく、15階層以降のことを考えなければならない」


 15階層以降のことは今のところ20階層にエリアボスとしてバイコーンがおり、18階層にモンスターハウスが存在することしか分かっていない。これだけでは、15階層以降の攻略計画を立てるのは難しい。


 11階層から15階層の魔物の再生成は早くて明後日。久隆としては後方連絡線を遮断された状態で15階層より下に潜ることは避けたかった。


 ダンジョン内でどのようなことが起きるか分からない。朱門の治療が必要になる怪我を負うかもしれないし、食料や水が尽きるかもしれない。地上に向かうのが困難になる場合はいくらでも想像できる。


 久隆たちまで地上に戻れなくなれば、それは完全な二次遭難だ。


 地上には戻れるようにしておかなければ。少なくとも下層までに6、7日以上かかるような状況になる前までは。ダンジョンは25階層以上下まで続いている。もし、ダンジョンが50階層ともなれば流石に地上との連絡線を維持しながら戦うのは難しいだろう。


 そうなった場合は拠点を移しながら戦うしかない。物資を地下へ地下へと運び、そうやって兵站線を維持する。幸いにしてひとつのエリアボスから次のエリアボスまでは10階層と決まっている。拠点を移していく戦略は有効だ。


 だが、地上における援護は受けられない。流石に朱門をダンジョン内に連れてくるのは彼が納得するかどうか分からない。朱門はダンジョンに興味を示しているが、それは観光的なものであり、本格的にダンジョン攻略に興味があるかは不明だ。


「問題は山積み、か」


 久隆はふうと息をつく。


 せめて何階層で最下層──ダンジョンコアのある位置が分かればいいのだが、と久隆は思った。そうすれば用意するべき物資の量も、かかる時間も計算できる。


「早くべリアたちを助けてあげたいの……。久隆、大丈夫だと思う?」


「ああ。大丈夫だ。だが、焦りは禁物だ。着実に進めていかないと全員の命が危険に晒される。アガレスも15階層の連中も、そしてお前自身もだ。お前が死んだら大勢が悲しむだろう? だから、着実に進めていこうな」


「分かったの。焦らないの。べリアならきっと大丈夫って信じるの!」


「そうだ。大丈夫だ」


 レヴィアは素直だ。教育がよかったのだろう。無理なことは言わない。子供特有のわがままさはあまり見られない。少しばかり成熟している。そうでなければあのような戦闘を繰り返して、平気でいられるはずもないかと久隆は思った。


「フルフル、マルコシア。地上に戻るぞ。恐らく地上は夜中だ。またファミレスの食事になるがいいか?」


「わ、私は別に構いませんよ?」


 フルフルはそう告げて頷き、マルコシアも頷いて返した。


 それから久隆たちは来た道を戻った。


 久隆は朱門への報酬のためにバックパックに詰め込めるだけ金貨と宝石を詰め込んでいく。これが一体どれほどの値段になるのか分からないが、朱門は儲け続けられる限り、この村に残ってくれるだろうという信頼があった。


「負傷者たちもそろそろ動かしても大丈夫だろう。朱門と相談して大丈夫なようならば、15階層に送り出そう。15階層に魔物が再生成されたとき、守れる人間が残っていないと困ったことになる」


「15階層は普通に魔物が湧きますからね。10階層に拠点を移せばいいと思うんですけど、恐らくみんなが反対するかな。みんな、地下に囚われている仲間の救出に全力ですから。より深く潜って、仲間を救い、ダンジョンコアをどうにかする」


「どうにかってどうするんだ?」


「破壊する、とかですかね。ダンジョンコアは大抵は破壊されるものです。ダンジョンが財宝を生み出す存在だったとしても、限度がありますから。永遠に財宝を生み出してくれるわけじゃないんです。古いダンジョンコアは破壊し、新しいダンジョンコアが生まれるのを待つ。そうやって巡ってきたんです」


「しかし、破壊したとしても元の世界に戻れる保証は全くないだろう?」


「それもそうなんですが……」


 マルコシアは困った表情を浮かべた。


「ダ、ダンジョンコアを制御する魔法を使うんですよ、そういうときは。べリア様なら使えたはずです。私たちでは高度すぎて無理ですが……」


「べリア頼りか」


 これでべリアがダンジョンのどこかで死んでいたら、一生あそこにダンジョンがあって、ダンジョンにいる連中は元の世界に帰れなくなるかと思うと久隆はぞっとした。


 とんでもない悪夢だ。久隆も数か月ならともかく、数十年も彼らを隠し通せる自信はなかった。彼らはいずれ政府に発見され、本当に故郷に帰る見込みはなくなるだろう。


 べリアが生きているか、ダンジョンコアを破壊することで問題が解決することを祈るしかない。そうでなければレヴィアたちの将来は暗いものになる。


 数時間かけて階段を上り続け、久隆たちは地上に出た。


 地上は既に暗くなっている。今から自炊をする気にはなれなかった。


「まずは朱門に負傷者の様子を聞いてくる。もう動かせるようなら、明日一緒に15階層に向かってもらう。まだダメそうならば、様子を見よう。焦ることはない。物事は確実に進めていけば、成果が出るものだ」


「何事も一歩、一歩というわけなのね」


「そういうことだ」


 急いてはことを仕損じる。急がば回れ。


 今、無理をして深層に潜っても問題が生じるのは分かっている。であるならば、慎重にことを進めるべきだ。それが延いてはいい結果となる可能性が高いのだから。


「朱門と話したらすぐにファミレスにいくから準備しておいてくれ」


 久隆はそう告げて朱門に会いに向かった。


「久隆。負傷者の方はもう動かして大丈夫だぞ」


「本当か?」


「嘘ついてどうする。食欲もあるし、傷も完全に塞がった。脅威の回復力だ。しかし、輸血やら何やらができないとなると俺も医者としてできることは限られてくるな」


 朱門はそう告げて肩をすくめた。


「こっちとしては医者がいるだけでありがたい。今回取ってきた金貨と宝石だ。報酬になるかは分からないが、収めてくれ」


「そいつは間違いなく報酬になってる。換金してきたが、莫大な額になった。今はどの通貨も不安定だ。金を買う人間は多い。マフィアとしてもいつ暴落するか分からない上海元よりも、金塊での取引を好んでる。それに宝石は本物だ。ダンジョンは宝の山だぞ」


「俺にとっては厄介な代物だ」


「だろうな。俺と取引している時点で法律を何個も破っている。それにこのことは確定申告では報告できないだろう?」


「できないな」


「国税庁が知ったら搾り取られるぞ」


 朱門はそう告げてけらけらと笑ったのだった。


……………………

本日の更新はこれで終了です。


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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョンに知性があるなら、ジオフロントの概念を教育して人間と共生させよう。 ダンジョンが恒常的に感情が食えるようになる。 交渉できる知性体かどうか怪しいけど。
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