10階層到達
本日2回目の更新です。
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──10階層到達
迫りくる鎧オーガに向けて久隆が斧を振るう。
1体目はハルバードを振り上げ、久隆に向けて振り下ろそうとする。
が、そうはならなかった。久隆の斧の方が素早く、鎧オーガの首を刎ね飛ばした。
久隆は倒れていく鎧オーガから武器を奪うと、片手でハルバードを次の鎧オーガに向けて叩きつける。ただの牽制のつもりだったのだが、ハルバードは鎧オーガの頭を真っ二つにし、鎧オーガが倒れる。
これはチャンスと久隆は勢いをつけて鎧オーガの死体を踏み、もう1体の鎧オーガの首を刎ね飛ばした。最後の鎧オーガは久隆に的確に狙いをつけてハルバードを振り下ろしてきたが、久隆は斧でそれを弾くような真似はせず、さっと狙いを躱し、オーガの腎臓に向けて斧を叩き込んだ。
鎧オーガはそれで全滅した。
「オークはどうなっている!?」
「近づいている感じなの!」
「分かった。レヴィアはそのまま警戒。フルフルもレヴィアを見ててくれ」
久隆は自分がいた方向からは魔物が近づいていないことを僅かな時間で確認すると、すぐさまマルコシアの方に向かっていった。
「来たな。数が4体。鎧付き。マルコシア、叩き込め。生き残りがいたら俺が斬り込む」
「お任せあれ。『焼き尽くせ、炎の旋風!』」
鎧オークの集団が近づいてくるのにマルコシアは炎をまき散らした。
そして、久隆が飛び込む。
マルコシアの炎で即死した個体は1体のみ。他は大やけどを負っても生きているか、仲間を盾にして生き延びていた。
だが、生き延びられたのもそこまでだ。
火傷を負っても武器を振り回しながら前進する鎧オークに対して、久隆はあっさりとその首を刈り取る。その後ろにいた鎧オークは突然盾にしていた味方が倒れたことで武器であるハルバードを構えようとしたが、その前に久隆の斧が頭を叩き割った。
最後の鎧オークはまだ応戦する余裕はあったのでハルバードを振りかざしたものの、それを振り下ろす前に久隆が首を切り裂いた。
「クリア。他に動いている魔物はいない」
「やってやったのね!」
レヴィアたちが勝利に喜ぶ。
「レヴィア。お前の魔法、強くなってないか?」
「ん? 確かにそんな気がするの」
レヴィアは親指と人差し指を使って丸を作り、もう一方の手を覗き込んだ。
「レベルが上がったの! やったの!」
「おお。どんどん上がるな。戦力が強化されるのは喜ばしい」
「これからも大活躍なの!」
レヴィアがグッと拳を握りしめた。
「フルフルたちもレベルが上がったんじゃないか? フルフルのおかげか身体が軽い」
「ああ。まあ、レベルアップしてますね……。一応は……。ステータスが微妙な伸びですけれど……。ですけど……」
「レベルアップはレベルアップだ。喜べ」
そして、久隆は励ますようにポンポンとフルフルの肩を叩きマルコシアを見る。
「マルコシアはどうだ?」
「レベル8です! レベルアップしました! 流石は超深度ダンジョンですね。経験値が豊富ですよ。まあ、それだけ死ぬ可能性も高いってことですけど」
マルコシアはそう告げて苦笑した。
「あ、あなたのレベルが一番上がっているはずなのでは……? もっとも最前線で戦っていますし、倒した数も多いですし。そうだと思いますよ」
「俺は自分のレベルは分からん」
「み、見て上げます」
フルフルが手で輪を作って久隆の方を向く。
「レベル5! し、しかし、なんですか、このステータスは……。あの世界の人間はこんなに狂った数字をしているのですか……。何もかも高すぎますよ……。本当に人間ですよね? 何かしらの上位存在だったりしませんよね?」
「人間かと疑われたのは生まれて初めてだよ」
久隆がふうとため息を吐く。
恐らく、レベルアップによって人工筋肉の出力が上がっている。そのせいでいつか人工筋肉が疲労し、断裂するのではないかと久隆は恐れていた。今は定期的に朱門の診断を受ける必要があると考えている。
しかし、これでレヴィアがレベル9、フルフルがレベル8に、マルコシアがレベル8にとなかなかバランスのいい捜索班となった。戦力に違いがありすぎても部隊として運用しにくいのでこれは指揮官である久隆にとってはありがたいことだ。
久隆自身は自分のレベルアップはあまり歓迎したくなかったが、上がるものは上がるものとして受け入れなければならない。
人工筋肉が軍用のそれに匹敵している状態なのは今は助かるが、将来的に義肢を交換する時に不正改造と判断される可能性がある。全てが終わったら朱門に頼んで、普通のパラアスリート用の義肢に換装してもらう必要がありそうだと思った。
今は捕らぬ狸の皮算用だ。ダンジョンを攻略する目途はまだ欠片も立っていない。
久隆たちはそれから9階層に降り、索敵でオーガ5体、オーク3体、ゴブリン9体を確認し、決まったフォーメーションと戦術で撃破していった。
久隆にとってはこれはマルコシアとの意思疎通を図るための作戦であり、これから仲間が増えてもやっていけるかを試すための実験でもあった。
フルフルとレヴィアとは数日だが、少人数で多く戦ってきた。この少人数の捜索班にさらに他の人間──魔族が加わって、果たして意思疎通が取れ、連携した戦いができるかどうかが今後のカギだった。
今のところ、マルコシアとはかなりの割合で意思疎通が取れていると思われる。彼女は久隆の指示を理解しているし、実行する実力もある。
これから15階層に降りて、アガレスからの残り2名の仲間を加えてもらった時、マルコシアやフルフル、レヴィアが懸け橋となり上手くやっていけるか? 久隆はマルコシアの件から不可能ではないと思っていた。
マルコシアと久隆は出会ってレヴィアより短いが上手くやっている。他の2名も戦闘を通じて生き延びるために団結するだろう。彼らは必死なのだ。この死に満ちたダンジョンで生き延びるために。
生き延びようとする本能は強い。自己保存の本能はとても強い。
「ん? ここは10階層だよな……?」
久隆たちが10階層に降りたとき、そこは迷宮のような壁が全てなくなり、空っぽの空洞が広がっていた。久隆は何かしらの罠を疑って、周囲を見渡す。
「ダンジョンがエリアボスを失ったことで機能を停止したのね」
「機能を停止した?」
「そうなの。ダンジョンの壁や床は破壊しても元通りになるの。それもすぐに。それがダンジョンとしての機能。魔物を生み出すのもダンジョンとしての機能だけど。だけど、エリアボスを失った階層は維持する必要がないから、ダンジョンが壁の生成を止めるの。だからこんなに広い空間になっちゃうの」
「ふうむ……」
つまり、仮にブリーチング──突入用の爆薬が手に入ったとしてもダンジョンの壁を破壊しながら進むことは不可能だし、上層から下層に爆薬で穴を空けることも不可能。ダンジョンが生きている限りそういうズルはなし。
「しかし、ダンジョンというのはなんなんだろうな? 俺にはダンジョンには簡易だが知性があるように思える。エリアボス前の油断を誘う敵の少なさ。リソースを無駄遣いしないためのエリアボス消滅後のダンジョン維持の放棄。そして何より、ダンジョンという存在のない俺の暮らす世界への転移」
久隆はそう懸念を語った。
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